南 郁夫の野球観察日記(49) オリックス・バファローズ2018「超楽観的」大展望

2018年3月23日(文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

いよいよプロ野球、開幕。新しい選手名鑑を手に、ファンにとって希望に満ちた日々である。過去の記憶は都合よくデリート。妄想はむやみに膨らんでいく。選手名鑑の説明文どおりに各選手が活躍すれば、優勝するに決まっている! 今年こそは! そんなポジポジ気分の「お得な」性格のオリックス・ファンだけに送る、恒例の「楽観的」展望である。

がしかし。今年のオリックスの戦力は、なんだか例年と様相が違う。高額のFA選手や外国人選手をかき集めたわけではないのに「計算できる」コマが揃っているのだ。評論家の評価も上々で、本当の本当に? 期待してもいいようなのである。というと、オリックス・ファンの99%の心に「そんなときに限って…」と気弱なフレーズが浮かんでしまうのは、わかっている。わかってはいるが、その集合意識がチームに伝染するからやめよう。

今年の素晴らしい戦力を、素直に認めよう。その上、ここまでほぼ「故障者がいない」のである。フル戦力で開幕を迎えるのだ。んが。かつての監督・A-岡田氏は週刊誌でオリッを5位予想にして「オリックスう? 戦力は充実してると思うけど、きっとまたケガ人が出るんやろな」などと発言(週刊ポスト)。ケガ人は出ない! 今年は。してみれば、辛口の岡田氏が「充実」としているくらいだから、今年の戦力はすごいのである。うん。

■野手
ついにそのハイブリッドな潜在能力がベールを脱いだ。オープン戦での宗(むね)#6のブレークは、事件。彼の活躍で今年のオリッに「弾み」がついたと言っても過言ではないだろう。オープン戦取材時に目撃したランニングホームランの走力は、衝撃。ベンチ裏でも彼は絶え間なく甲高い声でしゃべりちょこまか動きっぱなしで、真面目で静か~なチームに新鮮な「リズム感」を与えていた。センターの守備は必死で鍛えているそうだが、いざというときはスペシャリストの後藤駿太#8もいるので… その旨(むね)よろしく。

して。何と言っても、今年はあの吉田正#34が、待ちに待った「フルスイングでフル出場」なのだ。腰?部品替えました!知らんけど。あの柳田も舌を巻くと言う吉田くんの打撃が爆発してホームラン(少なくとも)は40本、親ゴジラとなってたくましさを増したT-岡田#55も(軽く)40本、昨年実績を残したマレーロ&ロメロもフル出場でそれぞれ30本と、めでたく「ブルーサンダー2」(B級アクション映画か!)打線が完成である。

それ以外も盤石っ。内野は中堅(安達#3、西野#5、大城#10)、ベテラン(中島#1、小谷野#31)、新人(山足#36、福田#4)を調子や状況に応じて使えばいいわけで、ユーティリティーさん多いので組み合わせが無限大。ベテラン以外は足を使える体制が整い、いよいよ監督が目指す野球ができる模様。

捕手は伊藤#22がさすがに今年は打つだろうというわけで、今年のオリックスの得点力は「恐ろしい」ほどなのである。ああ恐ろしい。

個人的願望を言えば、ここに若い「右の」日本人長距離砲が育ってほしいところ。ちと小柄な野手が多すぎる気がするので、武田#56、伏見#23あるいは杉本#99のような大型選手に奮起を期待して、スタメンに割って入るくらいの大化けを見たい。

■投手
これがまた恐ろしい。ああ恐ろしい。先発、中継ぎ、抑えとも陣容は「東洋一」。先発陣は、ルーキーの田嶋#29をドラフトで引き当てた時点で「完成した」と言ってもいい。そのしなやかなサウスポーぶりを見た途端、今年のチームの栄光を確信した方も多かろう。昨年の山岡#13でわかったように、社会人ナンバーワンレベルならルーキーとか関係ないから。間違いなくいきなり活躍し、10勝はいくだろう。

加えて。今年は「笑顔の鬼神」と化すはずの西#21、ふっつうに実力を発揮する金子#19、昨年でペースをつかんだ山岡がそれぞれ(少なくとも)15勝、ディクソンは「悲願の」10勝、あとの投手で少なくとも15勝。楽勝の足し算でクライマックスである。個人的には先発陣に必ずこれまたルーキーのK-鈴木#30が割り込んでくると見た。間近で感じた彼のオーラは、大物のそれである。こういうことは理屈ではない。

そして、会心のFA補強である。ありがたいことにパで実績のある増井#17が入団したことで、平野の代わりの抑えのピースが「ピタリ」埋まった。7回の近藤#20、8回の黒木#54は伸び盛りの若者であり、昨年以上の方程式レベルになることは間違いないっ。貴重な左の大山#69などバックアップ陣容も豊富であり、中継ぎ・抑え陣もほぼ完璧である。ああ恐ろしい。

■まとめ
福良監督#78は6位、4位のあとの3年目。ホップ・ステップ・ジャンプ(死語)の流れからいって、今年の2位は間違いない。あ!ソフトバンクに遠慮してしまったではないか。1位、1位ね! …というようにファンにまで苦手意識があるソフトバンクを撃破することを、今年のオリックスの第一目標としたい。そのための戦力は整っているのである。

私には見える!スタジアムがひっくり返るように湧き上がる、素晴らしい秋が。新ボイス・ナビゲーターの神戸くんの「低音」もひっくり返るような瞬間が訪れるのだ! 今年もオリックス・バファローズを応援したい。

 


<過去コラム一挙掲載!>
オリックス、元メジャーリーガー、女子野球…ベースボール遊民・南郁夫の野球コラム集。

 

南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」

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