スポーツイラストレーターT.ANDOHの「OUTSIDER’s ReCALL」(108)T-岡田 ~ファンに愛されたスイングの申し子~

2024年9月10日(イラスト・写真・文/T.ANDOH)

こんにちは!スポーツイラストレーターのT.ANDOHです。
9月に入り、オリックスファンとしては悲しいニュースが飛び込んできました。
「T-岡田選手、現役引退」

今年も開幕前にも「もうひと華」と期待を込めたコラムを書かせてもらいましたが、開幕こそスタメンの座を得たものの直後にファーム行きとなって以降、1軍での勇姿は見られず今回の発表となりました。

球団合併した2005年オフの高校生ドラフトで、地元大阪の履正社高校から入団した岡田貴弘選手は、新生オリックス・バファローズの希望の星でした。
下位に低迷するチームのなかで自身も苦悩する日々を過ごしたと思うけれど、その苦悩を乗り越えて、美しいフォームから鋭く糸を引く、会心の弾道はファンの希望でした。
誰もが一発を夢見て55番の背中を送り出す。
入場曲として定着した「カーニバル」が流れれば、球場の雰囲気は一気に上がります。
ファンの心をそそる選手でした。

美しいスイングに温厚な人柄もあってファンに愛されましたが、思えば2009年のファン感謝デーで当時の岡田彰布監督と「名前がかぶる」という理由で新しいニックネームを公募したことで決まったのが「T-岡田」。
当時は正直「もうちょっとカッコいい名前なかったのか」と、僕の名前も棚に上げて(苦笑)思ったこともありましたが、何よりもシンプルでキャッチーな名前でしたね。
それも喜んで受け入れて自らが明るい話題を振りまいたのも岡田選手の人柄か。

岡田彰布監督からも見出されてホームラン王を獲得したことは、これもまた転機というか、巡り合わせをも感じますね。
そんな気運を自らの努力でも引き寄せました。
T-岡田岡田と名乗るまでは、1軍と2軍を行き来することも多かった選手です。
「労働基準法違反です (笑)」
と冗談を飛ばしながらも昼夜問わずバットを振ったのもこの頃でした。
たとえファームにいても弱音を吐かずに直向きに努力する姿もまた、ファンの心を打つんですよね。

ファームの時のお話として、秘蔵写真をひとつ紹介します。
こちらは岡田選手の新人時代の写真ですが…

淡路島でのファームの公式戦は、8月の猛暑の中でした。
日陰になるところもない淡路島の運動公園では痛いほどの日差しを受けていましたが、試合前には炎天下でファンと一緒にかき氷の売店に並ぶ岡田選手の姿。
先輩選手の分も買うためにベンチと売店を往復する岡田選手をつかまえて撮らせてもらった写真です。
選手もファンと一緒になって売店で買い物をする…
ファームの、地方開催ならではのこの”ユルさ”は今ではなかなか見られない光景ですが、この時も岡田選手は穏やかな笑顔でファンにも応えてくれましたね。

時代は経て、
今シーズンも
T-岡田選手はファームでもひた向きにバットを振っていたんですよね。
チームが低迷していた時にも、自らを奮い立たせて試合に臨んでいた岡田選手。
例年になく暑かった今シーズン、ファームでも出番を待って準備している打撃陣の中で、来田選手や横山選手といった若手選手が呼ばれることも世代交代を感じていたのかもしれません。

ひたむきな姿勢も1軍に呼ばれることはなく、静かにバットを置くことになったT-岡田選手ですが、本当にこの2~3シーズンは本当に忍耐のシーズンだったと思うし、その上で決断した引退という選択は、最後まで真摯に自らを見つめて決断したことだと思います。

ただ、
もう一度あの美しい弾道を見てみたいですね。
T-岡田選手には花道が用意されると思います。
最後の最後まで、ファンのみんなに慕われたあのどっしりと構えたスタンスと、スイング軽いバッティングフォーム。
そして笑顔を見届けたいですね。
「ありがとう」はもうちょっと先に、皆さんもそれぞれの場所でT-岡田選手に向けて送ってください。

 

※イラストの転載・無断使用はご遠慮ください。使用をご希望の場合はK!SPO編集部までご連絡ください。


スポーツイラストレーターT.ANDOH

おもにスポーツを題材にしたイラストやデザインの創作で、スポーツ界の活性に寄与した活動を展開中。

プロ野球やプロバスケBリーグのチーム、選手にイラスト提供。

プロ野球選手には、伏見寅威選手(北海道日本ハムファイターズ)、中川圭太選手(オリックス・バファローズ)にロゴデザイン、イラスト提供中。

名古屋在住にも関わらず20年来のオリックスファンであり、その由来とイラストレーターの起源は神戸にある…!?

 

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