スポーツイラストレーターT.ANDOHの「OUTSIDER’s ReCALL」(112)静かに去りゆく指揮官、中嶋聡
2024年10月8日(イラスト・文/T.ANDOH)
こんにちは!スポーツイラストレーターのT.ANDOHです。
オリックスファンに衝撃!
オリックス・バファローズの2024シーズンが終了し、中嶋聡監督「退任」の衝撃的なニュースが飛んできました。
2020年のシーズン途中に監督代行として就任。
オリックスを3連覇に導いてくれましたが、今季の成績不振をもってユニフォームを脱ぐことを決断されました。
僕らファンからしたら、3連覇はとんでもない功績であって、それまでのこの20余年、2位フィニッシュはあっても「強いチーム」とはお世辞にも思えなかったチーム。
今年一年の成績不振なんて何のことと思っていたのですが、中嶋監督にとってはこの成績が裏付けるチーム状態に苛立ちを持っていたんですね。
「どれだけ言っても改善されなかった」
そんな言葉を残されました。
たしかに今年のオリックスは、単なるケガや移籍による戦力ダウンでは庇えない部分がありました。
むしろ離脱が多かったからこそ、我こそはと奮い立てて若い選手たちが牽引をするべきでもありました。
若い選手…
中嶋監督がファームで見立てて育ててきた選手たちです。
「すべてはこっちが責任とる」
この言葉も印象的な言葉でしたが、シーズン中でも「自分が責任を取るから、思いきりやってこい」と言い続けてきました。
選手に寄り添い、選手の特性を捉えて、奮い立たせてきた監督です。
勝負師としても、自分にプレッシャーをかけてでもチームを信頼して戦わせてきた。
だからこそ、指揮官としても、育成者としても良いチームを作ってくれました。
しかし、そんなかわいい選手たちが奮いきれなかった今年のチームを「慣れ」と言う言葉でも表現しました。
どこか3連覇という慣れ、中嶋監督への慣れ…
あったのかもしれません。
不振といっても、もともとは最下位からスタートしたチームでした。
強いときも弱い時も知っている選手たち。
だったら、自分たちが足踏みをしてしまっている時、どうしていけば良いのか。
プロとして、強いチームの一員として、考えてほしかったのかなと思います。
ホーム最終戦にも、「やっとこういう緊張感と高揚感の中で試合をできていた」と話されていましたが、勝負師としてつねに厳しい立場で試合に臨んできた指揮官にとって、いまのままでは良くはならない。
かわいい選手たちだからこそ、「新たな環境で再び前を向け」
そんなメッセージを残してくれたんだと思います。
宮城投手、紅林選手をとくにかわいがっていた指揮官。
引退する安達選手も、自分たちが牽引していけと紅林選手に檄を飛ばしました。
良い時でも“血の入れ替え”は組織にとって大事とも言います。
長く維持することで起きる「慣れ」や「守り」の意識は、勝ち続けなければいけないチームにとっては「毒」にもなる。
この中嶋監督の退任を、若い選手がどのように感じてくれるか。
いつかは別れの時は来るものですが、中嶋監督にこのように言わせて身をひかせてしまったということは、いちファンとしてはかなり悲しい。
仰木監督が、2つの水と油のようなチームを、命をかけて束ねてくれて20年。
幾多の監督がついたもののチームの成長を実感できなかったチーム。
あの時のようなチームに戻ってはほしくない。
そして連覇をしても、隙を見せたらこうなってしまうという教訓を、中嶋監督は体現して教えてくれました。
T-岡田選手をはじめベテラン選手も引退をしました。
ほんとうに、新たな時代を作り上げるチャンスをもらったオリックスナイン。
自らの力でチームを引っ張る気概を持って、来シーズンの1年での立て直しに心から期待したい。
そして、自らが身を引いて選手たちの成長を託した中嶋監督に、心から感謝を述べたい。
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スポーツイラストレーターT.ANDOH
おもにスポーツを題材にしたイラストやデザインの創作で、スポーツ界の活性に寄与した活動を展開中。 |
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