南 郁夫の野球観察日記(180-1)実は激戦!パ・リーグの現在地

2024年7月8日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

2024年シーズンなかば、パ・リーグに重大な異変が起こっている。異次元の強さで独走するソフトバンクと異次元の弱さで逆走する西武が集団から離れすぎ、ついに上下の「別次元」に移動。その結果リーグは事実上分裂し、「ソ・リーグ」(ソフトバンクのみ所属)、「ラ・リーグ」(西武のみ所属)、そして残り4チームの「新パ・リーグ」構成となってしまったのである。

そう考えれば、「新パ・リーグ」はスリリングな状況。現在調子が良すぎる?首位ロッテが若干ゲーム差をつけてはいるが、続く楽天、日本ハム、オリックスはダンゴ三兄弟(古っ)。まだ半分残っているシーズンを、ソ・ラ・リーグとの「交流戦」を挟みながら上位2チームを目指しての激戦が続くこと間違いなしである。

7月6日(土)久しぶりの神戸開催はそんな新パ・リーグ同士の一戦。この時期とは思えぬ猛暑の中(前回の神戸は寒かったのに)、さすが人気球団同士の対決とあって超満員。カードゲームのように選手のアクリルスタンドの束を見せ合う女性ファンたちに隔世の感を感じつつ。球宴選出選手だらけの「ハムスターズ」を迎えて、新パ・リーグ最下位(つまりこの時点で5位)のオリックスが昨年覇者の意地を見せるのか? 興味津々の試合は… なんだかとっても野球の動的魅力に溢れた、クロスプレー続出の好ゲームだったのである。

ハムスターの一員・水谷瞬の三塁打で派手に始まった試合は、いろんな事件に満ちていた。まずはもちろん、この日スタメンに抜擢されてヒーローとなったオリックスの3年目・大里昴生#64の攻守にわたる大奮闘!一軍初ヒット、初打点、ファインプレー。しかし牽制死や判断ミスの大暴走も… 彼一人で試合をひっかき回して「てんやわんや」して、見事に爪痕を残してくれた大里。ニューカマーの出現は、いつだって嬉しいものだ。

見るからに元気いっぱい!ミスも前向き。大里が発するイタズラ小僧のようなパワーは強烈な印象を与え、試合後の仮設売店でも彼のユニを必死に探すファンが続出したが、残念ながら「ないわ。そらそうかあ」であった。昨年も数試合に出場はしたけどヒットは出なかった大里。この今季初の大抜擢をモノにしたのは大きい。インパクトはオッケー。でもプロの競争は激しい。彼の挑戦は始まったばかりでもある。

さて。この日は両チームとも積極的に走る姿勢を見せた試合で、「世にも珍しい」ラオウの盗塁が宗のタイムリーに繋がったり、ゲームに「動き」があって楽しかった。その分?牽制死や刺殺も珍しいほど多発して、それも嬉しい。私はミスのない試合なんて好まないので。特に、一塁走者として田宮裕涼のユアビームに刺された森友哉が、捕手として帰塁の遅れた二塁走者の田宮を刺す(トモビーム?)という、世にも珍しい「両チーム捕手刺し違え」には大興奮。お互いの意地、あっぱれである。

見どころ満載だったこの試合。でも私の心に最も刻み込まれたシーンは、2回裏に放たれた「頓宮の凡フライ」なのである。高く平和に舞い上がったボールが西日に染まった瞬間、なぜか「郷愁」に近い感情と充足感が湧き起こって「きゅん」とする。チャンスで凡フライなのに。いまだにそのオレンジのボールが私の何を刺激したのかわからないが、こういうシーンはやはり野外でしか起こり得ないだろう。こういうのも(いくら暑くても寒くても)私が野外球場が好きな理由である。

それにしても日本ハムは、ちょっとアレか?失速か。水谷以外の打線の調子がボトムなのと投手が持ち堪えられないのと守備のミスが出る悪循環…。なんとかエスコンでのハムスターまでに調子を取り戻さないと!新パ・リーグを盛り上げるためにも。まあでも「これから」の若い選手が多いせいかベンチの雰囲気明るいので、ちょっとしたきっかけでまた風向きは変わると思う。

昨年はハムを追うオリッなんて構図は考えられなかった。そういう変化を喜んで楽しみたい。新パ・リーグは何が起こるか最後までわからない。目が離せない熾烈な後半戦は、始まったばかりなのである。

それではいつものように、次ページは専属カメラマンによるこの試合のフォトアルバムを、どうぞー。

 

南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
著書「野球観察日記 スタジアムの二階席から」好評発売中!
https://kobe-kspo.com/kspo/sp145/

 

 

Twitter でK!SPOをフォローしよう!