南 郁夫の野球観察日記(194)選手名鑑で遊ぼう2025 オリッ選手を数値で分析!
2025年2月19日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)
書店にずらり。プロ野球選手名鑑が並ぶ時季となった。今年もいろんな名鑑が山積みで、売れ残ったらどうなるの?と心配になる。去年の名鑑なんて誰も買わんけど、考えてみたら過去の名鑑の価値がなくなるわけでもない。たとえば私ならブルーウェーブ時代のは欲しい。持ってたはずなのに、捨てちゃった。名鑑って、賞味期限がほんの半年のようなそうでもないような、不思議な出版物ではある。
さて。昨年買った「Slugger」特別編集版(日本スポーツ企画出版社)が面白くてコラムにもしたので、今年も迷いなくそれを購入。さっそく両方の表紙を並べてみると…
野球に興味ない人が見れば「おなじやん」だろうが、もちろん顔写真と順番が微妙に変わっている。(たぶん)議論を尽くして「チームの顔」が選ばれているわけだが、2年連続で同じ選手だったチームは、ヤクルト(村上)、ソフトバンク(近藤)のみ。両者には誰も異論なしだろうが、問題はオリックスが2年連続FA選手なのと(涙)、巨人いきなり甲斐ってどうよ?とか。話題性てことか。
さて。この「セイバーメトリクス」名鑑を選んだからには、まずチェックすべきは巻頭の「WAR」上位ランキング。「WAR」とは、MLBではMVP投票にも重要視されている「勝利に貢献した総合指標」であり、ポジションに関係なく「最も値打ちのある選手」ランキングである。単なる個人成績の数値判定ではなく、チームを「勝たせる」選手の指標というところがミソ。
パ・リーグの2023年と2024年のランキングベスト10を並べると
2023年
1 近藤(ソ)2 山本由(オ)3 森(オ)4 浅村(楽)5 万波(日)
6 外崎(西)7 柳田(ソ)8 佐々木朗(ロ)9 宮城(オ)10 頓宮(オ)
2024年
1 近藤(ソ)2 栗原(ソ)3 宮城(オ)4 種市(ロ)5 万波(日)
6 佐々木朗(ロ) 7 山川(ソ)8 辰巳(楽)9 森(オ)10 伊藤(日)
2年連続「ダントツの数値」で1位の近藤健介が、すごすぎる。もうカールおじさんとは呼べない。オリックス目線で言えば宮城大弥は既定投球回数に届かず無冠だったが、昨年パ・リーグで一番「勝利に貢献する」投手だったということだし、森友哉も2年連続ベスト10入りてことで、オリッも投打の柱は健在ということだったが…。
2023年に指数3.5(10位)だった頓宮裕真のWARが、2024年は、ななんと!−0.2である。マイナスって、足引っ張っとるやないか。ここまでの凋落も珍しいはず。亜細亜大の先輩・九里に「亜蓮っ」と喝を入れてもらいたい。あと「チームに貢献していない」と揶揄されていた佐々木朗が数値指標では2年連続上位ランキングしてますけど?という皮肉。雰囲気でもの言うたら、あかんのやで。
さて。この名鑑の特徴は、昨シーズンの詳細な部門別セイバーメトリクス指標であるからして。2024年ランキング上位に登場した(数少ない)オリックス選手を紹介し、今年のオリッの戦いぶりに思いを馳せてみたい。
<投手>
ご存知のように、なんだかんで昨年のチーム防御率は2位。特に、先発陣を引っ張った宮城大弥の指標が圧巻である。
「tRA」(打球種類も加味した失点率):2位
勝敗や防御率は投手に責任のない要素にも左右されるが、「tRA」は純粋に点を取られない指標で「投手の真の実力」を表す。例えばゴロ打球の多い投手はプラスで評価される、など。宮城はリーグ2位であり、つまり球界のエースなのである。1位は佐々木朗。永遠のライバルが渡米してしまった。
「ERA-」(防御率が平均と比べてどれだけ優れているか):2位
100投球回以上なので宮城もランクイン。その年の平均値から算出されて本拠地球場の特徴も加味された、客観的防御率指標である。ちなみに堂々のワースト1位は… 田嶋大樹。ス、スピじまくん!
さらに宮城は「WHIP」(イニングあたりに許した走者の目安)「完投数」「四球を与えない率」で3位、「K/BB」(奪三振と四球の比)で1位と、どこを切っても文句なしの成績で凄みは増すばかり。かえすがえすも、南国の子を極寒の東北で投げさせて故障したことが悔やまれる。今年は無理させないでね、マモさん。
他のオリッ投手で上位に顔を出したのは、「被本塁打率(ベスト)」で、エスピノーザが1位、曽谷龍平が3位。確かにこの2人がホームラン打たれた記憶、あんましないかも。ちなみにワースト1位は元オリッの山﨑福也(笑)で、セのワースト3位が九里!あ、亜蓮?(笑)。ま、京セラ広いから。
注目すべきは、曽谷くん。昨年11敗(リーグワースト)だが、前述の真の実力指標「tRA」は堂々の4位で、トップレベルなのだ。指標ウソつかない、援護なくて負けただけ。「ゴロ率」は2位で、長打を打たれない優秀な投手である。「投手としての盗塁阻止率」が1位で、そういうとこも高レベル。昨年の経験を活かし、3年目ながら今年は投手陣の柱となろう。
<打撃>
衆目一致で、昨年も今年もオリッの課題は、打・撃・陣。今年の鍵は「昨年あかんすぎた」野手たちの奮起にかかっている。誰とは… 言わないでもわかる。昨年、打撃の各指標ランク上位に入ったのが森友哉だけ、とはあまりに寂しい。
森は「打率」「出塁率」というメジャー部門でいずれも3位。マニアック部門では「BB/K」(四球と三振の比)で2位、「対左投手打率」で1位、「2ストライク打率」で3位、「初球スイング率」「ストライクスイング率」で1位である。積極的なのに確実性がある、という完成度を見せた昨年だが、ホームラン数が「一桁」なのがやはり寂しい。今年は少々打率を下げてでも「遠くへ」飛ばしてほしい。点取らんと、勝てんので。
オリッの他打者で上位ランク入りしている人材は、ほぼ皆無。唯一「150キロ以上打率」ちうニッチ部門で太田椋が3位に入っているのが、笑える。速球を流し打ちで右中間!今年こそ「怪我さえなければ」を脱却してほしい選手である。
ちなみに「ボール球スイング率(ワースト)」では西川龍馬が堂々の1位。当たってヒットゾーンに飛んでれば文句はないのだが。意外にも「盗塁成功率」で2位だったので、今年こそオリッ・ファン未見の「本来の姿」を見せてもらって、機動力を駆使してほしい。
<守備>
なさそうで「ない」のが、オリッの守備力。投手力あるのに守備力がないちう「残念」ディフェンス。凡庸な外野守備は近年ずっとだが、昨年は内野守備も散々で、上位ランキング者はいない。ポジション別「守備率」では宗佑磨(サード)と紅林弘太郎(ショート)が3位ではあるが、6球団で3位はショボいし、真の守備指標「UZR」(どれだけ得点を防いだか)では圏外である。
オリッで守備力が「ある」のは、捕手の若月健矢のみ。「盗塁阻止率」「捕手守備得点貢献価値」(捕手が守備でどれだけ失点を防いだか)「ブロッキング」が1位で、やはり頼りになる捕手は若月しかいない。なので、森はDH?でも打撃優先なら森が捕手でDHは未知の外人か? 未知やしなあ、などなど選手リストをくまなくチェックしながら「2025予想布陣」を想像してため息をつく… これがこの時季の名鑑の楽しみ方である。
エスピノーザの胸元には漢字の「感謝」タトゥーがあるとか、宮城は沖縄出身なのに泳げないとか、九里は中学入学後に上級生をフルボッコにしたとか、田嶋は本当は寿司屋になりたいなど、名鑑には投手陣だけでも「有益な」情報も満載である。
あなたも自分に合った名鑑を選んで、いろんな角度で遊んでほしい。私が選んだ「Slugger」版はデカくて重くて、球場への携帯にはまるで向かないことだけはお知らせしておくけど。
とりあえず、選手の顔写真を見ながら「歯を見せていない奴」を探してみようと思う。MLBの影響か知らないが、野球選手ほぼ全員が名鑑写真で「馬鹿みたいに」歯を見せてるのって、私には「違和感」指標が高いので…。日本人がふだんそんな顔するか?
とりあえずオリッを調べたが、チーム方針なのかほぼ全員歯を見せて「ニッカリ」だった。が、やはりあの「ちょっと変わった男」だけは微妙(前歯2本しか…)だった。
誰でしょう?
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南 郁夫 (野球観察者・ライター) 通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」 |
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