南 郁夫の野球観察日記(157)「転ばぬ先の屋根」台風下観察遠征記

2023年9月11日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

ちょっと前に、今年の観察遠征は9月8~9日のZOZOマリンと決めた。10年前に行ったきりで、建て替えの噂もあるので。9日(土)はナイターなので最後まで見れないが、8日(金)はちゃんと見れるのでいいだろ、と。2泊はめんどくさい、と。まさかこの決断が以下のような顛末になるとわ、お釈迦様でもなんとやらの記録である。

9月8日(金)当日、なんと嫌がらせのように台風が関東直撃。千葉の天気予報が「マイ天気」に登録されてしまうほどウェザーニュースを見てもZOZOマリンへの影響がよくわからぬまま、新幹線で午前中に見切り発車。影響のない関西から、台風を追っかけてGO。時間が経つにつれ絶望的な予報になりつつあるなか、名古屋駅を越えたところで、ナゴヤ球場の撮影に成功。一瞬見えたグラウンドには二軍選手の姿が!春のファーム試合を思い出しつつ「あのときと逆視線」だなあとニンマリ。
<今回>

<あのとき>

車内販売案内アナウンスの女性が、日本語に続いて超高速棒読みの英語で「なんちゃらかんちゃらベバレッジ!」と適当に叫ぶので「どの外人がわかんねん!」と爆笑している、まさにそのとき。今回も同行する秘書(専属カメラマン)からの悲報「ZOZO、中止です」に、ぞぞ。千葉では被害も出るほどの大雨だそうで、まあしゃあないけど。その方向に向かっているのだよ、我々わ。台風のとき用水路を見に行って落ちるタイプだよ。

それまでも火を吹くような勢いでスマホで情報収集していた秘書が、そこからさらに高橋名人のように画面を乱打すること、小一時間!ZOZOマリンでロッテvsオリックスを見るはずだった我々が今夜見るカードは、これ↓である。

実は空いてる翌日の昼間に途中までこのカードを見ようと9日の東京ドームのチケットを押さえていたのだが、魔法のような手際で秘書はそのチケットを「誰か」に売り、そして今夜のチケットを「誰か」から入手したのだ。スマホ一丁で。そんなデジタル悪魔の所業に驚くとともに、「やっててよかった、東京ドーム」ちう話である。

チケットのやりとりは「駅のロッカー」。どう見ても怪しい取引にしか見えないが、今どきの個人チケット売買の常識だそう。生首でも出てきそうなんだけどー。というわけで「指定された後楽園駅のロッカー」(この表現だけでも犯罪の匂いが…)でチケットを入手した我々は、東京ドームへ。ここは数年ぶりかな。

ドーム前には西洋人やホステス同伴?の紳士も多く、いつ来ても都会の球場の佇まいである。で。この球団はことさら「プライド」を前面に打ち出しておるようで、過去の栄光をドーム前のあちらこちらで勝ち誇って威圧中。えらい昔の話ですねんけどな…。

当たり前だが、関西では甲子園でしか見れない「巨人の帽子をかぶって巨人ユニを着てる人」がたくさんいて、ドギマギしてしまう。巨人の帽子で街を歩く…関西では罰ゲーム。この日の巨人はオレンジ・ユニを着る日らしく、スタンドもオレンジが目立ち、個人的に好きな色なので気分は上がる。入手した席は「オレンジシート」で、巨人ファンの真っ只中。もちろん関東なので…ぜんぜん居心地はいい。私はLAドジャースのTシャツだったので、どう見ても中日ファンに見えるのだが。

で。試合の方だが…シュールすぎてコメントのしようがない。どっちのファンでもない私が見るには、延長12回 0-0 はつらすぎるやろ。どっちかのファンならドキドキもあるのだろうが、ただでさえ投手戦が苦手な私には、このスコアボードは「24個入りのたこ焼き」にしか見えないし、たこ焼きのほうが嬉しい。

全国雨模様だったのに、ZOZOマリン「だけ」が中止なのが、なんとも悔しい。阪神園芸!と叫んでしまう。

とはいえ、9回を零封した巨人の戸郷はエースと呼ぶに相応しい素晴らしい投球だったと思うし、こちらも好投した中日先発が、奇しくも新幹線車窓から見えたナゴヤ球場で春先にファーム試合で先発していたルーキーの仲地だったのが、嬉しかった。もっと驚いたのがそのファーム試合で登板した中日の藤嶋、福、松山が全員、この日の1軍試合で登板したこと。そんな妙な現象ある?それが中日?2年連続ノーノー観察よりある意味、すごい。

パ的トピックスとしては…オリッ→ハム→中日と「全国たらい回し」移籍をくり返した齋藤綱記が登板して好投したこと、後藤俊太が代打に出てきて惜しい当たりを飛ばしたこと、宇佐見がスタメンだったことかな。マジでセの選手がわからないので、そういう周囲の誰も盛り上がらないポイントで盛り上がるしかないのだ。

驚いたのは(驚くところではない?)巨人の坂本がいまだに絶大な女性人気を誇っていること。「体調不良」から復帰したところらしいが、サードを無難に守って2安打していた。もうちょっと華のある選手だったような気がするが、なんだかオーラがなくなったような? かつての輝きを取り戻してほしい伊丹の子。

4万人以上入った観客が騒ぎどころなしで試合時間、3時間40分。小腹が空いたので事前にチェックして魅力的だったフードコーナーに行ってみると、フードはきっかり7回で販売終了。何もかもきっちり管理された、さすが帝都ドーム。神戸の球場みたいに試合終了後に唐揚げや焼売半額セールなんて、ないのだ。そういや、入場時に生まれて初めてカバンに手え突っ込まれてチェックされたし、きちんとしたオペレーション。

これが外野スタンドからグラウンドに落ちたときも、一瞬で係員が回収。返してもらえたのだろうか?

まあどんな試合だろうが、目的の球場が雨天中止でもちゃんとプロ野球の試合が見れたことに感謝せねばなるまい。もちろん野球なので楽しめたし。皆さんも屋根なし球場遠征時には、滑り止めを用意できる日程を組みましょう。パ・ファン的にはマリン中止でもベルーナがある!が理想だね。距離、めちゃ遠いけど。
試合後も小雨降る中、ホテルに移動。そして運命の遠征2日目を迎えるわけだが、そこですごいもんを見た(詳しくは、こちらの観察日記をどうぞ)。
まあいろいろあったし結構(歳のせいか)空いた時間とかあって疲弊するけど、遠征は楽し。今回も新幹線の駅でいろんなチームのユニを着たファンを見かけたし、遠征が日常化しているファンも多いのだろう。私なんて年に1回がせいぜいだけど。しつこいようだが、遠征の合言葉はこれである。

「転ばぬ先の屋根」

ドーム球場に行く場合? それは安心して、行ってらっしゃい。
いやいや。8月9日のPayPayドームの試合、台風で中止になってたなあ。

 

南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
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