スポーツイラストレーターT.ANDOHの「OUTSIDER’s ReCALL」(83)神戸ストークスの司令塔、松崎賢人引退発表

2024年3月7日 (イラスト・文/T.ANDOH)

こんにちは!スポーツイラストレーターのT.ANDOHです。
プロ野球のオープン戦が始まると、秋春制のバスケットボールはシーズンも終盤を迎えます。順位争いが大詰めになってきたり、来季のウワサも見え隠れする春先の2月27日に、神戸ストークス背番号3番の松崎賢人選手の引退発表がありました。

松崎賢人
神戸ストークスの前身、兵庫ストークス発足時に入団した「1期生」の一人となります。
2011年に発足した兵庫ストークスの一年目に大卒で入団してきた松崎選手は、谷直樹選手、道原紀晃選手に次いでストークスでのプレーが長い選手。道原選手は2シーズン目の入団となるので、松崎選手は熊本への移籍期間があり在年数こそ1シーズン短いですが、最古参の選手の一人となります。

兵庫県相生市出身、育英高校卒で国体メンバーとしても活躍した地元選手。
多くのストークスブースターには、そんなフランチャイズプレイヤーとしての印象が強いでしょう。
一方で、松崎選手は入団当初から活躍と挫折のなかで戦い続けてきた選手なんです。
拓殖大学に進学した松崎選手はJBL(当時)のトライアウトに参加も不合格。ストークス入りは最後のチャンスでした。

谷直樹選手とルームシェアをして暮らしながらバスケに打ち込んだ1年目。周りの実業団チームに最初は全く歯が立たなかったチームでしたが、BTテーブスHC(現・WJBL富士通)の指導もあってチームは徐々に成長。
1年目からプレーオフ進出。
2年目にはJBL2リーグ優勝!

NBLリーグ昇格の立役者として、松崎選手は大車輪の活躍をします。
生粋のポイントガード。
洞察力もあり、攻撃力もある松崎選手のプレーは、ときに30点近くの得点を重ねたり、外国人選手をうまく活かしたハンドリングと、プロの世界でも通用することを自信づける成長を見せてくれていました。

ところが、チーム方針や起用法もあり、2014シーズンからは熊本ヴォルターズに移籍することになります。
新天地、熊本でもレギュラー選手としてチームを支えてきましたが、2017年春には熊本地震が発生。
チームが壊滅的な状況に陥り、借りていた家も家財道具が飛散する被害を受けました。
練習ができず、炊き出しをする毎日の中でも、松崎選手はチームの先頭に立って復興支援活動をしていきます。

そんな中、
選手会の復興活動を松崎選手の父、富士男さんも支援して、オリジナルのTシャツを製作。その際には僕もTシャツのイラストを描かせていただき、支援活動をお手伝いさせていただきました。

Bリーグ統合前、bjリーグのファイナルが開催された会場で、NBLのチームである熊本ヴォルターズの選手会がチャリティブースを開いたんです。
リーグ分裂時の異例のコラボ。
リーグをまたいだ復興支援の場にも松崎選手は立ちました。

翌2016シーズン、Bリーグが発足すると、松崎選手は西宮に移転した後のストークスに復帰します。
「戻ってきてくれへんか」
渋谷オーナーのこの一言で、復帰を決意。
新リーグの顔として、地元の期待を背負った復帰でした。
チームの中心選手としてガッチリはまり、B2リーグ初代王者、B1リーグ昇格に貢献します。

ところが、西宮ストークスは、B1リーグは2017-18シーズンのみで成績低迷。
1シーズンでB2に降格をしてしまったものの、松崎選手は退団することなくチームを守り、その後は4人のヘッドコーチのもとでプレー。

長いシーズンの中、大きな怪我も経験していないが、起用に関してはムラが出てベンチを温める時期もありましたが、それもプロとしての自分の役割をしっかりとわきまえて起用に応えるよう待ち続け、ゲームに出ればベテランの安定感のあるハンドリングを見せてくれた松崎選手。
今シーズンをもって引退と決意すると、チームもその功績を称えて、シーズン中に引退発表というタイミングを与えてくれました。

それは松崎選手の今までの功績と人柄を表していると思います。
チームの起伏、自身にも山あり谷ありのバスケ人生の中でほんとうに苦労した時期もあったと思いますが、持ち前の明るさと人懐っこさでチームやファンに元気と希望を照らし、自らも高めてきた松崎選手のキャラクターだからこそ乗り越えてきたのでしょう。

じつは逆境から始まったプロバスケ選手人生。
そして移籍、地震と数々のターニングポイントを乗り越えてきた松崎選手です。
播州男です。
芯の強さは持ってます。
そこに持ち前の明るさが加わって、厳しい世界を走り続けてきました。

最後はたくさんのファンの前で選手人生を終えることができる。
プロとしてこんな幸せな報いはありません。
地元のたくさんの恩人の期待も背負って、最後まで走り続けることでしょう。
残されたシーズンはあと1カ月。
ぜひ松崎選手の有終の美を、ぜひ皆さんも会場でご覧いただければと思います。

 

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スポーツイラストレーターT.ANDOH

おもにスポーツを題材にしたイラストやデザインの創作で、スポーツ界の活性に寄与した活動を展開中。

プロ野球やプロバスケBリーグのチーム、選手にイラスト提供。

プロ野球選手には、伏見寅威選手(北海道日本ハムファイターズ)、中川圭太選手(オリックス・バファローズ)にロゴデザイン、イラスト提供中。

名古屋在住にも関わらず20年来のオリックスファンであり、その由来とイラストレーターの起源は神戸にある…!?

 

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