南 郁夫の野球観察日記(226-1)球春を。迎えに行く 〜SGLスタジアム 阪神vsオリックス

2026年3月14日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

 

華々しくWBCが開幕。国旗を背負った一流選手のプレイに日本中が(Netflix加入者が?)熱狂し、いささか過剰に「球春到来」を告げる雰囲気ではある。でも、私は野球観察者。画面越しに見せられるドーム野球では、1インチも球春を感じられないのである。球春は、家で与えられるものではない。こちらからお迎えに行かないと、いけない。

というわけで、今年も出かけたファーム教育リーグ 3月11日(水)阪神vsオリックス。すっかりお気に入りの場所となった「SGL」で、強引に球春を感じようではないか。

平日の昼下がり。油断するとすぐ読み方を忘れる阪神電車「大物」(だいもつ)駅を降りると、そこに見えるはエメラルド・シティへつながる(しょぼい)イエローブリックロード…。この先に「魔法」が待っているのよ♪

昨年2回ここを訪れているが、曇天ナイターだったので、晴天昼間は初めて。さすがに平日の教育リーグは観客もまばらで(同時刻、甲子園でもオープン戦やっとるし)絶好の「のんびり」空気のなか、内野席に腰を下ろしただけで多幸感に満たされる、ワタシ。

久しぶりに聞く乾いたバットの音色、土を跳ねる硬球のくぐもった音、グラブが鳴らす濃密な破裂音、フライ時に野手が発する切迫した叫び声(がりがりがりがり!)、ファールににげまどう観客、バックスクリーンにこだまする審判のコール…。

気温は10度。暖かいとは言い難いが、耐えられないほど寒くもない。ときおりジャンバーの襟にうずめた顔に当たる風から感じる、「ぷくぷく」とした春の予感。明らかに冬とは違う太陽のわずかな温もり。昼休み後のけだるい空間に通奏低音のように「ゴーッ」と抑えめの音量で鳴り続く、日鉄鋼板工場の稼働音。

完璧やないか。これぞ、現実世界の肌で感じる球春。グラウンド上の育成選手中心の野球にはなんの起伏もなく(超貧打線)、WBCの試合がゴールデンタイムの人気ドラマだとすれば、サンテレビお昼の再放送時代劇のようだが、情報量過多のWBC中継に疲れた野球脳には、ちょうどいいんだこれが。思わず平和な笑顔が出てしまう、最適解の舞台。

とはいえ、見どころはあるにはあった。一軍?のラオウや西野が調整出場してヒットを打ち、大好きな博志が先発して、毎回のようにヒットや四球を許しながらも、なんだかんだで5回を1失点で抑えたのだ。そら投手はビシバシ抑えるのが理想だろうが、私は博志の「むにゃむにゃ」とぼけた投球が好きなのである。一軍相手に通用するかは知らんが。

地味な試合には、最終回に地味なドラマも待っていた。阪神・今朝丸裕喜、オリッ・堀柊那の2023年春の甲子園準優勝・報徳学園バッテリー対決が実現したのである。スタンドの若い女子若干名が明らかに色めき立っていて、微笑ましい。長い真剣勝負の末、結果はセンターフライ。将来あるローカルヒーローたちは、この日の陽光のようにまぶしかった。

ちょうど寒くなってくる夕方4時前に、試合は終了。挨拶に出てきた阪神二軍・平田監督があの笑顔でスタンドに手を振り、ファンからは「おつかれ生!」の大合唱。ああなんと親密な、ちょうどいい野球の光景。

SGL球場よ、素晴らしい球春をありがとう。

次ページでは、専属カメラマンの球春ショットを、どうぞー。

 

 

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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」

 

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