スポーツイラストレーターT.ANDOHの「OUTSIDER’s ReCALL」(84)レペゼン兵庫!松崎賢人が繋いだ被災地・熊本の輪
2024年3月15日 (イラスト・文/T.ANDOH)
こんにちは!スポーツイラストレーターのT.ANDOHです。
前回、神戸ストークスの松崎賢人選手の現役引退に寄せてコラムを書かせていただきました。
兵庫時代から熊本を経てカムバックした松崎賢人選手はストークスの象徴的な選手でありますが、ともに地元兵庫県出身で初期のストークスを牽引してきた谷直樹、道原紀晃、中西良太といったベテラン選手を見ても、ストークスが地元選手を起用して一時代を築いてきたというチームポリシーを感じます。
前身の兵庫ストークスが、神戸と名乗らずにあえて「兵庫」と称したのは、「兵庫=神戸」ではなく、播磨地域や但馬地域など、広く豊かな地域性に恵まれた兵庫県を舞台に「オール兵庫」で県民の支持を得て羽ばたいてほしいという願いが込められたものでした。
初期には赤穂とか豊岡でもホームゲームを開催してましたからね。
そのためストークスでは、僕が手掛けた松崎選手をはじめとした「レペゼン兵庫」な選手のイラストグッズを、長年販売いただいておりました。
最近では、冒頭のイラスト。
2021年シーズンに渡邊翔太選手が加入すると、兵庫県出身選手が増えたため、道原、谷、中西、渡邊、松崎の5選手でイラストを作成し、Tシャツなどに展開していただきました。
そんなこちらのイラストはリバイバルでして、受け継いできた元ネタがあります。
そしてそれは、松崎選手が移籍した熊本ヴォルターズと熊本地震にも関わるエピソードともなります。
2014年、松崎賢人選手が熊本ヴォルターズに移籍したことは、初期の兵庫ストークスを応援する我々にとっては大きなニュースでした。
ずっと生え抜きでストークスに骨を埋めるものと思っていた松崎選手の移籍ですから。
それでも、この年就任した清水良規ヘッドコーチに請われての移籍。
同級生の遥天翼と前年に移籍した中西良太も擁してチームの補強をはかった熊本に、期待を受けての移籍だったため、松崎選手の前途を前向きに受け止めて熊本へ送り出したのでした。
そんな移籍2シーズン目のシーズン最終戦は、熊本でのストークス戦。
松崎選手のお父さんである富士男さんのご提案で、ストークスとヴォルターズのコラボ企画が生まれます。
それが上の作品。
まさしく兵庫でともに戦った道原、谷、中西、神原裕司、松崎賢人がまさに熊本と兵庫で別れたものの、お互いの成長を称えながら最終戦で相まみえる。
そんな兵庫を拠点にして2つの土地で活躍する生え抜き選手たちの企画イラストを、こちらも限定グッズでの販売を目指して描かせていただきました。
このイラストを描き上げて、富士男さんにメール送付したのが2017年の4月14日。
午後も9時を過ぎた時間帯に、全てのチェックを終えてまさしく送付ボタンを押した直後に、テレビの向こうがざわつきました。
マジな偶然のお話です。
テレビ画面が切り替わると、テレビの向こうではライトアップの光に煙が照らされる熊本城の姿が…。
熊本地震の瞬間でした。
チームは神奈川(現・川崎ブレイブサンダース戦)に遠征中。
中西良太選手は足の怪我で熊本にいて被災しました。
すぐさま富士男さんに電話をし、イラストグッズを販売する予定だった5月8日のストークス戦の開催是非について確認。
その後、僕も親交のある遥選手や中西選手にも連絡などをして状況を聞いてみれば…
「バスケどころじゃないだろう…」
そんな結論に皆が至った夜となりました。
選手がチームを挙げて支援活動にも動くと聞いたため、再度富士男さんに相談をした末に加筆して描き上げたのが…
小林慎太郎選手(当時)の呼びかけで発足した「熊本ヴォルターズ選手会」の復興支援Tシャツとして急遽製作をし、ヴォルターズ選手が復興活動に着用。
炊き出しなどで選手が着用してくださったこともあり、チャリティー販売も展開されて、震災復興のシンボルとしてお役立ていただきました。
そもそもが、兵庫と熊本で別れた仲間(BUDDIE)がバスケで再会する喜びを「It’s a good day to play Basketball」とタイトルにして描いたイラスト。
そんな選手たちにとってバスケができないことの辛さが、この標語をさらに皮肉めいたものにしてしまった…。
それを受けて作ったのが「BEST BUDDIES ★ KUMAMOTO」
どんな状況に陥っても、バスケで繋がる仲間は最高の仲間。
希望を失ってほしくない気持ちで作ったイラストが、多くの皆さんの希望にもなってくれたことは最高の描き手冥利となりました。
今シーズンの最終戦は4月20、21日。
神戸ストークスは、なんと熊本ヴォルターズとのホームゲームとなります。
松崎選手がプレーで繋いできた兵庫と熊本のご縁は、こうしてまた松崎選手の最後の試合として巡ってきます。
そして、いまでは中西選手も含めて再びストークスグリーンのユニフォームで集結したBEST BUDDIEたちが送り出す最終戦。
引退の花道を、思い出深い2つのチームとともに迎える松崎選手の最後の勇姿を、ぜひ神戸のたくさんの方の目に焼き付けてほしいです。
※イラスト・写真の転載・無断使用はご遠慮ください。使用をご希望の場合はK!SPO編集部までご連絡ください。
スポーツイラストレーターT.ANDOH
おもにスポーツを題材にしたイラストやデザインの創作で、スポーツ界の活性に寄与した活動を展開中。 プロ野球やプロバスケBリーグのチーム、選手にイラスト提供。 プロ野球選手には、伏見寅威選手(北海道日本ハムファイターズ)、中川圭太選手(オリックス・バファローズ)にロゴデザイン、イラスト提供中。 名古屋在住にも関わらず20年来のオリックスファンであり、その由来とイラストレーターの起源は神戸にある…!? |
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