南 郁夫の野球観察日記(181-1)オリックスひさびさ神戸で3連戦!その結末は?

2024年7月23日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

7月19~21日の週末は神戸に楽天イーグルスを迎えての、3連戦。昨今の神戸開催はあってもせいぜい2連戦だったので、グリーンスタジアムで1カード3連戦まるまるやるって、マジ久しぶりなのだ。ここが本拠地だったころでも1カード全戦3日連続観察は記憶ないが(あ、1995年の胴上げ未遂ロッテ3連戦は全部行った)、貴重な神戸開催なので全戦観察しましたともっ。自分にお疲れ様。

▪️ゲーム1:7月19日(金)

オリッが曽谷、楽天が早川という有望左腕対決で、序盤は白井球審の「あーい」(ストライクコールね)が延々鳴り響く、期待通りのビシバシの投げ合い。が、4回に曽谷の若さが出てしまう。突然四球でピンチを作り、仏壇に供えるようにボールを「置き」にいったところを(ラクダの)マスター・阿部に「むほっ」と放り込まれるなど、3失点。で、結局5回に降板してしまう。

早川の方は6回に1点差に迫られるも、常に「早稲田のエースだぜ」なカッコつけ投球で、8回を悠然と投げ切る。カッコつけるって、投手の色気にとって重要要素。で。1点ビハインドのまま試合は膠着。オリッは相変わらず「もう1本」が出ないよね、まあそれが出れば苦労しませんわよね、のよくある展開。

9回裏、2アウトからまさかの楽天外野手お見合いで同点あるいはサヨナラのチャンスをいただくも、代打トーマスのヒット性の当たりを楽天のセカンド・小深田が横っとびキャッチでゲームセット!試合の終わり方としてはめちゃカッコいいのだが、オリッ惜敗とあって場内は「うああああああ」といううめき声がしばし継続。

まあでも。出身高校が神戸国際大付高(出身地は佐用町)ということで、小深田の美技を皆で讃えるべきところ。本当に渋い選手だなと。昨年の失策した小郷を救う「小郷号泣逆転サヨナラホームラン」を、私は忘れ難いのである。前席の女性は小深田(私服)の応援うちわを持っていて「地球は広い」と思わせてくれた。でもこの人、宗のファンでもあるらしく、そういうチーム関係ない選手個人ファンが増えるのはとーっても良いこと。

負けたとはいえ、そこはオリッファン。試合後はあっさりで荒れる方はおりません。帰り道で聞こえた若い男の子の「惜しすぎるやろっ。でも普段の行いや。俺、普段の行いを改めるわ」という声が微笑ましかった。(続く2試合でこいつが行いを改めていないことが判明)

この夜は風があったので比較的マシだったが、7月にしてはけっこう暑いナイトゲーム。すでに濃厚な真夏の夜の匂い。しょっちゅう流れる「水分補給をお願いいたします」アナウンスのたんびに近くの席のおっさんが「ビール飲め、いうことやな?」と反応し、そのたんびに隣の奥さんが前を向いたまま冷ややかに「ビールは水分ちゃう」と答える顛末が私の「不毛な会話コレクション」に加えられて、ちょっとだけ首筋が涼しくなった夜。

 

▪️ゲーム2:7月20日(土)

この日は地下鉄で球場に向かったのだが、地下鉄車内にどこぞの保育園園児の「七夕短冊」が飾られており、たいがいの子が「あしがはやくなりたい」とかヘロヘロの字で書いてる中、「さっかーじょうになりたい」と書かれた短冊を発見して私の笑いの琴線が反応し、抑えるのに苦四苦八苦。

「せんしゅ」じゃなくて?サッカー場は物質やぞお前。あ!サッカーが好きすぎてサッカー場になれば毎日サッカーが見れると思った?自分がグリーンスタジアムが好きなのと変わらん?と思うと、ほっこりしたり。でもひょっとしたら「さっかーじょう「ず」になりたい」と書こうとしたの?そうこうするうちに総合運動公園駅。地下鉄って退屈で気が遠くなるので、考えることがあるのは、ありがたい。

球場に着くと、シンプルに暑い。夕方なのに暑っ。この日はあまり風もなく、じっとり重い空気が全てを包み込む。それでもカスティーヨと岸のテンポいい投球でちっとは場内の空気は少し涼しげになるが、まさか4時間半の長丁場になるとは… 誰も思っていなかった。

オリッがこつこつ取った2点を「リスが口の中にどんぐり隠すように」守り切ろうとしていた9回裏、頼みのマチャドがフランコに「どぎゃん」と打たれて、延長戦。12回に代打でようやく登場した「遅番」のマスター・阿部が眠い目で「ぶひん」と決勝打を放ち(打たれたのは初セットアップのシュンペータ)結局オリッが負けるのだが… 試合のポイントはそこにはない。

12回裏にオリッを理不尽にいたぶる「ターリーの不条理劇」がすごすぎた。

1アウトを取るも、帰り支度を始めるオリッファン(10時過ぎとるから大阪より向こうの人帰れまへん)の足を止める、ターリーの恐ろしい異変。なんとそこから三者連続フォアボール。惜しい球などひとつもなく「どっかの部品壊れた?」としか思えない、キャッチャー立ち上がるレベルのすっぽ抜け連発で、満塁なのである。

「このままバッター立ってるだけでサヨナラやん」な状況をたった一人で創作する、魔術師・ターリー。「それが使命」のように力強いすっぽ抜けを12球も投げ込むターリーに、その場にいた全員が戸惑うばかりである。

時刻は10時半。「なんでもええからはよ帰らして」の願いを叶えたのは、残念ながら中川圭太。「やっとこさストライクゾーンに入りましたあ」を痛打するも、前進守備のサード真っ正っ面。5-2-3の併殺で、オリッファンにぬか喜びさせただけの不条理劇は残酷に終了。オリッにしてみたら、誰もヒットすら打ってないヘンテコなチャンスと結末。ベンチに戻る楽天選手はみんな笑いを噛み殺していたのである。

疲れた。でも。投手もう残ってなかったのか?ターリーを代えなかった今江監督、だいぶ根性が座ってきたなと感心。まあでもこんな時間までこの球場にいれたのも久しぶりなので、それはちょっと嬉しかったり。

 

▪️ゲーム3:7月21日(日)

私はこの球場のことは知り尽くしている。真夏の16時試合開始が何を意味するかも。この日は毎年恒例・試合終了後に大花火大会開催ということで16時開始だったのだが、スケジュールを組む人は7月中旬のこの時刻に35度を超す猛暑になるとは思わなかったのだろう。太陽フレアをナメたらあかんぜよ。

花火大会も見れるということで、場内は超・超満員。でも超・超・超酷暑。特に日が暮れるまで日陰にならない三塁側のお客さんは、砂漠に放置された流民状態。みんな「ゆでだこ」のような顔をして、しょっちゅう冷たいものを買いに走ったり、そのまま日陰のある通路で立って観戦したり(それでも暑いが)、観戦をあきらめて球場外で座り込む人も多数の大混乱。

もちろん野球選手だって、暑くてたまらんはず。せっかく一軍選手になったのに炎天下で試合するなんて。よりによってオリッは黒のサードユニで、見てるだけで暑い。結局この日がミスやエラー続出の集中力を欠く荒れた試合になったのは、16時試合開始が影響していないとは言い切れないだろう。

ファームで炎天下に慣れているから?オリッの先発は佐藤一磨くん。しかし佐藤くん、絵に描いたような「散々な出来」で自らタイムリーエラーまでして早々に試合を壊してしまい、余計に場内を「ざわざわざわ」とさせる。楽天先発・球宴選出投手の藤井もなんか足元フラフラした投球で、やはり暑さにやられたのかなと。

荒れた試合を取れるのは、やはり打力のあるチーム。この3連戦で痛感したのは、楽天イーグルスって打線「強い」てこと。特にここ一番で「うりゃっ」て決めれる野獣系というかビースト感溢れる右打者が多くて(浅村、阿部、フランコ、石原… )、ほんと恐ろちい。長打力あるしなあ。オリッは… ラオウが復調気味なのは朗報として、あとは頓宮あたりが… 。

と思ってたら、最終回に頓宮が頭部死球を受けて昏倒するという衝撃のシーンが待っていた。「頓宮昏倒」ってすごい字面やけど。幸い起き上がったので、よかったよかった。でも走塁時に打撃好調の太田が足を痛めたらしく、これはムチャ痛いやんか。

この試合の収穫は、久しぶりに石川亮のキャッチャー姿が見れたことか。でも最終回の打席は代打にトーマスが送られて幻に。噂の古田島も最終回に出てきた。ほんまに吠えてた。さすがにこの点差なので「優勝」は見れなかったけど… 。

結局、3連敗(チームとしては4連敗)となってしまった、とほほの神戸3連戦。でも連日満員で、なんだか全盛期ブルーウェーブを思い出すような昭和な賑わいぶりで、ノスタルジックな気分にもなった。大敗したって、花火大会で「帳消し」だしね。

3日間、特に21日は延々炎天下にさらされながら「魔チャンステーマ」を奏で続けた楽天応援団の皆様、お疲れ様でした。

さて。7月19日の試合前、練習を取材させていただきました。
次ページは、お馴染み専属カメラマンの写真集をどうぞ~。

 

 

南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
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