南 郁夫の野球観察日記(223)ラオウがラオウになる日まで

2026年2月11日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

昨年は3年ぶりに規定打席に達し、打率.259、16本塁打、53打点と奮闘した、「我らが」ラオウこと杉本裕太郎。越年した契約更改こそ「捺印昇天ポーズ」とはいかなかったようだが、35歳を迎える大ベテランとなった今年も元気にキャンプインし、いきなりシュンペータにボールをぶつけられるなど、彼らしい話題を提供してくれている。

遅咲きの豪快な長距離砲、生え抜き野手として絶大な人気を誇る、ラオウ。そんなラオウが昨年自伝を出版したことは知ってはいたが、表紙だけでわかった気になって読んでいなかった(笑)。それではファンとして申し訳ない、と今さら読んでみた感想を、今回はお伝えしよう。

半日で読了(笑)。まあ、うん。野球選手の本である。読みやすい。ラオウは聞かれたことに答えただけだろうが、彼が目の前で「ラオご飯」食べながらしゃべっているような、そんな雰囲気の本に仕上がっていて、好感が持てる。第8章「仲間が語る素顔のラオウ」はこの本のオチのようになっていて、爆笑必読。巧妙な編集が光る一冊なのである。

思えば、私がドラ10で入団したラオウを初めて見たのが、K!SPO黎明期の2016年5月の田口壮さんインタビュー時@神戸サブ球場である。練習後に行われた長距離走で優勝したルーキーのラオウを見て「でかいのに足速いやん」が第一印象。

早くも翌月の6月14日に一軍昇格デビューを果たすも、甲子園で能見に「子ども扱い」されて3タコ2三振で、即二軍戻り。私はその姿も現地観察。この本でもその日のことは詳細に語られているが、前日に「ユニバ」に遊びに行ったという衝撃?の事実を白状していて、失笑。(7年後の甲子園初ホームランも私は現地観察)

その後の戦力外通告に脅える年月を経て、中嶋監督とともに一軍に上がって大ブレイク~V3~そして今というラオウの語りは、全オリックス・ファンが共鳴できるストーリーであり、読みながら「そうやったなあ、そうやったなあ」とうなづくことしきり。ラオウの言葉でここ数年のオリックスを追体験できる、そんな本になっているのだ。

非凡な選手だけど、後輩の吉田正尚みたいに超一流ではない。強そうに見えて、弱い。弱そうに見えて、強い。怖そうに見えて、優しい。大ベテランなのに、後輩や周囲の評価は「JK」あるいは「低学年の小学生」。そして、仲間が大好きで「永遠の修学旅行」気分な、かまってちゃん。

そんなラオウの人間性が自然体で伝わってほっこりする、実に楽しい読後感だ。が、ひとつ気になる記述が。

彼のブレイクのきっかけとなったのが「フルスイングしなくても打球が飛ぶ」という気付きであり、軽いバットに変えるきっかけになったのが、2019年オフに一緒に自主トレをしていた広島の羽月隆太郎選手のバットを借りたこと… だそう。以上です。

さて。現役選手なのに自伝を出して「終わったかんじ?」になっている場合ではないのは、もちろんである。この本の冒頭で本人は「もっともっと打ちたい」「もう一度打撃タイトルを」と宣言しており、まだまだ「本物のラオウ」になっていないことは本人も自覚している。

やればもっとできる子、の35歳。今年はぜひ2021年を超える33本以上のホームランを放り込んで、タイトルを取ってほしい。この本の中で双方が証言しているとおり、そうすればT-岡田さんとタメ口でしゃべれる本物のラオウになれるのだ!? ようわからん約束なうえに、とっくにタメでしゃべっていそうだが。

というわけで、この本を読んでラオウのことがより好きになった私である。なので、野球観察者の今年のオリックス期待選手は、昨年と同じく「ラオウ」ということで。
ラオ福でないのが、さびしいが。

 

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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」

 

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