南 郁夫の野球観察日記(38) オリックス・バファローズ2017 早くも総括「現実を見ろ!」

2017年10月12日(文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

日米ともにポストシーズンで盛り上がろうという、野球クライマックスなこの時期。それを尻目に、今年もOCTOBERのMISSIONは地味に「チーム再編人事」ちう、オリックス。とほほである。
シーズン前の私の妄言コラム「オリックス・バファローズ2017 楽観的すぎる 大展望」を読み返していただければ、寂寥感もひとしお。
んが。まあ仕方がない。あきらめがよくないと、野球ファンなど続けられない。

昨年より「2つも」順位は上がったのである。でも…実は選手名鑑的にはいっそのこと最下位のほうが(リーグの真ん中あたりに記載されるよりも)チームが探しやすいんだけど… て、なんてことを! それでは福良さんの努力が!なあ。

オリッのシーズンは終了したし、てことでテレビのMLBポストシーズで「逃避」もいいけど、とにかく2017シーズンを振り返っておこうと思う。これ大事なことね。

■チーム成績
63勝79敗1分:4位(観察者予想:100勝43敗)

えっ。そんなに負け越してるのか!26も負け越した昨年と比べるてるからか、今年はけっこう勝ってた印象はあるのだが(感覚がおかしくなってる?) 3位の楽天が軽く5割を超えていることを考えると、クライマックス圏内などとんでもないわ、ちう現状ではある。とにかく、楽天(8勝16敗)とソフトバンク(7勝18敗)に極端に弱かったのが、どうしようもない。

特にソフトバンク戦となると「お侍さん…」と時代劇の村娘のように無抵抗にやられるのが情けない。せめて、松田が目をつぶっている間に投げちゃうとか、姑息な戦闘姿勢を見せてほしい。
今年の楽天は、Bクラスから勝てるだけ勝った上でソフトバンクと互角に戦ったことによって3位に滑り込んだわけで、ここをクリアしないと先が見えない。ソフトバンクだって、監督の「とっつぁん坊や顔」に代表されるように、城島や松中の昔ほど「おらおら」じゃないだろうに。

■投手陣の明暗
明)
規定投球回数に達したのは2人だけ。
金子 防御率 3.47:9位 12勝8敗(予想:22勝)
山岡 防御率 3.74:11位 8勝11敗

金子は「まあまあ」としか言いようがない。ほんま、まあまあ。彼が菊池(西武)や則本(楽天)みたいな「エースだぜいっ」な態度を見せてくれないと、Aクラス入りは難しい。完投(6回)や奪三振(141:6位)は結構多くて、それなりの成績なのだが、与四球(56個)と被本塁打(21本)がリーグワーストなのだ。勝負所で歩かせて、ポッカーン。あの精度の高いはずの金子が!あなた誰? と言いたい昨今のネコちゃんではある。

一方、山岡はまさにライトニングスター。最後にやや息切れしたとはいえ、ルーキーが1年通してひょうひょうと投げきったってことが、痛快である。すごい。打線の援護さえあれば軽く2桁は勝ったであろうことは、誰もが認める事実。なぜ援護がないのかは、謎のまま。
とにかく、来シーズンも確実に計算できるその実力が心強い。インタビュー時に「予想より疲れている」と言っていたが、1年経験した来季はそこらも軽くクリアするだろう。

あとは8勝(9敗)のディクソン(予想:15勝)が「いかにもディクソン」で、ギリ及第点か。防御率は案外いいし(3.24)

中継ぎ・抑え陣はとっかえひっかえ、頑張ったような気がする。ルーキーの黒木、2年目の近藤、新外人のヘルメンでそれなりの形を作ってくれたのは嬉しかったが、もし精神的主柱の平野(29セーブ:3位)が抜けたら? と思うと「ひゅるるる~」である。ノーモア・コーディエ。

暗)
西(5勝6敗)(予想:20勝)の「ドツボ」シーズンが、痛すぎた。まあそれでも憎めないのが、西の人望。骨折も治ったようだし、来季はまさかこんなことはないと思えば、仕方がない。仕方がなくないのは、他の先発陣だ。ローテの3人目が「誰も出てこなかった」ちうのが、情けない。

松葉(3勝12敗)(予想:12勝)、山﨑2勝5敗)(予想:10勝)…あのなあ。サウスポーが育たない伝統だけを、このチームは受け継いでいくのか(星野さん…さようなら) 「試合中に、二軍落ち」とかそういうの、もう聞きたくない。

■攻撃陣の明暗
明)
規定打席に達したのは3人だけ。
ナカジ .285(7位) 9本塁打 49打点(予想:.270 15本)
小谷野 .277(9位) 6本塁打 47打点
T-岡田  .266(15位) 31本塁打(3位) 68打点(10位)(予想:.350 40本)

ナカジの打率が妄予想を上回ってる!小谷野は計算にも入っていなかった!というわけで、今シーズンはこのFAで来た2選手のしぶとい経験値に救われた形である。とはいえ、爆発力という点ではイマイチ。試合を決める意味では、T岡田の今年の31本塁打はすこぶる評価されるべきであろう。個人的に今年はけっこう球場であの美しい弾道が見れて、楽しかった。も少し、打点が、ね。

今年何とか4位に落ち着いた要因は、規定打席に達していない以下の3人である。
吉田正  .311 12本塁打 38打点(予想:.330  30本)
ロメロ  .274 26本塁打 66打点(予想:.250 15本)
マレーロ .290 20本塁打 50打点

吉田正は故障期間が誤算、ロメロは予想外に「当たり」だったわけだが、何といっても途中加入のマレーロが、この地味なチームにとって明るい話題となった。この2人の外国人選手の上積みで、今年は昨年と比べてチーム本塁打が84本→127本、得点が499点→539点と向上したのである。やはりホームランの威力は大きい。

遅咲き宮崎の頑張り、通年活躍できた若手の大城の成長も、明るい面に加えておこう。

暗)
で。上記に名前の挙がった6人以外の攻撃陣の「目を覆うばかり」のポテンシャルの低さが、このチームが上昇しきれない要因である。球場にいると、下位打線になっていくにつれてファンが白目になっていくのが肌で感じられてしまう。外国人選手やFA選手を押しのけてレギュラーを奪う勢いが「生え抜き」に感じられないのが、寂しい。ブレークを期待した駿太、西野の低迷は特に残念だ。

キャッチャー問題がえらい言われているが、リードだけに責任があるような昨今の論調を私は信用しない。投手のコントロールミスさえなければ抑えれるはずだし。私にとってのキャッチャー問題は若月(.202)、伊藤(.189)のあまりに寂しい低打率なのである。も少し、打ってちょうだい。ヤンキースのサンチェスみたいにパスボールをホームランで取り返すちうのは極端にしても。たぶんリード面で悩みすぎているのだ。首脳陣がいじめすぎているように思う。

期待してたモレルは引退となってしまった。ブドウ畑でつかまえて。

■まとめ
投手陣がルーキー山岡の踏ん張りもあり「そこそこ」持ちこたえた上に、攻撃陣はFA選手や外国人選手が「そこそこ」頑張ってその結果が「そこそこ」の4位、という今シーズンであった。

分析している割には結論が、大雑把だ。それが野球観察者の真骨頂である。

今年、私が気に入らなかったのは、どの試合もスタメンの守備力が著しく低かったこと。私は守備力が低いチームを見たくない。言っちゃあ悪いが、外野がロメロ、マレーロ、吉田正のときに試合中に流れる通奏低音のような「不安」の質感は、優れたホラー映画のそれである。そして不安は現実となるし。攻撃力を重視すれば守備がボロボロ。ここに、このチームの「残念さ」がある。

私は、せめて駿太、武田、T-岡田の外野守備で、試合が見たい。そうはできないチーム事情が、このチームの抱える一番の問題である。駿太と武田を我慢して使えばいいだけ… とも言えるのだが。でもそうなると、「守るとしたら… まだファーストかなあ」という大型選手が内野にひしめき合ってしまう。プロ野球チームの守備に穴があってはいけないに、決まっている。みんなちゃんと打って、守ってほしい。ジレンマだ。

つまり。

「元気な安達くんを、毎試合見たかった」

今シーズンのオリッに足りなかったのは、そういうことである。安達の控え選手も頑張ってはいたが、やはり安達のショート守備のリズム、小気味のいい打撃こそが、オリッの試合を見る楽しみなのである。今年のオリッはものの見事にセンターラインが固まらなかった。これが未だBクラスの要因ということだ。

何か、大いなる力が働いて、安達が完全に復調することを祈っている。
そのとき、オリックス・バファローズに「奇跡」が起こると思うのだ。
その日が必ず来る、と野球観察者は信じています。

 


<過去コラム一挙掲載!>
オリックス、元メジャーリーガー、女子野球…ベースボール遊民・南郁夫の野球コラム集。

 

南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
著書「野球観察日記 スタジアムの二階席から」好評発売中!
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