スポーツイラストレーター T.ANDOH の「OUTSIDER’s ReCALL」(184)クリエイティブな“人”を結ぶ「テントセン神戸」誕生の裏にはマスターの思いと歴史あり
2026年4月20日(写真・文/T.ANDOH)

こんにちは!スポーツイラストレーターのT.ANDOHです。
今回は、前回ご紹介しました「テントセン神戸」を経営されている、マスターの杉﨑博一さんのお話を書いてみたいと思います。
「この空間、どうやってできたんだろう」。
お話を聞いてみると、なかなか濃いストーリーでした。

杉﨑さんは群馬県出身。
国立大学を卒業後、明石の機械メーカーに就職し、15年間会社員として働いていました。
いわゆる、しっかりしたキャリアです。
そこから、全く違う道に進むことになります。
「異分野に挑戦したくなったんです」
もともと絵を描くのは好きだったそうですが、あくまで週末に少し描いているという趣味程度のものでした。
それでも「これを仕事にしたい」と思った。
ただ、環境がなかった。
だから、自分で作った。
それが2022年10月、「テントセン神戸」のスタートです。

ただ、ここからが大変でした。
イチからのスタートで、漫画家のスキルもなければ、カフェのスキルもない。
お客さんは来ない。
収入もない。
「バターピーナッツだけ食べて過ごしてました(笑)」
さらっと言っていましたが、なかなかの話ですよね。
売れない作家あるある的な話でもありますが…。
SNSのアカウントを作って宣伝して、オープン初日のお客さんは2人。
ちなみに、その2人は今でも来てくれているそうです。
ありがたい話ですよね。
少しずつ口コミで人が増えていきますが、同時に自分のスキルも上げないといけない。
模写を繰り返し、40ページの漫画を描いたものの、売り物にはなるような作品ではなかったそうです。
漫画のスキルを上げるために、漫画家のアシスタントに応募します。
そこで「コワーキングスペースをやってるんですね」と興味を持たれ、採用されます。
最初はイロモノ扱いだったと笑いますが、少しずつ、仕事も増えていったそうです。
そういえば、漫画家のアシスタントといえば、普通は先生のそばにいて、彩色や背景などの作業を手伝うというもの。
最近は、こうした分担作業も、テレワークでやれちゃうものなんですね。
この「テントセン神戸」で杉﨑さんは、今でもその先生からいただくアシスタント仕事を行っています。

この場所が出来た原点には、杉﨑さん自身の過去があります。
子どもの頃、小学校にあった「漫画クラブ」。
本当は入りたかったんだけど、「漫画を描く=オタク」というイメージがどこかにあって、素直に心を開いてクラブに入れなかった。
でも、心のどこかでは、漫画クラブに入っている友達の作品が飾られているのを見て、「羨ましい」と思っていた。
その想いがずっと残っていたんだそうです。
「だからこそ、自分で作ろうと思ったんです」
誰でも漫画を描けて、
描く人同士が自然に繋がれる場所。
それが、この空間の本質なんですね。

ただ、人が集まる場所を維持するのは簡単ではありません。
「場所を用意するだけではダメなんです」
人と人の距離感。
話す人、話さない人。
そのバランスをどう作るか。
ここに一番気を使っているそうです。
確かに、この空間は不思議と居心地がいい。
無理に話さなくてもいいし、自然と会話にも入れる。
その“ちょうど良さ”は、かなり意識して作られているんですね。
杉﨑さん自身も、お客さんとのトークの幅を広げるため、情報収集やコミュニケーションのための努力を欠かしていないそうです。

そこで、最近はバー営業にも力を入れています。
「描く人だけでなく、「話したい人」にも来てほしい」
杉﨑さんはそう言います。
そして、こうとも言います。
「物語を作るって、人生を豊かにすると思うんです」
いろんな人の話を聞くことで、引き出しが増える。
それが創作につながる。
だから、この場所は開かれている。
たしかに、作家さんの発想力はもちろん、その情報力ってすごいと思うんです。
世界観をしっかりと作り込むことで、作品の質は上がるし、読者への訴求力も上がる。
読者の心を豊かにできる作品を生み出せる努力は、クリエイターの心も育むと言うんです。
お客さんが持ち込んでくれる情報が入ってくることで、杉﨑さんも助けられているそうです。
ネタとしての情報はもちろん、技術やノウハウも、トークの中で得られているそう。
だから、杉﨑さんはお話が広がって、このお店に集まる人に深みをもたらしたいと考えています。

店名の「テントセン」には、2つの意味があります。
点が線になり、線が面になるという“描く”という意味。
そして、人と人をつなぐ“点”が線になり、ご縁が広がっていくという意味です。
お店のロゴには灯台と星、そして流れ星。
「この流れ星は最近付け加えました。“アイデアが降りてくる場所であってほしい”という願いが込められています」
人と人が繋がり、新しい出会いが発想をも生み出す。
クリエイターに限らず、ひらめきが生まれる時って、こうして人との会話から起きることってないでしょうか。

作業スペース側の部屋では、イベントや作品発表の場としても展開をしていくそうです。
そして、こんな目標も話してくれました。
「ここに集まった人たちで、作品を作りたい」
漫画でも、動画でも、映画でもいい。
場所があるだけじゃなく、
そこから“何かが生まれる”ところまで持っていきたい。

会社員から一転して始めた挑戦。
バターピーナッツからスタートした場所は、少しずつ人を集めています。
「ここがあるから頑張れる」
そういう場所を目指したいし、自分自身にとってもそういう場所となっている。
足場を固めるためにはまだまだ頑張らなければいけないと語るものの、コンセプトはしっかりと根を下ろし、杉﨑さんの目は先を見ています。
またどんな出会いが待っているのか。
僕も次に訪れる日を楽しみにしたいと思います。
テントセン神戸
神戸市中央区下山手通3-2-14林ビル4階
JR・阪神 元町駅 東口から徒歩5分、各線 三宮駅から徒歩8分
営業時間:12:00~19:00(作業利用時間)
バー営業日は23:00まで(曜日により変動します)
詳細はホームページをご覧ください→ https://www.tentosen-kobe.com/
問い合わせ先
電話 : 070-4326-3243
メール:contact@tentosen-kobe.com
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スポーツイラストレーターT.ANDOH
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