南 郁夫の野球観察日記(147)とにかく明るい石川亮

2023年6月9日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

吉田正尚が抜けてどうよ?と思われた今年のオリックスだが、交流戦半ばでリーグ首位争い中と、まあ好調を維持。でも吉田の不在以上に私が心配していたのは、同時に伏見寅威と大下誠一郎も抜けてしまい「一体誰がベンチで声を出すの?」問題。また静か~でおすましなベンチに戻るのか?と思いきや… この男の加入が、大いに盛り上げてくれているではないか!

石川 亮 #37 神奈川県川崎市出身 帝京高校ー日ハム(2013年ドラ8)ーオリックス

斎藤綱記投手とのトレードで日本ハムからきたこのキャッチャーの突き抜けた明るさが伝染し、今年のチームには例年になく笑顔が多いなと感じるのは、私だけであろうか?

現役(バッテリーコーチ兼任)時代の中嶋監督と汗を流したという経験も大きかろうが、臆することなくベンチで監督のそばに座り、常に大声でチームメイトを鼓舞する姿がカメラに映り込む。チームと一体となって、得点シーンでは誰よりも喜ぶし、ピンチ時には誰よりも声を出す。いつでも真っ先にベンチを飛び出す!試合に出ていないのに存在感満点なのだ。今年は辻竜太郎コーチが、かすみがちである。

石川の明るさは、伝染する。今年のベンチでは各選手の笑顔が絶えない。そして、何より中嶋監督が今までになく「表情豊か」に見える。そばに石川がいていちばん嬉しいのは、監督なのだろう。(ロッテに行った大下も吉井監督に気に入られてるらしくて、嬉しい)

初めて彼を生で見たのは、静岡でのオープン戦。その頃にはオリックスに何年もいたかのようにすっかりチームに馴染んでおり、試合前の練習も実に楽しそうで、ひっきりなしに誰彼なくなんか喋っていた。難しい球を捕ったら大はしゃぎで後輩にも平気でイジられたりしていたが、無理に「ひょうきん者」を演じている感はなく、ナチュラル。初夏の空のように、どこまでも爽やかな明るさなのだ。

彼のいる周囲に常に笑顔があり、人の心を開かせる「何か」を持っているのだろう。パッと見の「若手っぽさ」が実際の年齢とかなりかけ離れており、10年目と知って驚く。ほぼ二軍生活で苦労もしたはずなのに「爽やかさ」を保ったまま人懐っこい元気者。周囲に伝染する明るさを持つ男。今後のオリックスを支える「新・声出し番長」はこの男に任せておけば安心だ。しかも「Bsオリ姫デー2023」のオリメン投票にもちゃっかり選ばれているイケメンである。

キャッチャーというポジション的には同年代の森、若月がいて頓宮の存在もあり、今年28歳になる石川亮の立場は極めて微妙。それでも「そのとき」に備えて明るく前向きに準備している彼の姿が、チームに健全な新風を送り込んでいる。極めて重要で必要なピースなのだ。

もちろん、彼も声を出すためだけにチームに来たのではない。密かにそのときを待っている。そして長いシーズン、この男を必要とする状況は必ず来るだろう。そのときこそ、別人のような顔で真の実力を発揮してくれるに違いない。笑顔の奥で牙を研いでいたことが証明される日を、私も心待ちにしている。

(今のところ)試合に行けば、球場のどこかで「とにかく明るい」石川亮の姿を見つけることができる。皆さんも球場に行ったら、背番号37を見つけて、じいっと観察してみてほしい。なんだか元気になるから。

彼の明るさは、伝染するのだ。

 

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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
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