南 郁夫の野球観察日記(152-1)真夏の夜の夢 ファーム関西対決@神戸

2023年8月6日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

試合が終わって駐車場へ向かう途中、前を歩いていた阪神タイガースのハッピを着た3人組がこんな会話をかわしている。
「あそこで落球するか?ふつう」「甲子園やったら、ファンに*ろされてるで、あいつ」「でも腹立たへんもんな」「負けてもイライラせんしな」「プレイはそらプロやし、試合は見ごたえあったわ」「純粋におもろかった」「涼しいし」「なんかええよな… ファームの試合」「うん。イライラせんもん。また来てもええな」。

ファーム試合の素晴らしさが、彼らのこの会話に集約されている。

8月4日(金)@神戸。ナイターで行われたファーム試合「オリックスvs阪神」は、阪神のセンター・井坪陽生(ルーキー)が落球してオリッのサヨナラ勝ちという、とほほな結末。その瞬間、1600人ほど集まった観客には歓喜も落胆もなく、ああ終わった終わったと「伸び」をしながら席を立ち上がるばかり。でもみんなの顔にはちゃんとこう書いてあるのだ。「ああ、おもしろかったあ…」と。夜は涼しいこの球場で、演出も応援団もなし、純粋な野球音だけの「野球そのもの」といろんな人間ドラマ、そして真夏の風情を楽しめたのだから。

夏休み恒例となりつつある、グリーンスタジアム神戸のナイターでのファーム関西対決3連戦。もちろんこういうのは私にとって大好物、最重要観察対象。今年はいつものネット裏、A指定席、フィールドシートに加えて「ファミリーシート」も開放されたので、その4人席を2人でゆったり使って足を伸ばして楽しもうと目論んだのである。

見よ!日本一美しい球場で一軍をスマホでチェックしつつファーム試合をのんびり眺めるちう、このオリッファンとして最高に贅沢な真夏の夜の過ごし方ををを!(興奮しすぎ)

そして。ファームとはいえ、この豪華なスタメンを見よ!

一軍半か!今のオリッ強いはずやん。ファームも首位独走中なのも納得。一軍経験者が大半を占める二軍の陣容が、頼もしい。

お。阪神の二軍監督って和田さんなのか。あらまあ随分と、まあ。

オリッの先発は神戸出身の左腕・辻垣高良(3年目21歳)。グリーンスタジアムの近所の神戸市多聞東中卒!
結果は4回2/3で2失点、7被安打で7奪三振???。若者らしいつかみどころのなさが魅力といえば魅力。フォークだかチェンジアップだか、落ちる球は有効ね。

驚くなかれ、阪神の先発は、あの西勇輝。この球場で西勇輝というだけで来た甲斐キャノン。なんで下に落ちてるのか知らんが、さすがの7回1失点。昔の同僚を「おちょくる」ような緩急自在の投球が、さすが。

このファーム試合にニュースバリューがあるとすれば、調整中の森友哉の様子のみ。外野守備は難なくこなしていたが、フルスイングとはいかないのか、引っ張った打球がなく快音は聞かれず。

ベテランも暑い中頑張って、一軍での出番に備えているっ。

最注目は、この日ようやく実戦復帰した太田椋。途中出場で2安打!シーズン終盤の「最後のピース」はやはりこの男かと。

この日のヒーローは大里昴生。2安打とサヨナラ犠飛の大活躍。ショートの守備の動きも実に気持ち良い。また上にいけるといいねえ。

投の大注目は、知らん間に育成に落ちてしまってた中川颯!アンダースロー種保存会も垂涎のこのフォームに、うっとり!3回無失点と大アピール。二桁背番号に戻してあげてえ!

というわけで、結果はこの通り。阪神、エラー多いな。

試合後の阪神タイガース、絶賛反省中。

きっかり3時間。涼風が吹き抜ける最高の環境で、昼間の「暑いねん、暑すぎるねん」ストレスが癒されたファーム試合観察でありました。もっと頻繁に、ここでファーム試合ナイター、プリーズ。真夏の昼の舞洲、ぜったい無理。誰のためにもならんっす。We Can’t Do It!

さて。球団広報のご好意により、試合前練習を撮影取材。

次ページは、専属カメラマンの主観ショットをどうぞー。

 

南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
著書「野球観察日記 スタジアムの二階席から」好評発売中!
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