南 郁夫の野球観察日記(169)選手名鑑・セイバーメトリクスで遊ぼう!

2024年2月20日 (文/南 郁夫)

毎年恒例の「選手名鑑で遊ぼう」の変形版。2024年の選手名鑑も各社、出揃って今年もみっともなく迷いに迷って選んだ選手名鑑は、これ。

携帯性は無視して(スマホあるからねえ)いわゆるセイバーメトリクス・データが豊富なSlugger特別編集の大型版。普段、ただ野球をぼんやり見てるだけで数字には絶望的に弱い観察者であるが、OPSがどうとかWHIPがねえとか、アルファベット略字を会話に挟めば「賢そうに見える?」なんちう邪念があってのチョイス。日本人の悪癖。

防御率や打率、守備率などの既存のお馴染みの指標だけでは選手の真の値打ちが測れないところから、急速に発達したセイバーメトリクス。「なんでも数値」なMLBでは査定やチーム編成にも活用されてるそうで、「なんでも雰囲気」で判断する私からしたら、いちいち指標が賢そうな切り口で新鮮。そんなデータ満載のこの選手名鑑の特色を生かし、とりあえずオリックス・バファローズの選手たちをセイバーメトリクス数値で分析して遊ぼう、と決めた。

まず、最も重要な指標が「WAR」。気が遠くなるほど複雑な(たぶん)計算式で投手・野手共通で各選手が「どれだけ多くチームの勝利に貢献したか」を総合的・公平に測定した指標であり、実際にMLBではMVP投票で活用されるとか。2023年パ・リーグのWARランキングベスト10は、以下のとおりだ。
1 近藤(ソフバン)
2 山本(オリッ)
3 森(オリッ)
4 浅村(楽天)
5 万波(日ハム)
6 外崎(西武)
7 柳田(ソフバン)
8 佐々木朗(ロッテ)
9 宮城(オリッ)
10 頓宮(オリッ)

お!?山本由伸が1位じゃないんや。とはいえ、オリッはベスト10に4人も入る。「あいつで勝った」クラスの選手が並ぶのがWARであり、優勝チームから多数ランクインするのは道理が通る。なので1位の近藤の成績はどの部門もとてつもなく、下位チームからランクインしてる浅村、万波、外崎は値打ちがすごいてこと。ちなみにセ・リーグの1位は牧(DeNA)だが、阪神の近本、大山がそれに続き、村上とサトテルもランクインしている。

2023年の主なセイバーメトリクス部門別(パ・リーグ)でオリッ選手を見ていくと、
打者では
「OPS」(出塁率+長打率)で、森が2位、頓宮が3位
「wRC+」(1打席で生み出した得点指標)で、森が2位、頓宮が4位
「ISO」(長打率より純粋な長打力指標)で、森が2位
投手では
「tRA」(打球内容も加味した失点率の低さ)で、山本が1位、宮城が3位
「K/BB」(三振/四球)で、山本が1位、宮城が4位
「WHIP」(イニングあたりで許した走者数の指標)で、山本が1位、宮城が2位(なんと2人とも1人以下)
「QS率」で、山本が1位など

もちろん既存の成績部門でも上位に顔を出している山本由伸、宮城大弥、森友哉、頓宮裕真の4人が、オリッでいかに勝利に貢献する選手かがセイバーメトリクス指標でも明白というわけ。
あれ?そのうち1人、今年の選手名鑑にいないぞって… 白々しいか。

あと、なんせこの名鑑は巻末のデータが詳しいので… いろんな珍しい部門でオリッ選手が上位に登場するのを見ていくと、
「対左投手打率」で、頓宮が1位、中川が2位
「2ストライク打率」で紅林が1位
「初球スイング率」(振ったちうだけだが)で、杉本が1位、森が3位
「遊撃手守備率」で紅林が1位
「右翼手UZR」(どれだけ失点を防いだか)で茶野が1位 などなど。茶野は守備の指標が非常に高いのである。

悪い方も見ていくと、
「空振り/スイング率ワースト」で、杉本が1位
「P/PA(1打席で投げさせた球数)ワースト」で、森が1位
「盗塁成功率ワースト」で、紅林が1位
「一塁手失策数」で、頓宮が1位(失点を防ぐUZRでは2位なのに)
「ARM(外野手の送球による貢献度)ワースト」で、中川が1位 などなど

ほうほう。なんだか数字から各選手のプレイの映像が見えてくるやないですか!初球から空振りする杉本とか、一塁守備で要所でファインプレーはするけど凡ミスもする頓宮とか、散々ファールを打つときの紅林は調子がいいとか、センター守備で最後よく交代させられてしまう中川とか… 。数字って面白いな。野球の数字に限るけど。

この名鑑はセイバーメトリクス視点での選手寸評も特徴的で、中川はUZRワーストゆえ「センター守備が明確な課題」、宗はベストナイン取ったけどOPSワーストゆえ「精彩を欠いた」と、手厳しい。
かと思えば頓宮の寸評を「コンビニの端から端までおならが匂った話を幼馴染の山本由伸が披露」、若月を「私服はしまむら、ユニクロ、ワークマンで揃える」と締めるなど、編集方針がアバンギャルドで読み応えたっぷり。数字を重視すれどユーモアのセンスがあり、油断ならぬのだ。

杉本にいたっては、これ。「リーダーシップがない」と言い切られとる。

この名鑑、基本的に例えば野手なら各選手の写真にWAR(総合評価)、UZR(守備評価)、UBR(走塁評価)が添えられており、一目で選手の数値的な特徴がわかって、冷酷ながらも合理的。投手は球種と割合が一目瞭然なので、これは助かる。その他、選手ごとのデータ詳細がすごくて、特徴と長所や短所を頭に入れれば野球観察も奥が広がるというものである。今までいかに漠然と見ていたか… ちう話だが。

恐る恐る、オリッ期待のこの新加入選手を見てみると…

ふむふむ。昨年のいわゆる打撃成績は文句なしだし、WARもまずまず(セ・リーグ35位)、UZRは1位、UBRもまあまあということで、ひと安心だ。なーんて、私も早速セイバーメトリクス視点になっちゃってるやーん。

「数字だけが野球選手の値打ちじゃない」という漠然としたロマンも捨てがたいが、確かに数字は嘘をつかない指標ではある。「顔で投げてる」とか「根性でなんとかしてる」みたいな選手も、感情的にはいてほしいけど。とにかくこの名鑑が視点を変えて野球を楽しむきっかけになればいいかなと。2024年シーズン、私はセイバーメトリクスな観察者である!知らんけど。

1100円もするけどめちゃ読み応えがあるので、シーズン開始まで存分に楽しめそう。ずっしり重くて持って歩くのはごめんだが。「名鑑は毎年、決めている」という皆さんも、書店でいろんな名鑑を比べてみることを、お勧めする。

 

南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
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