南 郁夫の野球観察日記(184-1)今年も台風に突撃?福岡遠征記

2024年8月29日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

笑ってくだせえ、私らを。本年度「遠征」にソフトバンク・ホークス帝国の本拠地・福岡を選んだはよかったが、その日がよりによってドンピシャ「行き先に台風が近づく日」(涙)。

昨年の遠征も台風直撃。んなことある?なぜか最近簡単に止まる新幹線に「遠征中止」を覚悟するも、8月27日(火)朝はなんとか動いてた山陽新幹線(東海道新幹線は大雨でストップ)に新神戸から飛び乗り、野球を見るためだけに「非常に強い」勢力の台風に向かって西進する私と専属カメラマンの勇姿!不要不急外出の模範演技。

山陽新幹線って、トンネルばかりでつまーんない。ご存知のように「車窓命」の私が昭和の子どものように窓に張り付いても、盛り上がるのは廣島で出現するマツダスタジアム、徳山駅で突如景色をウルトラマンの舞台に変える石油コンビナート・・くらい。新幹線特有の室内気圧と消毒液の匂いが旅情をそそりはするが。あ。そういや岡山駅直前で敬愛する作家「内田百閒」のペンネームの由来である「百閒川」を発見して、そのときは一番テンション上がる。

博多から地下鉄に乗り換えて、新神戸から3時間ちょいで福岡ドームの最寄「唐人駅」に到着。駅名からして「遠くへ来たもんだ♪」だが、実は駅に着いたからといって球場に着いたわけでは全然ない。私は10年以上前に一度来てるが(専属カメラマンは初めて)、詳細は忘れても「駅からの道:だるい」ことだけは覚えている。最寄駅からのアクセスの地味な辛さは、千葉マリンと双璧。

川沿い海方向に約20分歩いて、汗だくに。台風接近&海が近いので湿度がエグいのなんの。昔は近づくと「ドーン」と赤銅色に見えてきたドームは、いまや周囲にタワマンやら増えてて、なんか埋もれてしまった感あり。

まあそれでも近づくと威容を誇る、福岡・・じゃなくてえーっと今は「みずほPayPayドーム」なのか。ドームの建築面積として日本一のスケール。もちろん竹中工務店。京セラより4年早い1993年の開業ではあるが、見た目は古さを感じさせず、福岡のみならず九州中の野球ファンの聖地にふさわしい、堂々たる佇まいと言えよう。

エントランスには誇らしげにこんな表示!ま、マジック21てなあに?カツラのなまえ?

まだ試合開始の4時間前ちうのに、多くのファンが集結。というのも、この日は「練習見学コース」開催日で、我々もそれに参加するべく早めに到着したのだ。14時半ごろ開場し、このコースのチケットを持ったファンが次々と入場。我々はコカ・コーラシート(いわゆるフィールド席)からホークスの練習を見物できた。地元ファンにしてみればホークス選手の練習姿が見れる絶好の機会というわけで、彼らが「息を呑んで」目当ての選手を見つめる姿が印象的。選手は背番号付きの練習着で、これはファンを考慮した秀逸な気遣いだなと。ま。ほとんどのファンが「周東」を探していたのだが(笑)。

16時前に練習見学は終了し(いったん退出)、その後すぐ試合のチケットで再入場できるので、ビジターのオリックスの練習も見れるのも嬉しい。んが。私は「座席検分」を怠らない。ネット裏には入れなかったのでプレミアムシートはわかんないが、まず練習見学で座ったコカ・コーラシートはクッション付きで座り心地申し分なし。でもあの目線とヘルメット着用ってのが、私はパス。

注目は三塁側の横通路沿いにずらっと並ぶ黄色い「AUTOWAY RECAROスタジアムシート」。座ってみたが、さすがRECAROの素晴らしい座り心地で「楽天の選手気分」が味わえる。座席下のカゴも嬉しい。んが。しょっちゅう前を人が通るので、神経質な私はパス。

いいなと思ったのはS指定席あたりの「グレー」椅子。上の写真の下側にちらっと映ってるのん。前後の「余裕」たっぷりで座面はしっかりしたクッション付きと、私の考える「いい座席」条件をクリア。京セラのそのクラスの椅子とは雲泥の差クォリティ。選ぶなら間違いなく「グレーの椅子、1枚ください!」。それに比べて「グリーン」の庶民椅子は狭いし固いし・・あ。でも。今回はそのグリーン椅子のB指定席(ほぼ外野)なんだとか(笑)。人気球団ゆえ、なかなかチケットが、てことらしい。(台風接近のこの日も満員御礼)

とはいえ、まあ。なかなかに試合を見やすい席ではあったよ。ん。試合?試合といえば、オリックス「いつでもどこでも打たへんなあ」はい以上。そんだけか。どうせ負けならもう少しホークスに「どすこーい」と派手に打ってほしかったケド。まあ、今日見に来たのは、ホークス聖地の様子なので。あは。

みずほPayPay。表面上は綺麗でスコアボードなど演出構造部は最新ではあるのだが、肝心の内部構造がさすがに古い。京セラと同じ状況か。蛍光灯っぽい照明に浮かび上がる鉄骨は「ディストピア」を想起させ、人工芝にかなりの痛み。会議室みたいな「ホームランテラス」のため削られた左右中間がかなり狭く(京セラより6メートルも!)これはいかがなものか?この日の正木のホームランはそのおかげ。あといささか過剰な場内演出に音響設備が追いつかず、ちょっと耳障り。この地はアイドルの本場でもあるので?その手の踊りや曲調ばかりなのもちょっと。まそれは個人の趣味の問題なので。

でも。そんなことはどうでもよくてっ。福岡の、というか九州のファンはこの球場で実に楽しそうに熱心にホークスを応援していて、そのことが実に気持ち良かったという事実。聞こえてくる方言も(大阪弁と違って)耳心地よいし。いちばん「心温まる」のは、制帽のようにホークス・キャップを被った少年ファンたちがたくさんいて「声をかぎりに」応援していたこと。京セラでは見ない光景。九州の子どもはもちろん初期設定が「ホークス・ファン」なのだ。

というと。どことは言わないが関西某球団との共通性も感じるが、うーん何かが違う、雰囲気が。何かな?と考えるに、熱心を通り越して「ややこしい」ファンが一切見受けられないことかなと。応援団は古風だがなぜかうるさいという感じではないし、ヤジなどネガティブ表現が一切なくクリーン。決して関西某球団がそうだと・・言ってるか。

私は関西で見るホークス・ファンのイメージで、福岡のファンて「バリのぼせもん」と「思うとったが」、実際来てみたらピースフル。ビジターファンも快く受け入れる許容を感じるし、子供からお年寄りまでみんな野球そのものを愛する方々であることが伝わってくる。生活にホークスが自然に根付いてる、そういう感じ。あと個人的にホークス女子てみんな「手足長くて頭小さくて首長いな」と感じたが、これ地政学的に「いいとこ」ついてるはず。福岡は「よかとこ」ね。方言あってますか?

あと。何かにつけスポンサーがメジャー。なんせドーム名が「みずほ」で「PayPay」なので、お金の匂いぷんぷんやん。フィールド席は「コカ・コーラ」だし(京セラは?)、ラッキーセブン演出の提供は「セブン・イレブン」、ホークス投手が三振奪ったときの演出がこれである。

福岡移転が1989年、ソフトバンクになったのが2005年。ホークスは九州経済を代表する球団として(野球の実力はもちろん)商業的に大成功を収めている、そのことをひしひしと実感した次第。ドームも球団所有だし。

試合終了後も華やか。夜のドーム周辺はまた昼間とは違う顔を見せて、ベタな表現だが(大阪湾岸ではとっくの昔に失われた)海沿いバブリーを感じさせてもくれる。アジアに向かって開かれた福岡の、開放的な将来性をも。

試合後のグッズショップでは多くのファンが散財していたが、個人的には「ジャポニカ学習帳」に感心。なぜに甲斐?と思ったが、大分出身で育成上がりの甲斐は九州の子どもにとって立志伝ヒーローなのだろう。地元の昭和建設は「甲斐の家」なんちうのを売り出してるそうだし。うーん、懐かしき「成功者」の匂い。

さて。実はこの遠征、次の日はタマスタ筑後で帰りの新幹線の時間ギリギリまで二軍戦観察!の予定だったのだが。雨で中止の可能性あったのと近づく台風で新幹線いつ止まるかわからん状況に私が「ビビって」しまい、早めに断念。専属カメラマンは後ろ髪を「高橋光成」並みに引かれていたが(0勝10敗)、なんせ私は濡れるのと足止めが嫌だった。結局二軍試合は強行されたようで(7回コールド)、ちょっと収まらない気持ちもあるケド。

遠征は楽しい。でも台風が絡むとめちゃややこしい。当たり前だがそういうことである。台風のない季節にドーム球場で。これが遠征の基本安全策なのか。うーん、冒険心が失われているような気もする。深夜特急!(意味不明)

とにかく駆け足で福岡を満喫した、つもり。なんだかんだで道中「名物」は食ったし!

さて。次ページは、はいつものように練習見学&試合中に撮影した専属カメラマンの写真集を、どぞー。

 

 

 

南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
著書「野球観察日記 スタジアムの二階席から」好評発売中!
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