スポーツイラストレーター T.ANDOH の「OUTSIDER’s ReCALL」(173)神戸の街をスポーツで彩ってきた!スポルテリアのあゆみとアリーナのある街

2026年1月21日(イラスト・写真・文/T.ANDOH)

こんにちは!スポーツイラストレーターのT.ANDOHです。
前回に続き、神戸市中央区にあるスポーツバー「スポルテリア」の安永英治オーナーのお話をしたいと思います。
震災体験とスポーツに助けられた人生が、お店開業にも大きな影響を与えたと語る安永さん。
2010年に三宮で開店したお店は、当初はサッカー放映を中心に展開し、ヴィッセル神戸のサポーターが集まるお店として定着する一方、女子サッカーINAC神戸の選手が立ち寄るお店として、その名は少しずつ広まっていきました。
澤穂希さんとも交流があったんですよ!

むかし僕もたまたまお店を訪れた際、扉を入る時に入れ違いに出ていかれる女性客に扉を譲ったことがあるんです。
安永さんが
「いまの、京川舞ですよ!」(←元INAC神戸で女子日本代表の選手)
えぇ~!それ早く言ってよぉ(悔)
そんなこともありましたね。


※神戸ファッションマートで開催された兵庫ストークスのホームゲーム

そんなオープン当初と重なるように、神戸ではプロバスケットボールチームの立ち上げが進み、2011年春には神戸ストークスの前身、兵庫ストークスが立ち上がります。
当時の神戸には、「プロバスケチームができるらしい」という噂は飛び交っていました。
でも実際にどんなチームになるのか、どんなエンターテインメントを目指すのかは、まだ誰にも見えていなかったと思います。

そんなタイミングで、たまたまストークスの営業スタッフがスポルテリアに営業でやってきます。
「日本のバスケって、もっとレベルもエンタメも成長できると思うんですよ」
安永さんは熱く語ったそうです。
NBA中継をずっと見てきた経験、そしてクラブのマネージャーをしていた実績が安永さんの中で重なりました。

すぐさまチームの首脳陣とも意気投合。
また、偶然ながらストークスの初代ヘッドコーチに就任したBTテーブス氏は安永さんとストリートバスケで交流があった人物。
安永さんはいきなり、お店のオーナーでありながら、兵庫ストークスのアリーナDJとして抜擢されます。

音楽とスポーツが一体化した空間の高揚感、会場全体のリズムを“音”でコントロールする面白さ。
単なるBGMではなく、試合の展開に合わせて空気を演出する発想で、ホームゲームの会場を彩るべく奮闘します。

当時はBリーグ発足前の実業団リーグの時代。
いまのように注目もされていなかった中で、少ない機材と十分とは言えない環境の中でも工夫しました。
体育館の音響に直接つなぎ、ターンテーブルと、サンプラーと呼ばれる機材を持ち込んで、現場ごとに音の環境をイチから組み立てていく。
体育館によって反響も癖もまったく違う。
上郡で開催された試合会場では、体育館の放送室からオペレーションしたこともあったそうです。

ただ音楽を流し続けるDJではありません。
試合の流れを読み、ここぞという場面で一気に空気を引き上げる。
ビッグプレーが出た瞬間にサンバが流れ、会場のテンションが一段上がる。
ストークスブースターなら定番のあの瞬間も、まさしくあの高揚感がアリーナDJの腕の見せ所。
ブースターの耳に、試合のリズムを注ぎ込む感覚です。

安永さんは現在もストークスのホーム会場の一線で試合会場を盛り上げます。
ストークスは、創設から今日に至るまでの歩みは、決して平坦な道のりではありませんでした。
運営会社も社長も何人も変わり、本拠地も西宮と神戸を行き来しました。
リーグの仕組みも大きく揺れ動いた。その中で、立ち上げ当初から関わっているのは、選手では谷直樹選手、スタッフでは安永さんだけ。

チームの歴史、空気、積み重ねてきた“らしさ”を身体で理解している存在だからこそ、変化の中でも軸を見失わずにいられると思う。
そして安永さんがストークスの仕事に関わるようになり、スポルテリアも大きく変化していきました。

安永さん自身も「ストークスブースター」の一員と語ります。
ヴィッセル神戸と同様、ストークスのアウェイ試合日にはお店にブースターが集まるようになり、またオフ会を企画して選手をゲストに呼んだイベントも度々開催されるようになります。
「スポーツ好きが自然に集まる居間」のような空気感。
これは、意図してつくれるものではなく、時間をかけて育つもの。
ストークスというチームとともに、お店にも多くの人が行き交い、どんどんお店の味わいが深くなっていったと、僕自身も実感しています。


※安永さん(左から三人目)と妻千栄子さん(左端)

もちろん、人生はずっと順調に進むわけではありません。
お店を共に切り盛りする妻の千栄子さんが営業中にくも膜下出血で倒れられたこと。
幸いにもお店で倒れたことで発見が早く一命は取り留めましたが、安永さんにとっては大きな転機となりました。
さらにコロナ禍が重なり、「10年という節目で店を閉める」という選択肢も現実的に考えたそうです。

それでも、あの避難所で見た相撲中継の記憶が。
ストークスの選手、ブースターのみんなの顔が、背中を押しました。
人が集まり、同じ瞬間に笑い、感動を共有できる場所。
それを簡単に手放していいのか。

自宅の近くで、妻の養生をしながら続けられる場所を探し、現在の神戸駅前へと移転します。
千栄子さんは現在も病気療養をしながらですが、お店にも顔を出されて、笑顔を見せてくれていますよ。
神戸駅前という立地は、結果的に街の流れとも噛み合いました。
ハーバーランドを中心とした突堤エリアの再開発、そしてG-LIONアリーナ開業と、街の気運がベイエリアに高まっていっています。

そしてお店は15周年。
スポルテリアは、G-LIONアリーナに「SPORTEREA BAR」という店舗を持つことになりました。
G-LIONアリーナの上段スタンドの中央。
大型ビジョンを正面に見据え、カウンターの前にはデッキのような空間が広がる。
バーでお酒を飲みながらアリーナを見下ろす人もいれば、ドリンクを手に席へ戻る人もいる。
試合前から試合後まで、人の流れが自然に生まれる場所になっています。

「スポーツバーって、普通は会場の外にあるもんでしょ。でも、ここは“競技空間の中のスポーツバー”なんですよ」
安永さんの言葉が、妙に腑に落ちました。

イベント開催日のみの営業ではありますが、スポーツを観ながら、その熱のままスポーツバーのようにお酒を楽しめる体験は、これまでのアリーナにはなかったものです。

アリーナの誕生は、街にも大きな変化をもたらしています。
神戸駅、ハーバーランド、アリーナ、そして三宮駅をつなぐシャトルバスが走り、人の回遊が生まれています。
神戸ストークスの観客動員も、かつての5,000人規模から、いまや1万人規模へ。
B2リーグでもトップクラスの動員を誇る存在になりました。


※安永さんと筆者、西宮ストークスの公式ソングを歌ったサーカス・フォーカスの二人と。

安永さんは、スポーツ選手のパフォーマンスに対して、常に「リスペクト」の念を持っています。
人智を超えた動き、努力の積み重ね、そこに人生を預ける覚悟。
その姿に、観る側は自分の思いや夢を重ねている。
「普段、生活を頑張ってる人たちは、自分の分身をスポーツに預けてるんやと思うんです。自分にはできへんことを、選手がやってくれる」
その感動を、誰かと共有できることが、さらに喜びを大きくする。
そんな大きな力が動くからこそ、これからもスポーツに恩返しをしていきたい。
「神戸というスポーツが豊かな街で、もっと多くの人がスポーツに出会う“きっかけ”をつくること。」
安永さんは語ります。

震災から31年。
瓦礫の街で見たあの相撲中継の歓声は、いま、アリーナという大きな空間に形を変えて響いています。
スポルテリアという店は、その音を、これからも街と人へ手渡していく場所なのだと思います。

 

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スポーツイラストレーターT.ANDOH

おもにスポーツを題材にしたイラストやデザインの創作で、スポーツ界の活性に寄与した活動を展開中。
プロ野球やプロバスケBリーグのチーム、選手にイラスト提供。
プロ野球選手には、伏見寅威選手(北海道日本ハムファイターズ)、中川圭太選手(オリックス・バファローズ)にロゴデザイン、イラスト提供中。
名古屋在住にも関わらず20年来のオリックスファンであり、その由来とイラストレーターの起源は神戸にある…!?

 

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