スポーツイラストレーターT.ANDOHの「OUTSIDER’s ReCALL」(152)8月をもって閉鎖!神戸王子スタジアム写真集 ~2~
2025年8月14日(イラスト・写真・文/T.ANDOH)
こんにちは!スポーツイラストレーターのT.ANDOHです。
8月31日に閉鎖する王子スタジアムを写真で振り返るコラムの第2弾。(第1弾のコラムはこちら)
今回は、選手や関係者の方しか入れないフィールドおよびバックヤードの景色をご紹介しましょう。
関西学生アメフトリーグならびに関学ファイターズの試合に関しては、K!SPOもプレスとして入場させてもらっています。
あらためて関係者の皆さまに御礼申し上げます。
おかげさまで関西のいろんなスタジアムにお邪魔できているのですが、王子スタジアムはとりわけ独特の構造と雰囲気を持つスタジアムなので、今回の閉鎖を前に、神戸の歴史、関西アメフト史の記録のひとつとなれば幸いです。
取材の時は正面スタンド建屋となるスタジアム事務所の入り口から入ります。
玄関にある受付を経て右手に進むとグラウンドへの入り口につながる廊下となります。
野球場なんかもそうですが、競技場の裏側って上ったり降りたりと複雑な構造になっていたりするのが面白かったりします。
王子スタジアムも廊下の先に小上がりの階段があって、そこがグラウンドレベルになります。
これが小上がり側から受付側を撮ったもの。
プレス受付をしてくれた学生スタッフがこっち見てますね(笑)。
正面玄関との間にある階段を上がると2階3階につながり、そちらには更衣室や控室などが並んでいます。
小上がりを上がったところを左に折れるとグラウンドへの出入り口です。
選手たちもこの通路をくぐってフィールドに入ります。
クラブハウス内にも控え室があるうえ、トイレなどでもこの通路を使います。
フィールドに出るとこんな感じ。
スタンドからの景色と角度が若干変わるだけですが、やっぱり裏の麻耶山との調和が良い景色ですね。
薄暗いバックヤードからパッと広がるフィールドの景色はとても気持ちが良いです。
この出入り口をスタンドから見たものがこちら。
出入口はスタンドの最前列に繋がっていて、右手には前回紹介したスタンド最前部の屋根付きの席とも並んでいる。
ここもまた、フィールドとスタンドの境界線が曖昧になっている王子スタジアムの特徴になっています。
スタンドの下層部分のフィールドに面した部分にはダグアウト状のスペースがあり、入り口左側(中央部分)はプレスの休憩スペースとなっています。
ダグアウト式に掘り込まれている分、屋根が低いところにあるんです。
角には頭を打たないような工夫が…。
真ん中はプレス用のスペースになっていますが、スタンド両翼(屋根付き観客席の下部分)は個室になっていて、もっぱら選手の控え室となります。
それではフィールドの中に入ってみましょう。
フィールド東側からのぞむ景色には、遊園地の観覧車がフィールドからも見えます。
王子公園らしいロケーションで、僕はけっこう好きな景色です。
この景色も見納めとなりますね。
フィールドの面積は26,000平方メートル、外側に400mのトラックがあり、中には横102m、縦64mのピッチがあります。
かつて関西のアメフトの拠点でもあった阪急西宮スタジアムが閉鎖となることを受け、アメフトの拠点として誘致したのが神戸市と王子スタジアムでした。
このピッチは、天然芝だったものをこの誘致のタイミングでアメフトができるよう人工芝に改修されたものです。
こちらの人工芝は、住友ゴム工業が開発をした「ハイブリッドターフ」と呼ばれる、いわゆる「ハイテク人工芝」。
今でこそ野球場やさまざまなスタジアムで使われているタイプの人工芝ですが、王子スタジアムはそのハイテク人工芝のはしりともなりました。
そしてフィールド西側にはアメフト専用のスコアボードがあるのですが、じつはこれは西宮スタジアムに隣接していた西宮球技場から移築されたもの!
ひそかに西宮時代の名残がこうして継承されているのですね。
神戸ユニバー記念競技場ができて以降、日本陸連の指定競技場から外れたため、陸上トラックで公式な大会は開催できない事情もあり、王子スタジアムの新たな活用方法として、当時の神戸市にはアメフトがかなり期待されていたのでしょうか。
2005年にはナイター設備も整備され、アメフトの聖地となっていきました。
一方で、王子スタジアムの陸上トラックは学生スプリンターの練習拠点として今日まで重宝され、また地元の学校や自治体が開催する体育イベントなども開催されています。
現在でもトラックや陸上用の備品もそのまま常備されています。
フィールドの片隅では、ちびっ子がアメフトをやって遊んでいる…。
のどかな風景ですね。
こちらは向こう正面のスタンド下になりますが、こちらもダグアウト状のベンチスペースがあり、相手チームの荷物置き場になっています。
スペースの片隅には高跳び用の棒が置かれていたりしますね。
関西アメフト界の重鎮でもある、関学ファイターズ前監督の鳥内秀晃さんにも、王子スタジアムと西宮スタジアムの思い出をお聞きしました!
(話を聞く僕の背中が緊張しているのがよく分かりますね(笑))。
「私が監督になった1992年の京大戦は、西宮球場に過去最多の人が集まった」
「それを思うと、王子に移って以降はアメフト人気にも比例して、少し寂しい思いがあるな」
鳥内さんの時代ともなると、やはり西宮スタジアムの思い出の方が印象に残っているようですね。
FLASHBOWLと呼ばれる関学と京大の一戦では、優に2万人を超える観客が集まりました。
西宮スタジアムというステイタスがあって、甲子園ボウルにつながっていく…。
そんな選手たちの目標の地にもなっていたのが西宮スタジアムでした。
王子スタジアムに移りキャパも小さくなって、観戦に訪れるファンは減少したのかもしれません。
現在の王子スタジアムは閉鎖後に取り壊され、王子公園の再整備計画のもと、現在はテニスコートがある公園北側への移転が計画されています。
新スタジアムの歓声は2030年という予定だそうですが、新スタジアムが再びアメフトの聖地として、アメフト人気の復興とともに多くの方の憧れの舞台となることを願いたいです。
鳥内さんはいま一線を離れつつもアメフトの振興に励まれています。
ぜひ読者の皆さんにはあらためて「スポーツを見に足を運ぶ」ことをお勧めしたいです。
これはアメフトに限らずですが、現場でこの目でスポーツを見ることは人を豊かにすると思うし、ひいては競技の質の向上、地域貢献など、いろんな意味で業界の発展にもつながります。
今日は少し早く出しちゃいますが(笑)、まずはぜひ今年の「甲子園ボウル」に向けて今シーズンを注目してもらいたいです。
ほんとうに、山の青、空の青、そして公園の緑にフィールドの緑と、目にも優しくて自然にも囲まれた気持ちの良いフィールドです。
ここでしのぎを削り、鍛えられてきた選手たちが、日本のアメフト界を牽引していきました。
関学ファイターズも、歴代がこの王子スタジアムで試合を重ね、鳥内監督がライスボウル制覇も実現し、最近では史上初の6連覇を成し遂げました。
王子公園の再整備計画には未だ賛否の意見があるようです。
歴史ある王子公園なので、個人的にはこの緑あふれる公園の景観はあまり変わらずに進化してほしいかなとは思います。
再整備された公園がさらに魅力的な場所となってくれることを祈るばかりです。
そんな王子スタジアムですが、ラストの営業日となる8月31日(日)が関西学生アメフトリーグの開幕戦、関西学院大学ファイターズの今季初戦が開催されます。
17:30より甲南大学との一戦がありますので、ぜひ王子スタジアムの見納めにもお出掛けください。
※イラスト・写真の転載・無断使用はご遠慮ください。使用をご希望の場合はK!SPO編集部までご連絡ください。
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スポーツイラストレーターT.ANDOH
おもにスポーツを題材にしたイラストやデザインの創作で、スポーツ界の活性に寄与した活動を展開中。 |
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