スポーツイラストレーター T.ANDOH の「OUTSIDER’s ReCALL」(172)神戸の街をスポーツで彩ってきた!震災とスポルテリアのあゆみ

2026年1月16日(イラスト・写真・文/T.ANDOH)

こんにちは!スポーツイラストレーターのT.ANDOHです。
今回は、神戸市中央区にあるスポーツバー「スポルテリア」の安永英治オーナーのお話をしたいと思います。
神戸ストークスをはじめ神戸を拠点とするスポーツチームや選手にも大きく関わり、神戸のスポーツシーンを盛り上げてきたお店ですが、スポーツバーを志したきっかけには、阪神・淡路大震災の被災経験がありました。
今年で31年を迎える1.17に寄せて、安永さんの体験や神戸の街、スポーツへの想いをぜひご覧ください。

神戸駅の西、徒歩3分ほどの雑居ビルの5階にあるスポルテリア。
エレベーターがないビルなので、お店への来店もエクササイズとなる健康的なお店なのですが、トアを開ければすっきりとした内装にたくさんのテーブルが並び、50人以上のイベントにも対応できる広い店内が広がっています。

このお店はK!SPO編集担当も常連客で、オリックスOBである西浦颯大さんとの観戦イベントマック鈴木さんがゲストのトークイベントを、K!SPOでも開催しました!
僕も兵庫ストークス(現神戸ストークス)を通じて10年以上のお付き合いがあり、神戸に訪れる際には必ずお邪魔しています。

スポーツが大好きで、現在でもシニアバスケではプレイヤーとしても活躍している安永さんが2010年に開店したお店。
当初は三宮にあったのですが、当時からヴィッセル神戸の試合放映や、神戸ストークスのファンが集まるお店として盛り上がる一方、「スポーツ」と「カフェテリア」を掛け合わせた名前のとおり、カフェを思わせるスタイリッシュなインテリアで、初見の人でも入りやすい店舗をつとめています。

昔は、「オミジャ」っていう甘酸っぱいお茶がメニューにあったんですよ。
体調によって味わいが変わるという韓国の薬膳茶で、僕は飲食の締めにはこれ飲むのが好きでしたね。
ぜひメニューに復活してほしい一品です(安永さん聞いてるかな?)

そんなオシャレでアットホームなお店なのですが、スポーツバーを開きたいと思ったのは、1995年の阪神・淡路大震災に被災したことに行き着きます。
安永英治さん、当時26歳。中央区の自宅マンションで被災しました。
部屋はめちゃくちゃになったものの、建物自体は倒壊を免れ、自分自身も無事だった。
ただ、周囲は全壊した建物も多く、
「基礎や建て付けの違いで、残る建物と壊れる建物があったりしたのが印象的でした」
それでも、見慣れた街並みや知り合いの家やらが、無惨な姿となって飛び込んできました。

 自衛隊もまだ十分に入れない、瓦礫に覆われた街の光景は、まさに地獄絵図。
「なによりライフラインが止まったことがきつかった」

寒い1月の空のもと、自宅マンションに戻れても生活はできない。
近所だった諏訪山小学校(現こうべ小学校)の避難所で寝泊まりをしながら「災害地泥棒」への警備などをして生活をしたそうです。
警備で街に出ると、わずかな物音にギクリとしたこともあったと言います。
瓦礫の下に、もしかしたら誰かが埋まっているかもしれない。
その緊張感が、神経をずっと張り詰めさせていた。
「避難所の空気も、決して明るいものではありませんでした」
寒さ、空気の重さ、ラジオから流れてくるのは後をたたない死者数の報道。
数字が増えるたびに、避難している人たちの表情も沈んでいく。

そんな中、数日が経ち、救援物資の情報が少しずつ被災者の希望となっていく。
そして情報手段がラジオだけでなく、テレビへと変わっていきました。

ある日、避難所に持ち込まれたテレビから、大相撲の中継が流れたそうです。
その瞬間、避難所の空気が変わった。
力士の取り組みに、どっと歓声が上がる。
人々が声を出して笑い、手を叩き、同じ画面に釘付けになる。
安永さんは、その様子を少し後ろから眺めていました。
「スポーツって、人をこんなふうに元気にするんやな」

僕はこの話を聞くたびに、胸の奥が少しざわつきます。
「スポーツの力」
なんて言葉はよく使われますが、極限状態の中で、人の心を一瞬で前向きにするという光景はなかなか見られることはないです。
しかし安永さんは、こうした限界の状況から、スポーツが人々の希望の光になる瞬間を、あの場所で体感していたんです。

震災後、「がんばろう神戸」という言葉とともに、神戸の街は少しずつ立ち上がっていきました。
イチロー選手が活躍するオリックス・ブルーウェーブが躍進し、被災者の力になりました。
「こんな時にスポーツをやっていていいのかな」
当時、選手たちの間にも、そんな迷いや葛藤があったと聞きます。
それでも、スポーツに夢中になって、熱くなって、笑い合える時間は、人の心を確実に前向きにしていった。

日常生活の中でも同じですよね。
仕事の悩みや、うまくいかないこと、しんどさ。
そういうものを一瞬忘れて、応援している選手の活躍を自分のことのように喜べる時間がある。それだけで、人はまた明日を頑張れる。

 安永さん自身も、スポーツが好きで、スポーツに育てられてきた人です。
「だからこそスポーツに何か恩返しをしたい」
「スポーツのために力になりたい」
という気持ちが、自然と湧き上がってきたそうです。


※開店当時の三宮の店舗

震災以降、安永さんは北野坂にあったクラブ「ベベル」で、広報や企画、パーティーDJなどを担当していました。
サッカーの日韓ワールドカップが神戸でも開催され、パブリックビューイングを仕掛けたり、飲食やアーティストマネジメントにも関わったり。
音楽とエンタメを組み合わせる現場を、実践的に学んでいきました。

「スポーツバーをやりたいんです」
そんな経験を踏まえ、「ベベル」の運営会社と店舗の拡張計画を話す中、そう提案した時、当時のオーナー浦上さんから返ってきたのは、意外にもシンプルな言葉でした。
「ほんなら、自分でやったらどうや」
背中を押されたといいます。
そして安永さんは時間をかけて準備を重ね、2010年6月、南アフリカで開催されたFIFAワールドカップに合わせてスポルテリアをオープンします。

震災が起こした「人の生きる糧」。
犠牲になった多くの方の分も背負えるわけではないが、“いま生きていること”をしっかりと噛み締め、街のため、人のために何かをしたい。
そして大好きなスポーツの楽しさを伝えることで、人を幸せにできれば、それはスポーツへの恩返しにもなるのではないか。
 その思いが、現在も安永さんを支えています。

オープンして間もなく、神戸では新しいプロバスケットボールチーム、兵庫ストークスの立ち上げが進んでいました。
営業に訪れたスタッフと、日本のバスケエンタメについて熱く語り合ったことが、思わぬ縁を生むことになります。

(次回につづく)

 

※イラスト・写真の転載・無断使用はご遠慮ください。使用をご希望の場合はK!SPO編集部までご連絡ください。


スポーツイラストレーターT.ANDOH

おもにスポーツを題材にしたイラストやデザインの創作で、スポーツ界の活性に寄与した活動を展開中。
プロ野球やプロバスケBリーグのチーム、選手にイラスト提供。
プロ野球選手には、伏見寅威選手(北海道日本ハムファイターズ)、中川圭太選手(オリックス・バファローズ)にロゴデザイン、イラスト提供中。
名古屋在住にも関わらず20年来のオリックスファンであり、その由来とイラストレーターの起源は神戸にある…!?

 

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