南 郁夫の野球観察日記(47) オリックス 背番号の変遷「20」~「29」

2018年2月24日(文/南 郁夫)

先日、たまたまヤクルト・スワローズ関連書籍で、ヤクルトには「準永久欠番」という制度があるのを知った。このチームでは「1」と「27」は欠番だが、「ふさわしい選手が現れれば付けてよい」との決まりだという。それぞれ若松、古田両氏に敬意を払ってのことだが、ご存知のように「1」はその後、生え抜きの池山、岩村、青木、山田が他番号から「昇格」して受け継いでいる。

これは、なかなかいい制度ではないか。特に「1」をチームの中心(に成長した)選手が受け継いでいこう、と定義づけているのがいい。こういうのが、背番号の系譜てもんであるわいな。もちろんチームによって事情は違うのだろうが、やはりファンとしてはブレない番号イメージを求めてしまう。「線」でチームを見ているから。で。連載開始以来浮かび上がってきた、背番号に関するオリックスという球団のイメージは… 「無・頓・着」。これに尽きる。
そんなイメージは覆るのか?今回は20番台。

「20」
谷良治[投](89-91)、本東洋[投](92-94)、渡辺伸彦[投](95-97)、木田優夫[投](98)、川越英隆[投](99-04)、山本省吾[投](05-10)、寺原隼人[投](11-12)、馬原孝浩[投](13-15)、近藤大亮[投](16-18)

「右のエース級」であってほしい「20」。が、オリッのラインアップを見ると、エース番号ではなさそうだ。山本は「左の20」で、違和感があった。その山本を最後にFA投手が引き継いでいたこの番号を、現在は若い近藤が背負う。右の力投型である近藤は私のイメージに近いので、期待してる。しかし、20の代表選手はルーキーイヤー「だけ」エース級だった川越としておく(松坂がいなければ新人王だった)。その後は、不遇だった川越(最後は11に背番号変更)。KO後にベンチで伊原監督に延々説教される姿が中継に映されるなど、可哀想キャラだった。不憫。

「21」
今井雄太郎[投](71-90)、矢野実[投](91-92)、野田浩司[投](93-00)、ユウキ[投](02-04)、ケビン[投](05)、吉井理人[投](06-07)、ユウキ[投](08)、甲斐拓哉[投](09-11)、西勇輝[投](12-)

完全試合・今井が試合中に酒をあおる! 19奪三振・野田が舞う! メジャー帰り・吉井がヒゲをさする! 役者が揃う「21」である。ただ、オリッの21となると、やはり生え抜きの西ということにしたい。したいが… 「小久保の引退試合を台無しにしたノーヒッター」という伝説も持ち、マウンドさばきも立派だし、(一見)明るいキャラだし、とっくに「エース」として君臨していてもおかしくない西なのに、いつまでも彼に漂う「下っ端」感は、なんなのだろう? 原因不明の不調や顔面痙攣、骨折など、定期的に彼を襲う「とほほ」なイベントは、なんなのだろう? それが西くんか。それでも「きっと大丈夫、キャハ!」うん。それが西くんか。

 

「22」
小林敦美[投](89)、二宮正巳[投](90-92)、小林宏[投](93-04)、岡本晃[投](05)、ユウキ[投](06-07)、前田大輔[捕](08)、伊藤光[捕](12-)

「22」は一般的には、投手か捕手。田淵と藤川のイメージは大きい。大魔神・佐々木もか。オリッではずっと投手がつけていたが、前田が初めて捕手で22をつけて、伊藤に引き継いでいる。で。全体を見渡してみると、やはり小林宏は捨て難い。「オマリーへの14球」という語り草を持つ。が、改めてこの日本シリーズの死闘を思い出すと、「ようあんな球で抑えきれたな」と、むしろキャッチャー中嶋の凄さを思い出してしまうのも事実。人柄のいい小林には我慢してもらって、オリッの22は現在の絶大な人気と未開の才能を評価して、伊藤光ということにしておきたい。レギュラー奪回の期待を込めて、である。

「23」
小川博文[内](89-00)、ビティエロ[内](01)、早川大輔[外](02)、ブラウン[外](03-04)、北川博敏[内](05-12)、伏見寅威[捕](13-)

オリッに限って言えば「23」は野手番号。北川はすぐ名が挙がるが、そもそも近鉄色が強い選手。言わずもがなの「奇跡伝説」も昔からのオリッ・ファンにしてみれば「やられた側」なので複雑。それでも「オリッの北川」として、アンパンマンの出来損ないルックスと勝負強い打撃で、チームの「合併症」の弊害を癒してくれた功績も大ではある。難しい時期のチームを救ってくれたが… やはりBWの23「ヒロフミ~オ~ガワ~」を、このチームの顔に推したい。彼はなんと晩年の移籍先・横浜時代を含めて「現役15年すべて背番号23」を守り通したのである。23しかつけたことがない。これはすごい。

「24」
飯塚富司[外](88-94)、D.J[外](95-97)、ヒロ[投](98-99)、河野亮[内](00)、肥田高志[外](02-04)、ブランボー[外](05-06)、後藤光尊[内](07-08)、レスター[投](09-10)、宮崎祐樹[外](11-)

「24」は投手でも野手でもだが、オリッでは「ほぼ」野手番号である。が、このラインアップは… サブい。けっこう長いこと24をつけていることになる現役の宮崎を評価してあげたいが、しかし!1996年9月23日の対日ハム戦9回裏2死走者なしの代打で登場した「D.J」が放った「ザ・同点ホームラン」よ。この1本によって、永遠に背番号24はD.Jなのである。あれがなければ、前年に引き続いて地元胴上げが幻に終わるところだった。何日も何日も通いつめたグリーンスタジアムでイチローのサヨナラ優勝ヒットが見れたのは、マジでD.Jのおかげなのである。BWファンは一生あの「ザ・同点ホームラン」を忘れないだろう。

「25」
藤田浩雅[捕](83-91)、勝呂博憲[内](92-94)、平塚克洋[外](95-96)、佐竹学[内](97-04)、JP(パウエル)[投](05)、アレン[外](07)、迎祐一郎[外](08-10途中)、長谷川昌幸[投](10途中-11)、佐藤達也[投](12途中)、李大浩[内](12途中-13)、竹原直隆[外](14-15)、ミッシュ[投](16)、コーク[投](17)、西村凌[捕](18-)

「25」といえば阪急時代はスペンサーや高井といった名選手の番号だったが、オリッになってからは、ポジションに関係なく「ちょい期待された選手がちょいつける番号」であり、その脈絡ない選手の中に名選手はきっぱり見当たらない。異色なのは、佐竹か。ドラ4で入団以来ずうっとこの番号を守り、分配ドラフトで楽天に行ってもこの番号のまま現役を終えた。小川と同じく、生涯同じ背番号なのだ。佐竹学。どこと言って特徴のない選手ながら、どの監督にもそれなりに使われ、穏やかな顔ながらときには激しくプレイする態度は尊敬を集めた。指導者としても、順調にキャリアを積んでいる。

「26」
伊藤隆偉[投](88-99)、岩下修一[投](00-05)、グラボースキー[内](06)、加藤康介[投](07-08)、伊原正樹[投](09-11)、竹原直隆[外](12-13)、東名大貴[投](14-)

投手でも、野手でもの「26」。あるいはロッテでは、ファンの番号だとか。ふうん、としか言いようがない。オリッにおいて26は、全くピンとこない番号である。これといった選手が、マジいない。でも伊藤という投手はけっこう長いことこの番号を背負っているではないか。顔を思い出すのに随分苦労したが、ぼんやりとそのスリムな体を思い出した。チーム発足時の入団で、以来11年間オリックスに在籍。先発・中継ぎ・抑えなどで通算30勝。チーム全盛期の95-96年にそれなりの活躍をした伊藤を、代表選手に推すしかない。いたかなあ? いたんだよね、伊藤。現在は蒲郡市西浦温泉観光協会の事務局長とか。地味。

「27」
中嶋聡[捕](89-97)、マーク[投](98)、小倉恒[投](99-04)、日高剛[捕](05-12)、八木智哉[投](13-14)、バリントン[投](15)、青山大紀[投](16-17)、アルバース[投](18-)

捕手番号の「27」。オリッも名捕手・中嶋を輩出している。んが。オリッてば、相変わらず背番号に無頓着で、中嶋以降はほぼ投手に与えちゃってる。「すまなさそうに」投げていたオグちゃん(小倉)のひょろっとした背中に27番が妙に似合っていた印象もある。んが。もちろん代表選手は「最後の阪急勇者」中嶋である。とにかく強肩。やたら強肩。しかも強打に加えて俊足の捕手として、90年台前半は圧倒的人気を誇った。前向きでやんちゃなリーダーシップ、山田や佐藤、今井といったブレーブス名投手に鍛えられたリードで厳しい競争をくぐり抜け、通算29年の現役生活は誠に立派っぱ。「抑えの捕手」というジャンルを生み出したのも、彼である。

「28」
星野伸之[投](87-99)、嘉勢敏弘[投](01-04)、ガルシア[外](05-06)、小松聖[投](07-16)、塚原頌平[投](17-)

「28」は左投手イメージだが(現役選手も約半数が左投手)、それはまず阪神時代の江夏の影響が大きい。そして江夏と並んで「28は左投手」というイメージを決定付けた選手こそが、「星の王子さま」星野である。「中嶋に素手で取られる」ストレート、ベースに届かないスローカーブとフォークの3球種だけで打者を手玉に取り、堂々の11年連続2桁勝利。汗を感じさせないクールなエース像は、星野から始まったのだ。うーん、トレンディ(エース)。要はボールの回転とコントロール、なのだろ。ブルペン捕手の重鎮・別府さんにお話を伺ったとき、「ミットが気持ち良く鳴る」投手の代表として、いまだに星野の名前を挙げていたのが印象的であった。NHK「球辞苑」出演時に腰をいわすなど、最近はお体の調子が「ボロボロ」なのが心配。王子さまだからなあ。

「29」
高嶋徹[捕](89-94)、渡部高史[投](95-97)、五十嵐章人[内](98-00)、ヤーナル[投](01-02)、マック鈴木[投](03-05)、セラフィニ[投](06-07)、小林賢司[投](08-11)、井川慶[投](12-15)、ボグセビック[外](16)、ウエスト[投](17)、田島大樹[投](18-)

村田兆治や鈴木孝政など、剛腕選手のイメージが強い「29」。が、オリッではこの番号に「なんの歴史もない」様相である。いろんな選手が~ちょこちょこと~。なんとなく近年は助っ人あるいは日本球界復帰選手用の番号という趣きも。個人的には、大好きなマック鈴木の29が一番しっくりくるとはいえ、オリッではほとんど二軍の練習をサボって須磨海岸で遊んでいた選手なので(本人談)、さすがに代表選手に推す勇気は私にはない。仕方がないので、まだ「真っ白」のドラ1田島くんに責任を押し付けてこの番号の代表選手になってもらおう。左の29、ぜんぜん「あり」である。

オリックスの20~29、まあこんなかんじです。こんなもんです。レジェンドは、いた。27の中嶋と28の星野である。それなら、その番号には系譜を持たせて欲しいと思うのが、背番号好きファン心理なのだが、きっぱりそういうことは考えられていないようである。27は捕手、28は左投手に与えろよ、と思っても、そのときそのときの選手の希望とか事情にあっさり合わせちゃう。

誰かチームに大局的に背番号のことを考えている人はいないのか?
たぶん、いないのである。


<過去コラム一挙掲載!>
オリックス、元メジャーリーガー、女子野球…ベースボール遊民・南郁夫の野球コラム集。

 

南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」

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