南 郁夫の野球観察日記(177)それでも。交流戦で流れを変える!オリックス

2024年6月1日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

その瞬間。ホームベースでは頭からサヨナラホームインした宜保をラオウが抱き上げ、一塁ベースではサヨナラ犠飛を放った宗を頓宮が抱き上げている!男が男を抱き上げる「2本柱」が同時に立ち上がっているちう、奇跡のような奇祭のような、見たこともない「男男した」胸熱オリ髭シュールな光景が繰り広げられたのである。それを同時にカメラで捉えることは物理的に無理だったが。

5月31日(金)中日ドラゴンズとの交流戦初戦は、サヨナラ勝ち。

そう。まずは驚くべき事実を伝えねばだが、コアな読者の方はお気づきの通り! 私は京セラに足を運んだのが今季3回目で「全て」サヨナラ勝ち(紅林、クレ坊主、宗)、そして先日単独写真レポートをした専属カメラマンは足を運んだ4回「全て」がサヨナラ勝ち(紅林、クレ坊主、宗、宗)である。チーム成績を考えると怪現象としか言いようがない。球団は我々を「てるてる坊主」のように毎日ベンチに吊るすべきであろう。

最終回に出た途中出場・宜保ちゃんのヒットと好走塁が大きかった。沖縄凱旋で「一皮剥けた」感がある、宜保。ここ一番でもっと使ってほしいところ。サヨナラ犠飛という結末もV3チームの執念が感じられて、渋かった。こうやって勝ちを「拾っていく」しかないのである。

チームの現状は。まことに苦しいと言わざるを得ない。由伸とサチヤがいなくなっても大丈夫!なはずだった投手陣は、V3の皺寄せ?かなんだかんだ故障者続出で満身創痍。この日先発のカスティーヨとエスピノーザ、マチャドという新外国人選手たちがいなければとっくの昔に壊滅してたはず。野手陣も謎の体調不良者・打撃不良者続出のうえ、今日のサヨナラ勝ちの裏では、せっかく調子上がってきた森が足を痛めるという、洒落にならん事故が。

この日は中日が調子を合わせてくれたのでよかったが、シングルヒットがまばらに出るだけで、ホームランなど夢の夢、長打さえ誰も打てましぇんな打線は見ていてしんどくて… だが、既視感はある。忘れたとは言わせない、ほんの数年前。オリッの試合ってこんな感じだったではないですか。たまに訪れるチャンスは潰れて当たり前、まれに打線が繋がってびっくりして飲み物こぼす、ちう。それを楽しんでいたはず。

現状いろいろうまくいってなくとも、今いるメンバーで頑張るしかないのだ。ようやく頓宮のバットがいい音してきたし、この日上がってきたラオウも形はどうあれヒット打って盛り上がったし。この二人の打球がだんだん遠くへ飛ぶはずやんね?と思いたい。他も含めてV3を成し遂げた選手たちの経験値はこの苦境でこそじわじわ生きてくるはずである。

交流戦。見る方にもいい気分転換になって好きだ。普段見ないチームの選手やファンは新鮮。中日の応援団は相変わらず「実直」で迷いがなくてキレがいい(試合展開に関係なく)。応援もクリーン。実は私、中日の帽子かぶってる人ってなんか野球通っぽい感じがして、密かに羨ましかったりもする。あ。そういや近くに「上下」中日ユニの人がいて「細かすぎて伝わらないモノマネ」の牧田さんか!と心で突っ込んだ。レプリカユニって、上はいいけどズボンまで履くと「ううわっ」と思っちゃうのは、なんでか?

この日は2安打しか打てず、失礼ながら中日も応援しがいのあるチームのようだが、セカンド田中をはじめ、内野守備は際立っていた。これは伝統?
あと、私の目は先発の涌井に終始釘付けだったことを白状しておく。一挙手一投足、こんなに「大人の色気」のあるピッチャーは12球団どこを探してもいない。

オリックスの巻き返しはもちろん、セ・リーグ選手ウォッチングも楽しみでしょうがない。
交流戦は、始まったばかりである。

 

南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
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