南 郁夫の野球観察日記(173-1)2024シーズン公式戦初観察はとんでもない結末に!

2024年4月12日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

その瞬間。二塁ベース上で放り上げたヘルメットのびっくりするほどの高さが、紅林弘太郎自身の、そしてオリックス・バファローズの開幕以来の「もやもや」の大きさを表していた。今季初サヨナラ!今季初カード勝ち越し!そして今季初の大騒ぎである。長躯ホームインしてベース上で寝転がったまま拳を突き上げるラオウ、グラウンドになだれ込んで紅林を無茶苦茶にするオリッナイン!総立ちで喜ぶファン!ようやくチームに勢いが戻った瞬間を、目撃してきた。

開幕以来のバッティング大不振。でもこの日ちょっとだけ雰囲気の出ていた、紅林。1-1の9回裏、四球のラオウを一塁に置いて打席に入るときの登場曲が「騒々しい方」(笑)じゃなくて「アラレちゃん」だったことで、私は「その瞬間」を予感した。昨年の神戸開幕カードの同じ楽天戦、サヨナラホームランを打ったときの登場曲も「アラレちゃん」だったのでね。今年初めての「紅林のまともな当たり」は右中間を深々と破ってサヨナラツーベースとなったのである。

昨年も(笑)序盤のスランプで二軍に落とされかけてたとき、宗が勝手に選んだ曲が「Dr.スランプ・アラレちゃん」だったはず。この日も試合前に「二軍行くか?」と監督に言われていたらしい紅林にとって、まったく同じ状況での「アラレちゃん」のメロディーに乗ったサヨナラ弾。この憎めない22歳は、逆境に「んちゃっ」と強いのだ。考えてみれば、レギュラーになって以来優勝しか知らない「V3戦士」そのものの紅林。彼が始動すれば、もうチームは大丈夫。今年もどんな成長を見せるやらである。

というわけで。華々しいソフトバンクとの開幕カードはパスして、そろそろ落ち着いて「いいかんじ」のお客さんの入りであろう、4月11日(木)楽天戦@京セラを初観察日に選ぶところが観察者の渋いとこ。球場に着いた瞬間のこのショットが、この日の結末を予言していたな。

3塁側上段席で楽天応援団の「クセになる」チャンステーマを楽しみながら、のんびりと今季初公式戦観察は楽しかった。もどかしい展開であろうとも。やはり、野球はいい。シーズンは始まったばかりだし、スタンドに緊迫感はない。二階席のお客さんは「どっちも頑張れ」て雰囲気で、そういうの好ましい。こんなこと言ったらあれだけど、クライマックスとか日本シリーズだけが野球じゃないのでねえ。

で。ドラマは期待していないときに起こるもの。平和に眺めてた試合が思わぬドラマチックな結末になって、それはそれで大満足である。もちろん、延長12回引き分けだって「とほほ」と楽しめたけど。またそんな、長いシーズンが始まるのだ。まだ神戸開幕してないけど。今年のオリッはどうなりますことやら、の観察日記をよろしくお願いします。

というわけで、次ページは専属カメラマンによるこの日の写真集をどぞっ。

 

 

南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
著書「野球観察日記 スタジアムの二階席から」好評発売中!
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