南 郁夫の野球観察日記(112)野球は野外!豊中ローズ球場に行ってみた!

2022年5月8日 (文・写真/南 郁夫)

知らない球場に行ってみたい。日本中に知らない球場がある限り…シリーズの早くも第二弾。5月になって一軍が相当深刻なことになっているのはわかっとるけど、せっかくいい天気なのでとにかく「お外で」野球が見たいのよんっ。

というわけで、京セラでもらった「一軍・ファーム合体」予定表(これめちゃ便利)を見て前から目をつけていた「豊中ローズ球場」開催のファーム試合に行ってきたぞよ。5月7日(土)ソフトバンク戦。

「豊中ローズ球場」は阪急沿線ということで、この前の奈良の橿原に比べりゃアクセスは楽チン。宝塚線の曽根駅で降りて線路沿いを数分歩けばすぐ見えてくる、なんだか南国ちっくな球場遠景。

それにしても「豊中ローズ」てなんだかロマンチックな響きよね。「東京ローズ」的なバタくさいエピソードでもあんの?と調べてみるれば、そもそもこの球場は1967年に「豊中市豊島(てしま)公園野球場」として開場。老朽化が進んだため1996年に全面改装した際に、豊中市の市花がバラであることにちなんで「豊中ローズ球場」という愛称を付けたんだとか。あ、そうですか。

で。なぜかこの市営球場は「高校野球発祥の地」を懸命に訴えているのだが…。確かに全国高等学校野球選手権大会の前身である全国中等学校野球大会が大正時代に豊中市で始まったのは、事実。んが。開催地はこの「地」ではなくてもう少し北にあった豊中グラウンド(現存せず)だし、正しくは「高校野球」じゃなくて「全国高等学校野球選手権大会」の発祥でしょ?といちゃもんをつけたくなる。豊中市の高校生が日本で初めて野球を始めたわけではないぞよ。

でも豊中市はあくまで「高校野球発祥の地」をアピールしたいらしく、今後この球場に「高校野球発祥の地」を紹介するスペースを設置する予定だとか。いやだから、この地じゃないんでしょ?って性格の悪いいちゃもんを付けるのは、やめよう。私が住む宝塚市も歌劇以外に「手塚治虫」でも観光都市になろうと頑張っているが、皮肉なことに手塚治虫の生まれはこの豊中市なのだ。

この球場でのファーム試合開催はコロナの影響で3年ぶりらしく、場内は結構な盛り上がり。ほぼ満員の盛況である。この日は日差しがきつく、唯一屋根のあるバックネット裏後方は「みっしみし」の入り。

とりあえず、1塁側スタンドに座る。ネットが邪魔にならずスタンドの傾斜が急なので見やすい。球場全体の作りはまあどこの地方球場も同じようなもんだが、ここは両側の外野寄りの内野席が芝生席で、いわゆる外野席はなし。スコアボードはちゃんと名前が表示されるLED式で、立派なもの。

んが!外野の天然芝が全く手入れされておらず、かなりボコボコでひどい。選手たち、足くじかなきゃいいがなあと思ってしまう。割と早く着いたのでオリッの守備練習が見れてラッキー。ちなみにノッカーは松井佑介コーチ。あ、ソフトバンクの二軍監督って小久保かあ。このグラウンド上にいる一番の有名人かもしれん。

参考までにスタメン。

ソフバン:4緒方 5ガルビス 3明石 Dデスパイネ 2渡邊 7増田 8真砂 9笹川 6川原田 P奥村

オリックス:8渡部 4宜保 7来田 6園部 3佐野如 5大里 9元 D若月 2中川拓 P東

ツッコミどころはソフトバンクの外人勢とオリッのDH若月であるが、オリッの1-3番は一軍にいてもおかしくない面々。

さて。試合の前半は両先発とも制球がイマイチで、点を取ったり取られたり。でもオリッの外野陣・渡部と来田のイキのいいバックホームが見れたり、試合としては適度に動きがあって楽しい。イレギュラーしまくる土のグラウンドで両チームのセカンド(宜保と緒方)が好守を連発するなど内野陣も見応え十分。グラウンド環境の悪い中、プロの技術を見せてくれた。

どこのファーム球場にもいる「異様にオリッのチーム事情に詳しい兄ちゃん」が後ろにいて、友達に現在進行中の一軍の(悲惨な)試合状況や佐野コーダイが抹消されたことなどチーム情報を早口で喋ってくれるので、ラジオ聞いてるみたいでありがたい。この兄ちゃん、一軍の試合に通い詰めてるらしく、京セラならあるはずの選手登場曲や場内アナウンス、イニング間の「ハリセーンタイム!」などの効果音を「しーん」とした二軍球場で勝手に口で再現していて、なかなか香ばしかった。

オリッの先発・東(5年目・育成・神戸弘陵学園)は力のありそうな球を投げてはいたが、課題はコントロールか。結局100球以上投げさせてもらっていたので、期待はされている。6回3失点。

3回に出た(アントニー)デスパイネのホームランはすげえ当たりで、上空を横切る伊丹空港に下降していく旅客機にぶつかるぞ!ちう絵に描いたようなアーチ。豊中のお客さんは大いに盛り上がって、ええもん見せてくれたなあと思う。やはり給料が2桁違う選手の打球は違うなと、下品な感想。あの「なんの意味もない」ホームランポーズもしっかりやってくれて、ええ人や。怪我は治ったのかな?

もう一人のソフトバンクの外人ガルビスは目に見えてやる気がなく、ちと気になった。極端な不振で降格されたバリバリの?メジャーリーガー…。日本が合わない=帰りたくなったタイプのお方かもしれない。もう高い給料払っちまったしなあ。知らんけど。

若月のタイムリーなどもあり(ヒューヒュー)6回終了時で4-3とオリッ・リード。ここで、お尻も痛くなってきたので恒例の「場所移動」。外野寄りの三塁側芝生席に行ってみる。芝生席への行き方(バックネット裏スタンドから階段降りて回り込んで…)は「神戸サブ」や「あじさい球場」と同じ。こういうのって設計図のテンプレートでもあるのか?

さて。三塁側の芝生席からじゃ試合見えづらいんじゃ?と思っていたが、そんなことはなくてちゃんと角度があってプレイはしっかり追える。けど、腰を下ろすと視線がネットにかかる。一番後ろで立って見るのが一番いいけど、ずっと立ってることになるな…と得意の「くよくよ思考」が始まったところで、ふと前方を見るとソフトバンクのブルペンに、周囲を威圧する殺気を放つ人物が!二軍にあるまじきオラオラ・オーラを放つそのお方は、元・絶対的守護神・森唯斗ではないか!

見た目が怖え。怖すぎる。夜の街で前から歩いてきたら泣いてしまう。周囲の「今風」の若い二軍投手たちが「超」敬語で森に接しているのが伝わってくる。存在に気づいて集まってきたファンたちも気軽に「森!」などと声をかけられない雰囲気の威圧感。田之上投手コーチさえもなんだか気を使っているし、わざわざこの日のスタメン捕手・渡邉がベンチから走ってきて、何事か森に直立不動で伝えている。そう、次の回に調整登板なのである。

ブルペンで数球だけ不機嫌そうに投球練習をした森はそのまま7回のマウンドに上がり、先頭のオリッ・ルーキー渡部にカッキーンとライト前ヒットを食らう。あらら?まだ調整中かな(後続は抑えた)。にしても渡部くん、ナイス!一軍公式戦初ヒットは意外にも野口くんや池田くんに先を越されてしもうたけど(一軍の状況を見れば)まだチャンスはなんぼでもある!

オリッの7回以降の投手(宇多川、松山)が乱れて試合は4-7でソフトバンクの勝利。あ、宇田川と松山の間を投げた山田は、さすが自責点は0。豊中ローズ球場のファーム戦は、盛況のうちに終了したのであった。試合後は小学生以下の球場内ランニング企画があったようだが、あのボコボコのコンディションで、子供ら足くじかんかったかなあ?とちと心配。

また豊中開催があったら、ぜひ行きたい。この球場、実は試合がつまらなくても必ず私には楽しめる大きな要素があったのだ。

それは…数分に1機くらいのペースで至近距離を低空で通過する旅客機である!すぐ近くの伊丹空港に着陸する旅客機のコース上にあるこの球場は、旅客機観察マニアには最高のロケーション。国内航空会社のほぼ全種類の旅客機が見本市のようにかっこいい音を立てて通過していくのだ。たまたま同好の士だったのだろう、隣のオリッファンの望遠カメラは常に空を向いていたことをお伝えしておく。野球も旅客機も好きだという人(そんなにおらん?)にはおそらく日本一の球場と言えよう。

追伸:入場時、こんなファイルが配られていた。安達選手は豊中市に協力してこんな社会活動をしています。

 


<過去コラム一挙掲載!>
オリックス、元メジャーリーガー、女子野球…ベースボール遊民・南郁夫の野球コラム集。

 

南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
著書「野球観察日記 スタジアムの二階席から」好評発売中!
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