スポーツイラストレーターT.ANDOHの「OUTSIDER’s ReCALL」(169) 第80回甲子園ボウル!圧倒の立命館と、学びを刻んだ関学の甲子園

2025年12月17日(イラスト・文/T.ANDOH、写真/Azusa Suzuki

こんにちは!スポーツイラストレーターの T.ANDOH です。
12月14日に開催された「第80回毎日甲子園ボウル」!行ってまいりました!!

関西学院大学ファイターズと立命館大学パンサーズという、史上初の関西決戦ということもあり、24,000人という観衆も入って大いに盛り上がりました。
すでに結果をご存知の方も多いと思いますが、ゲームの様子をお送りしたいと思います。

試合は関学のキックオフからスタート。
ここで関学はオンサイドキックを選択!自軍ボールに取り込もうという作戦だったのでしょうが、立命館ディフェンスがしっかりとキャッチして、ハーフラインからの立命館の攻撃となりました。 

立命館は直後のプレーから全力で攻撃を仕掛けてきます!
ミドルパスをキャッチした2回生RB(ランニングバック)漆原大晟選手が驚異的なジャンプ力で関学ディフェンスを飛び越えて得点圏にゲインします。

そしてQB(クォーターバック)竹田剛選手が放ったパスを、4回生WR(ワイドレシーバー)仙石大選手がキャッチして先制のタッチダウンを決めます!!
右サイドから中央に抜け出した仙石選手へ竹田選手の鋭いパスが通りました。
大雨でうまく持ち味が発揮できなかったリーグ戦から一変し、竹田選手には要警戒の雰囲気を序盤から感じました。

関学のQBは2回生の星野太吾選手。
星野兄弟の「弟」で同点を目指しますが、このシリーズを得点に繋げられず攻撃権を譲ると、次の立命館の攻撃では、先ほどパスで先制タッチダウンを演出した竹田選手が今度は自分の足でエンドゾーンへ飛び込み、2つ目のタッチダウンを奪います!
序盤にパスもランもうまく機能している中、竹田選手にも自らQBキープで得点を奪われ、1Qが終了します。

1Q最終盤の関学の攻撃から、QBには星野兄弟の「兄」、4回生の秀太選手が登場。
クォーターをまたいだ2Q開始直後、4回生RB、井上誉之選手のロングランが決まると、そのままゴール前の攻撃で再び井上選手がラッシュを乗り越えてタッチダウン!

流れを変えたい思いの関学が、4回生のアグレッシブな攻撃でタッチダウンを1つ取り返します。

しかし!
攻守が交代した次の立命館の攻撃で、竹田選手から3回生WR有馬快音選手へのパスが決まりファーストダウンを奪うと、続くプレーで今度は4回生WR木下亮介選手へのパスが決まり、3つ目のタッチダウンを取りました!!
竹田選手には、関学は4回生DB東田隆太郎選手をはじめ、ディフェンス陣がブリッツ(QBを直接攻撃するプレー)を仕掛けていましたが、素早い判断で投じたパスが見事に決まっての得点劇。
前半にして、竹田選手の調子の良さが窺い知れる立命館のオフェンスとなりました。

しかし関学も黙ってはいられません。
次の攻撃から再び星野太吾選手が登場。
3回生WR小段天響選手や百田真梧選手へのパスがつながると、星野選手自身が走りゲインを重ねて得点圏に進みます。

ここで関学はランでプッシュをしたく、ワイルドキャットの体制で4回生RB井上選手がラッシュに飛び込み、4thダウンギャンブルも成功させてエンドライン前にて攻撃権をキープ!

そこで戻ってきた星野太吾選手が次のプレーで自ら走り込み、最後は右側ゴールのポストギリギリに飛び込んでタッチダウンを奪いました!!

意地を見せてファーストダウンを獲得し、星野太吾選手にもパスと自らのランで星野選手らしさを取り戻した感のある攻撃でした。
前半はこのあと立命館が攻撃を展開し、フィールドゴールを試みたものの失敗。
このフィールドゴールが決まらなかったことが後々に生きてくると良いな…
と思いながら、1ポゼッションの差で前半は終了しました。

ところが、後半に入って関学には徐々に自分たちのプレーも取り戻しつつあるものの要所で得点圏に持ち込むプレーにはつながらず、立命館に4つ目のタッチダウンとなる竹田選手のランを決められてしまいます。

漆原選手のロングゲインで得点圏に侵入し、4回生のエースRB蓑部雄望選手のパワフルなランでゲインを重ね、最後は竹田選手が自らランを繰り返してねじ込んだ得点となりました。

関学ディフェンスも決して劣っているとは思いませんでしたが、立命館にはそれ以上の力と作戦で、対策をしてきたと感じました。
そんな中でも、要所で関学3回生DB、井藤暁選手のタックルが印象に残りました。
リーグ終盤戦から出場機会を増やしてきた井藤選手。
積極的なプレッシャーは今後も活躍が楽しみなプレーです。

この後、関学の攻撃ではQBに星野秀太選手が登場。
しかし、2つのインターセプトを喫して攻撃権を献上します。
星野兄弟でQBを使い分け、流れを取り戻そうとしますが、4つ目のタッチダウン以降は関学にも焦りがあったと思います。

逆に余裕が生まれてきた立命館は、自分たちのやりたいプレーが展開でき、インターセプトのようなビッグプレーも引き寄せればスタンドは盛り上がる。
立命館の勢いがさらに増す後半となっていきます。

そして4Qには立命館側にフィールドゴールが決まり追加点。
さらに竹田選手のトスを受けた仙石選手がエンドラインに飛び込み、5つ目のタッチダウン。

今日の関学相手には十分なダメ押しとなる得点を立命館が挙げて、終始立命館リードで試合は終了しました。

関西学院大学ファイターズ 14 × 38 立命館大学パンサーズ

立命館大学が関学を圧倒し、連覇となる10回目の甲子園ボウル優勝を果たしました。

甲子園ボウルMVPは立命館大学パンサーズ竹田剛選手。

そして年間最優秀選手となる「チャック・ミルズ杯」は、立命館大学4回生K(キッカー)、横井晃生選手が獲得しました。

良くも悪くも「ノリと勢い」で奇襲も存分にかけてくる立命館大学。
そこに圧倒的なRB陣のパワフルなオフェンスが繋がり、QB竹田選手がどんどん良いプレーを仕掛けることができました。

関学は、”らしさ”を発揮できないまま立命館に呑まれた感が否めませんでした。
昨年の準決勝、法政戦にも似た雰囲気がありました。
意表をついて、自らがボールをとりに行こうと仕掛けたキックオフのオンサイドキックが立命館に取られた…。
これもまた関学には誤算だったとも思います。

ただ、今年の立命館が強かったというのも事実。
攻守ともに関学が仕掛けてくるプレーに対してそれを上回るパフォーマンスが随所で光りました。
リーグ戦とは真逆の結果。
自分たちのリズムが作れれば、ほんとうに分からない勝負でもあったと思います。
相対するカラーを持ちえたこの西の雄同士の対決。
RB陣が残る立命館と、若手も台頭しチーム力を磨いてきた関学。
この勝負は、来シーズン以降もまだまだ目が離せなさそうです。

4回生QB、星野秀太選手
「選手はみんな自分たちの力を出し切ってくれました。あとは僕の責任です」
「自分たちはしっかり準備をして臨んだところを、立命さんがそれ以上ことをされてきたので、自分自身、悔いはないです」
「ありがたいことにここ(甲子園)まで来られたので、緊張している選手がいっぱいいたのですけど、この状況を楽しまないといけないと思って、チームメイトには、次のプレーに集中できるよう声をかけていました」

2回生QB、星野太吾選手
「調子がうまく出ないことに対して、しっかり切り替えができずにプレーをしてしまったので、悔やまれる試合になりました」
「(練習の時から)考えすぎることが多くて、思いきりの良いプレーができず、自分の甘さが出ていたかもしれないです」
 「ただ、甲子園という舞台にスタメンで出させてもらえたことは、自信を持って次に活かしていきたいと思います」

集大成としてゲームを楽しみ、精一杯をやりきったという兄秀太選手と、大一番で弱さを感じてしまったという弟太吾選手。
これも大きな経験として成長の糧となってほしい太吾選手と、同じようにいろんな経験を踏んで、いま晴れやかに後進に託していきたいと話す秀太選手。
この2人の対照的な姿は、関学ファイターズがもたらす“学びと成長”を体現しているようにも見えました。
兄秀太選手も、幾多のプレッシャーと立ち向かい、そして怪我にも見舞われ、苦しい時期を過ごしました。
さらに、“チームとして闘う”知恵や、仲間を信じることを学んだといいます。
そんな兄を昨シーズンから支え、代わりもつとめて、僕たちが見れば大きく成長していると見えていた太吾選手でしたが、こうして大一番で挫折を経験できたことが、また大きな未来への原動力となると思います。

ファイターズが敗れたことは悔しいですが、立命館が強かったのもまた事実。
この敗戦から選手たちは新たな学びを得られたと思います。
この悔しさを来年へつなげ、今年の4回生、そして昨年の4回生の思いも背負って、再び日本一を目指して歩み出してくれることを信じたい。
その軌跡をまた見届けたいと思いながら、来シーズンもこのチームを応援していきたいです。
毎年4回生が卒業し、世代が移り変わる儚さ。
それでもチームは受け継がれ、新しいチームができ、新たなドラマができる。

学生スポーツの魅力が詰まった今年の甲子園ボウルをひとつの歴史の通過点として、ぜひ多くの方に学生アメフトを観てほしいと思います。
そして来年は歓喜にわく関学ファイターズを見たい!!
K!SPO読者にも多くの方にその魅力を伝わってほしいので、今日も言います!

 

※イラスト・写真の転載・無断使用はご遠慮ください。使用をご希望の場合はK!SPO編集部までご連絡ください。


スポーツイラストレーターT.ANDOH

おもにスポーツを題材にしたイラストやデザインの創作で、スポーツ界の活性に寄与した活動を展開中。
プロ野球やプロバスケBリーグのチーム、選手にイラスト提供。
プロ野球選手には、伏見寅威選手(北海道日本ハムファイターズ)、中川圭太選手(オリックス・バファローズ)にロゴデザイン、イラスト提供中。
名古屋在住にも関わらず20年来のオリックスファンであり、その由来とイラストレーターの起源は神戸にある…!?

 

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