南 郁夫の野球観察日記(108) 野球観察クラシックス「ハムが好き」

2022年4月12日 (文/南 郁夫)

完全試合のショックで?なわけないが、オリックスは「例の理由」で楽天3連戦がお休み。今年は…こういうかんじなんすね。まあそれはしょうがないとして、試合のない日のお慰みにクラシックスをお届けしたい。個人ブログ「三者凡退日記」をお読みの方はご存知かと思うが、今年のハムズ(日本ハム・ファイターズを日本で私だけがこう呼びます)に私は「かなり」肩入れしているのだが、そういや昔からハムズ好きだったなあ、という12年前の観戦コラムを、どぞ。懐かしい名前がいろいろと。ああ早くグリーンスタジアムに行きたい!

「ハムが好き」2010年4月20日

例によってド平日の開門時間に球場に「駆けつける」ことが可能、というノンストレスな人生がなし得る、50直前にしてこのイヤミなほどの健康体。試合開始直前までちょぼちょぼ小雨ちう絶好のコンディションで「がら空き」のグリーンスタジアムに行ってきた。

今期初ナイター。相手は墓石のようなビジターユニが今期を象徴する、ハムズである。

試合前、暑くもなく寒くもなく名もなく貧しく美しくないちょうどええ環境のもと、平和ラッパに行われる守備練習。この愛おしい、ひととき。ふかふかな緑のじゅうたんの上でクリーニング仕立てのぱりっとしたユニフォームの野球選手たちが繰り広げる、厳粛な儀式。

すっかり手順を覚えちゃってる。

2階席から見てるとボールの残像が不思議な幾何学模様を作り出し、魔法の「あやとり」を見ているかのよな、息をもつかせぬ内野手たちの連携。それ自体がひとつの有機体のようである。「あら美しいわ。きれいだわ。」とパシン、パシンという心地よいグラブ音を耳にしながらこの幸福な時間に、失神(野球変態が!)。それにしても、赤田の肩って正直、壊れてますな。晩年の張本か今の金本か、ちうくらいに。

さて。この日はファンクラブ特典で坂口のピンバッチをゲット。いったいこれをもらって嬉しいのは日本の人口の1%の何万分の一なのか?さ、坂口…私好みの脱力キャラ。チーム広報誌のインタビューで「昨年打率2位で年棒上がって、何か変わりましたか?」との問いに「ガリガリくんがハーゲンダッツに変わりました」とか「尊敬する選手は?」に「新庄」とか「芸能人で誰に似てると言われますか?」に「般若の面」とか(似てるけど、般若は芸能人じゃないし。質問よう聞け)。

<序盤>

例によって2階ヘブンズシートで観戦。

ハムズ先発のペーペーの新人・増井#43(駒大-東芝)の凡庸なチェンジアップにあえなくてこずる、どいつもこいつも驚くほど低打率のオリッ打線(カブレラずる休み)。再三のチャンスをお家芸の決定打不足でつぶすもなんとか、地味~に B2-0F とリード。

んが。絶好の追加点のチャンスを谷元#48(中部大-バイタルネット??)ちうぺーぺー中継ぎに簡単に封じられてる間に。例によって予兆なく充電切れる中古の携帯のようなオリッ先発・岸田がハムズに唐突に連打されたうえ、糸井#26(宮津高-近代)に逆転ホームランを被弾。あぁ、ライトスタンド中段に飛び込む美しい放物線!糸井君はけっこうすごい選手になると断言する。

スコアは、B2-3F

<中盤>

三塁側ハムズブルペン付近に移動。

武田、建山ちうあたりのハムズ中継ぎが次々と朝のサラリーマンみたいにブルペンからマウンドに時差出勤していくのを、じっと見守る。ブルペンが見える球場ってええな。試合に参加しているよなしてないよな、ブルペンにいる選手らのわりかしのんびりした雰囲気が、スキ。緊張の面持ちは、出番直前の投手のみ。彼らの肩慣らしの最後の数球がブルペン捕手のミットを「びいいいいいん」ちうて鳴らしてねえ。近くで見てると怖いくらいやねえ。

ブルペンからマウンドに向かう投手をみんなで拍手で送り出すハムズブルペン。なんか、いい雰囲気。「まいど岩本」がいたころのハムズブルペンはもっとおもろかったけど(予想通り…タレントとしてええ味出しとる)。

で。8回が建山で、あれ?9回は?と思ってたらなんだか「うすぼんやり」した知らん外人がほんの数球だけ、肩慣らし。ウルフ#30(ブルージェイズ)ちう新外人。見た目はウルフちうよりシュレックに出てくるロバやけど。こいつが今年の抑えハム?

彼がこの試合のポイントとなる。

<終盤>

9回。

息子(大学生)から「球場行ってるやろ!くら」と電話があり、彼に頼まれた選手の下敷(小学低学年の土産か!)を買いにショップに行ったついでに、ネット裏あたりでの立ち見観戦に移行。ネット裏は昔の野球中継アングルが懐かしいし、さすが打球音とかに迫力ありますな。

9回表を小松が例の悲壮な顔で抑え、依然スコアは、B2-3F。そして、9回裏のマウンドに例のウルフがんぐウルフが上がる。で。いきなり。「かーん!」とセンター右に痛烈なヒットを打った後藤が、例によって「無闇な思い切りの良さ」でほとんど暴走とも思われる走塁で二塁へ滑り込み、セーフ!すると。ハムズのペーペーのキャッチャー大野#28(東洋大)があわてふためいてマウンドに走り、ベンチのほうを向いて右手を「ぱくぱく」させる仕草で「通訳」を要求!おそらくサインとまったく違う球が来たのであろう。

んが。ウルフはベンチに向かってハエを振り払うかのごとく右手を激しく振り、通訳を追い返して大野と直接、一言、二言。ウルフは「わかった!ちうねんガッデム」とばかりにすぐにきびすを返してマウンドにすたすた戻ろうとするも。大野は「たったいま彼女に振られた男」みたいな情けない顔で呆然と立ち尽くす。会話が、できてませんがな。英語わかってませんがな。

すると大野、再度ベンチに向かって右手を「ぱくぱく」。気の毒に、ハムズ投手コーチと通訳はそのたんびに出たり入ったりぐるぐる回ったりで、結局マウンド上に全員が押しかけるちう回り舞台のような大騒ぎ!で。ウルフ、明らかに「いらいら」の絶頂!このときばかりは「あおーん!」と吼えるウルフに見えたが。私はこんとき「しめた!」と思うたね。大野(東洋大)の語学力のなさに喝采(いつものように幕が開き♪)を、送ったね。

その後のウルフは明らかに「LOST自分」で。自称160キロの「棒球」を連発してラロッカ、北川にかっきんかっきん打ち返され、あれよあれよアレフよ、ちう間にノーアウトのまんま…途中出場の赤田がサヨナラヒット~の結末である。まさに夢のよな9回裏、ほんの数分の出来事。

B4X-3F

とはいえ。最後だけ思いのほか派手な結末だが、試合全体を通して漂っていたのは、数年前のこのカードみたいな「静かで地味~」な雰囲気だったね。スキだね。甲子園とかと違って、ほんまに試合中かこれ?みたいな「静寂」が、けっこうある。合間合間に。そんなとき「がんばれよ~、嶋村」とか、張り上げるでもない普通の調子で声がかかっても、それがはっきり球場全体に響き渡って…職場で上司が部下にハッパかけてるみたいな地味な日常感が、笑える。

ここ最近、ハムズが強くて遠くに行っちゃった気がしてたけど、今年はなんか、お友達ってかんじだなあ。やっと遊んでくれるんだなあ、大島時代のハムズみたいになあ。関係ないけど薬くさいボンレスハム、スキ。まあでもオリッと違って若くてええ選手を戦略的に育ててるし、それを抜擢するし。ええチームやねんけどね、ハムズは。打線に外人がいないのも(スレッジ…)意図的なものなら、好ましいね。

さて。この日スタメンだった、我らがSO田口。なんかメジャー行く前は松尾伴内キャラだったのに、帰ってきたらすべての仕草がチャンピオンリングな自信に満ちててえらいかっこええなあ、と感心しきりだったのだが…。彼の打席時に指定席あたりから聞こえてきた

「たぐちさあーーん。がんばってえええーー」

ちう妙齢?の女性の裏返り声に、聞き覚えがある!あれは、ブルーウェーブ時代から田口の打席のたんびに聞こえてた声やんか。ファンの間では有名な!あの人も、帰ってきたんやねえ。しかし!なんとこの試合で田口、肉離れ。全治1カ月。

今年のオリッの行く末も、ぶちってか?

とほほん 。以上。

 


<過去コラム一挙掲載!>
オリックス、元メジャーリーガー、女子野球…ベースボール遊民・南郁夫の野球コラム集。

 

南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
著書「野球観察日記 スタジアムの二階席から」好評発売中!
https://kobe-kspo.com/kspo/sp145/

 

 

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