南 郁夫の野球観察日記(39) 兵庫ディオーネ みなみ選手にインタビュー 「ホームランを打つためにプロ野球選手になった!」

2017年10月23日(文/南 郁夫、写真/Ysutomo)

今シーズン、日本女子プロ野球リーグにすごい「新星」が現れた。育成チームのレイアから昇格するやいなや、パワフルなバッティングで兵庫ディオーネのリーグ連覇に貢献した、みなみ選手#28である。開幕時に碇監督にお話をうかがったときも「有望新人」として名指しされていた、みなみ選手。彼女の何がすごいって、常識破りの長打力と、「美人すぎる」と評判のビジュアル。バットをまっすぐ構える立ち姿の美しさとその打球がフェンスを越えていく光景は、まさに新次元の風景なのである。

そんな、女子球界話題のみなみ選手へのインタビューを敢行するべく、10月21日ほっともっとフィールドに出動!あいにくの荒天で、開催予定だった公式戦は残念ながら中止となってしまったが、みなみ選手は室内練習場で取材に応じてくれた。

■みなみ(高塚南海)#28 兵庫ディオーネ 右右 外野手
1996生 172?@滋賀県出身
京都両洋高校(女子硬式)~レイア(2015,2016)~兵庫ディオーネ(2017)
<今シーズン成績(10月14日時点)>
ホームラン:3本(リーグ2位) 打率:.336(10位) 打点:24点(5位)

--今シーズン、すでに3本のホームラン。パワフルなフェンス越えの打球に驚いています。
「抜かされちゃったんですけど(埼玉アストライヤの岩谷選手:4本) ホームランを打つことを目標にプロに入ったので、うれしいですね」

--トップリーグでの最初のシーズンにして素晴らしい成績ですが、どんな印象をお持ちでしょうか?
「思っている以上に打てて、びっくりしているというか…でも、上には上がいるので、まだまだだなあと思います。まわりの人はもっと考えが深いですし」

--深い、というと?
「最初は狙い球も決めずにただ来た球を打っていたんですが、後半になってくると研究されて、だんだん打率が落ちて。トップリーグの選手たちの野球に対する姿勢を見ていると、
自分はまだまだ全然いたらないなあ、と思いますね」

--チームオーダー的にホームランは狙っていい感じですか?
「いえ。そこは勝つことが大事なので(笑)ケースに応じてバッティングは変えています。
ホームランが一番いいですけど(笑)勝利を優先しています」

--打点も結構上げて、チャンスに強いイメージがありますね。
「ランナーがいるときは返せてるのかな、と。野球って「流れ」のスポーツじゃないですか。
クリーンアップにはいい打者がおられますので、私は7番8番で楽に打てていると思います」

--右中間に力強い打球も飛びますね。
「タイミング、変化球に対するポイントを意識しています。右方向に強く打てれば、引っ張ることも簡単になりますから。調子がいいときは右に打てますけど、悪いときは引っ掛けちゃう… そこは課題にしていますね」

--得意なコースは?
「遠心力が効くので低めが得意、と自分では思っていたんですが。試合で実際にホームランが出るのは、高めですね(笑)」

--力強いバッティングフォームの源はなんですか?
「レイアのときは1年を通して体重の変動が激しかったんですが、ディオーネで淡路島に来て、ご飯が美味しくて量もすごくて(笑)シーズン中に体重が落ちなかったのが、良かったのかなと思います。落ちると、力が出ないし踏ん張りが利かなかったりしますので。体重管理ができているのが、いちばん大きいですね」

--レイアではずいぶんバットを振り込んだと聞きました。
「最初の2年で基礎ができたのが大きいですね。高卒ですぐトップチームに来ていたら、つぶれていたなと(笑)。大切なレイアの2年間でした」

--トップチームで1年通して戦って感じたことは?
「試合数も多いですし、ファンの皆さんの応援の規模も違います。期待されている分、がんばらねばと思う気持ちが大きくなりましたね」

--ビジュアルも話題になっていますが、どうとらえていますか?
「ビジュアルのことを言われるのは、うれしいんですけど…自分は野球しに来てるのになあ(笑)という思いもありました。でも、それがきっかけで女子プロ野球を見てくれて、案外パワフルだなあとか思ってくれたらいいな、と今は思います」

--プロ野球選手として、どこをアピールしたいですか
「ホームランは簡単に打てるわけではないので、そこは売りにしていきたいです。ホームランで女子野球の魅力を伝えていきたいんです」

--野球を始めたきっかけはなんですか?

「兄と父が野球していたので、その流れで少年野球チームに。でも、ハマるつもりはなかったんですよ(笑) 小さい頃はすごくシャイだったので、練習のとき母が帰っちゃうと不安で、泣いてました(笑)」

--女子ということで、苦労はありましたか?
「どうしても、女の子には指導者も甘くなりますし、それを「ひいき」していると男の子に取られますしね。小学生で身長が160?ェあって男の子より技術も上だし(笑)
キャッチボールのときに誰も相手をしてくれなくて、一人余っちゃって…とか辛い思いをしましたね」

--男子に混じって野球をするのは大変だったんですね。
「でも、滋賀県の女子の選抜チームに選ばれて、大会で優勝したことがあるんですよ。
今でもチームメイトたちに会うくらい仲良しなんですが、まだ野球をしているのは、私だけです(笑)」

--京都両洋高校で本格的に女子野球でプレーするわけですね。
「女子野球部の一期生でした。みんな、男の子の中で野球をしてきたので、同じような思いを共感できるチームメイトでしたね」

--楽しかったですか?
「はい。女子野球は楽しいなあ、と思えました。それまでは割り切って、野球だけを楽しんでたんですが、高校では野球以外の時間がほんとうに楽しくて(笑)」

--卒業後、プロに入ろうと思ったきっかけは?
「わかさスタジアムが近いので、女子プロ野球を見に行ったりは、していたんです。
で高校時代は4番を打ってはいましたが、それほど結果が出ていたわけではなかったので…」

--迷いがあった?
「野球を続けるかやめるかで、悩んで。大学も見に行ったりしました。でも監督と両親が野球を続けてほしいと言ってくれて、女子プロ野球のトライアウトを受けに行ったんです」

--そして見事合格です。プロに入ったときはどう感じましたか?
「周りを見て、私のレベルで活躍できるのかな?練習ですら、付いているのかな?と不安だらけでした。切羽詰まって、悩んだ時期もありましたね」

--レイアで2年頑張って、今年はトップチームで大活躍。今後の目標はありますか?
「ホームランを「5本」打つこと!です。負けず嫌いなんで(笑)
(岩谷選手に)4本打たれて抜かれたときは、試合の運営でちょうど球場で綿菓子を作っていたんですが(笑)、スマホで見ててショックでしたねー。追いつきたいです!」

--スター性抜群だし、今後も野球人生は前途洋々ですよね?
「そうですか?(笑)とにかく、先を考えずに「今」しかないと思ってプレーしてます。
今やれることをやって、やめるときが来ればやめるのかなと。 ファンも増えてきましたので、これからだなと思っています」

--最後に。野球をしていて、一番楽しいときは?
「自分が活躍した上で(笑)、試合に勝ったとき!です」

--ありがとうございました。残りの試合もがんばってください!

体育座りで(笑)丁寧に質問に答えてくださった、みなみ選手。「ホームランを打つためにプロ野球選手になった!」と迷いなく言い切るその表情の、なんと凛々しいことよ。受け答えといい、にじみ出るオーラといい、間違いなく次代の女子プロ野球を担う逸材であることを予感させてくれる、インタビューであった。パワフルな打撃とはにかむような笑顔のギャップがまた、魅力である。

最後に美しい素振りまで披露していただき、感激であった。ありがとうございました。

読者の皆さんも、写真で満足している場合ではない!みなみ選手の魅力の本質はそのバッティングにあるので、未見の野球ファンは動画サイトなどでチェックしていただきたい。まだ今年は女王決定戦や女子野球ジャパンカップなど、みなみ選手を実際に見るチャンスも残っているので、日本女子プロ野球リーグのHPでチェックして球場に足を運んでほしい。野球観察者の私も(名前が)南つながりなので? 親身に応援していきたいと思います。

 


<過去コラム一挙掲載!>
オリックス、元メジャーリーガー、女子野球…ベースボール遊民・南郁夫の野球コラム集。

 

南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
著書「野球観察日記 スタジアムの二階席から」好評発売中!
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