南 郁夫の野球観察日記(203-1)セ・パ交流戦、2025関西ダービー阪神vsオリックス観察記

2025年6月9日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

開幕はるか前に専属カメラマンが各種端末をモグラ叩きのように駆使して取ってくれた、甲子園球場のオリックス交流戦の貴重なチケット。苦労して3試合中2試合も獲得した熱意は、神々しいというほかない。チケット入手が困難すぎて、家から近くて遠い「大甲子園」。その顛末をレポートする。

 

6月6日(金)
この日は3塁側内野席「ブリーズシート」の最上段にて観察。振り返れば金網越しに高架道路が見える、ちうまさにてっぺん席で、高架を走る車から私の後頭部が見える、そんな席。で。その金網に持参のフックでごちゃごちゃ私物を吊るしてる阪神ファンなんかもいて、常連さんは甲子園球場を我が家みたいに扱うのね。

この席からは豪快に屋根が視界に入るのだが、慣れればそれほど気にならないし、なるほど浜風が爽やかに抜ける「ブリーズ」(そよ風)で肌感は快適。私の脳内ではシールズ&クロフツの「Summer Breeze」のサビが延々リフレイン。いい気分。グラウンドは遠いけど、そのぶん阪神ファンの圧力釜のよな熱気から距離を置けて、気楽に観察できる。

試合の方は、先発のオリ・東、阪神・村上はじめ両軍投手陣が素晴らしいピッチングで、ヒットすらほとんど出ない展開。投手戦って好きじゃないけど、涼しい風に吹かれてのんびりなごんでいる間に… 試合はファンの騒ぎどころのないまま、あっつう間に「0-0」で9回へ。

そして9回表。ドラマは、唐突に起こった。そして止まらなかった。阪神・石井投手の頭部に打球直撃→救急搬送、そしてその打球を放った廣岡による危険?スライディング→警告試合という事件が連続して勃発。「廣岡許すまじ」の怒号が場内に充満し、甲子園球場が地獄の釜が開いたかのような、恐ろしい空間に一変。そして、その空気のまま延長10回に阪神が怒涛のサヨナラ劇に持ち込んで、異様な興奮が大・爆・発!あわわわ。こりゃたまらん。

私はもう、軍事クーデターが起こった国から脱出する異邦人のような勢いでオリッ選手がベンチに戻るよりも早く球場を抜け出し、大混乱になる前のまだ人もまばらな駅から電車に飛び乗ったのである。そして車内で「まとまらない気持ち」を落ち着けていると、乗った電車を間違えたのか、目的の駅を通過してるちう、まだ試合を引きずっているドツボ展開。阪神電車、ようわからん。

石井の頭部に打球が当たった瞬間が、目から離れないのだ。ボール(の硬さ)の怖さを思い知る。で。場内「しーん」やのに、直後に「がんばれがんばれ石井!」コールは私には理解不能の感性。とにかく廣岡は野球をプレイしただけやし、悪意はないし、許すとか許さないの話ではない。でもとにかく石井の無事だけを祈る、そんな試合。

*石井くんは入院とかではなかったみたいで、よかったー。派手にボールが跳ね返る方がいい、て本当なのね。で。その後ファンの間では予想通りの騒ぎがあった模様。SNSとか見ないから、知らんけど。ただ、藤川監督は廣岡のことも慮った冷静なコメントを出していて、なかなかの人物だと思うぞ。

 

6月8日(日)
2戦目も宮城で落としたオリックス(テレビ観察)、3連敗は避けたい試合だったが…。

あらら、ルーキー伊原好投、森下3ラン、サトテル満塁ホームランちう「鼓動祭り」を見せつけられてしまっただけやん。もちろん球場は終始大騒ぎだったのだが、それは1戦目とは異なる「陽気なお祭り」であり、途中から勝負の興味を失った私にも好ましく映った。専属カメラマンによるこの試合のヒーローお二人のサービスショットを、どぞー。

みんな(スタンドの9割以上)が喜ぶのを見てるのは、いいものだ。この日はほぼレフトスタンドのアルプス席の上の方からの観戦だったのだが、文字通り山の上からの「神の俯瞰」である。細かいことわからんしっ。甲子園で阪神が勝つのに越したことはないし、関西の経済も回るねん、と居直る。でも心配した廣岡へのヤジもなく、そこは昭和のプロ野球ではないのだと安心したり。

とにかく、阪神タイガースは強い。強かったです。しかも、高品質の投手陣に加えて、左右のサトテル・森下ちう生え抜きの主力打者の「若さ」を考えると、その強さは「持続可能」。さすが阪急阪神ホールディングスって話である。まあ、今は一番投打が噛み合ってる時期で、オリックスは悪いときに当たってしまったのかもしれないが。

というわけで。オリッ的にはいいところがなかった今年の関西ダービー。撤収。また明日から。新加入の岩嵜が素晴らしい投球をしたことと、東が完全復活したのが、光明。こんなこともあるさの、甲子園でひたー。ああ、まだ阪神応援団の声が耳にこだましている。

でわ気分を変えて。次ページは…
オリックス・ファンに届けたい、専属カメラマンの試合前練習ショット集をご覧ください。

 

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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
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