南 郁夫の野球観察日記(71-1) No Mission October~オリックス最終試合に行ってきた

2019年10月7日(文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

2019年も、オリックス・バファローズに10月はなかった。9月29日のシーズン最終試合に京セラドームに足を運んで、しっかり終戦を目撃してきたリポートである。それにしてもの今シーズン、同じ日(9月24日)にパリーグ全順位が確定するとは… 選挙じゃあるまいしっ。実は(オリッ最下位決定の)その瞬間も京セラで目撃した私だ。全チームが最後まで競り合った一年、てことにしておこう。

チームの順位は確定とはいえ、山本の防御率1位がかかっていたこの最終戦。渾身の投球でタイトルを決めて見せた山本の堂々たる貫禄と、相手のソフトバンク先発・高橋礼の見事なアンダースロー(萌え)っぷりが初めて見られて、なかなか見応えある試合となった。彼らは間違いなく、これからの球界を背負っていく投手。キラキラしているな~。

そんなキラキラ選手もいれば、光が消えて去る者もいるのがこの季節。この日はオリッ一筋14年の岸田投手の引退試合でもあった。9回に満場の大声援を受けてマウンドに上がった岸田は、あの小首をかしげる独特のフォーム(久しぶりに見た)で打者一人を三球三振(ありがとうね高田くん)で有終の美。西村監督やチーム全員にねぎらわれて大歓声の中、マウンドを降りていったのである。

事あるごとに「人柄の良さ」「慕われ番長」ぶりが伝わってくる岸田投手。試合中の特別観覧室にはなんと、金子(日ハム)、西(阪神)、伊藤(横浜)、坂口&近藤(ヤクルト)の姿が!「なんで手放したんすか?組」の皆さんがわざわざ各所から勢揃い。西なんてまだ阪神がCSかけて戦っている最中だったのに…。それだけ岸田が皆に慕われているということ。彼らが主力だった頃を思い出して、ちょっと感傷に浸る。ちょっとだけ、だが(爆)

試合後の引退セレモニーの雰囲気も温かく、なかなかここまでやってもらえる選手はいないと思える岸田。何と言ってもこのご時世で、同じチームで14年である。とするとフロント入り?そこらの噂は聞こえてこないが「円満退社」の後はどうするのだろか? 普通に(普通の)営業とかできそうに見える、独特キャラの岸田マモさんであった。

さて。最終戦に岸田とともに一軍登録されたベテラン選手が、あと二人。安達とT-岡田である。この二人がめっちゃ気になる。岸田の履正社の後輩であるT-岡田は終始泣きっぱなし(彼らしい)で、気になる報道も相まって、めっちゃ気になる。代打コールされたときの球場の大歓声は、この選手の根強い人気を示していたと思う。何があかんの?Tさんの。このチームに不足しているホームラン打者だけは失いたくない、私は。
後日「この日の大声援に心を動かされ残留を決意した」との報道が! 現場にいた者としてはうれしい話だ。(ホント彼らしい)

というわけでシーズンが終了し、待たずして西村監督の続投が発表されている。来年はいったい、どうなるのだろうか?のオリックス。まずは防御率1位と勝率1位(山岡)の2人の投手がいるのに最下位!という一軍の戦力バランスと選手起用法と戦略をどうにかしなくてはならないだろう。圧倒的な得点力のなさは… 見ててほんましんどいんです。

同じような(小柄な)選手がずらりスタメンで「ちょこん」と流し打ちで足を絡めて… は、正直つまらん。(個人の感想です)打率低いし緻密じゃないが、どっかーんと長打は打てる(そう、ヤクルト村上のような)人材起用、プリーズ。三振ばっかでも我慢するから。大味と言われようが、投手が抑えている間にホームラン連発で勝ちたいっ。(個人の感想です)

もちろん。今年のオリッにも希望はあった。投手では山本と山岡、打者では吉田正尚が球界を代表する選手に育ってくれた一年。花マルである。他の若い投手たちも躍動しているし、宗やルーキー中川は完全にレギュラーを獲れるポテンシャルを示した。新しい息吹は、確実にある。

そんな中でも個人的に嬉しかったのは、シーズン最終盤にルーキー宜保くんが一軍に上がって、攻守に活躍してくれたこと。私が見た試合では、他選手がからっきし打てないハム金子からクリーンヒットを放ったし、最終戦でも思い切りよく鋭い打球を見せてくれた。足も速いし、守備もいい。

昨年12月の新人選手入団発表記者会見では完全にメディアに「ノーマーク」だった宜保くんは、簡単に私に捕まって初々しい(感覚的な)話をしてくれたのだが、失礼ながら、そのときまだ高校を卒業していない痩せぎすの彼に「一軍に上がって金子からヒットを打つぞ」なオーラは、微塵も感じられなかった。それがどうだろう!若者の成長はすごいし、やはりプロ野球には夢があるなあ、と思う。頑張れ!宜保くん。

というわけで、オリッ・ファンには例年通り10月からオフシーズン開始である。オフの間にさらに力をつけた若い選手たちが来年は爆発し、T-岡田や安達がそれを引っ張り… を夢見て。野球のない日々を過ごそうと思う。

は?来年神戸で8試合しかないって? あのなあ。は?

次ページは、専属カメラマンによる岸田マモさん引退特集

 


<過去コラム一挙掲載!>
オリックス、元メジャーリーガー、女子野球…ベースボール遊民・南郁夫の野球コラム集。

 

南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」

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