南 郁夫の野球観察日記(174-1)今季2試合目の観察結果は、まさかのデジャブ!

2024年4月25日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

レフト線に痛烈なサヨナラヒットを放って飛び回る、紅林弘太郎!つい最近、見たことのある光景である。デジャブか?
2回目の現地観察は、またもや紅林のサヨナラヒットという、驚くべき結末に。4月24日(水)対西武戦@京セラ。びっくりするような展開を見せたこの試合の劇的なエンディングもまた、この人気者の一振り。2週間前とは劇的に「髪型」が違うけどな。

大騒ぎの一部始終を、どうぞ。アクエリアスをこんなふうに使ってはいけません。

前回のサヨナラヒットで開幕以来の打撃不振を脱した紅林だったが、その後の試合で1試合3エラーをやらかして「本人の意思で」クレ坊主に。なにかと不可解なキャラの彼だが、3エラーはさすがにこたえたのだろう。そのとき「絶対に取り返せるから!」と声をかけてくれたのが宗佑磨だとか。その言葉通り、難なく取り返した紅林のメンタルの強さ、スケールの大きさ、周囲に笑いの絶えないキャラ… クレ坊主の今後が末恐ろしい。間違いなく大選手になるだろう。

さて。「絶対に取り返せるから!」と紅林を励ました宗にとって、この日は「なんて日だ!」と叫びたくなるような試合だったろう。自分の言葉を自身に叫ぶことになるのだ。初回、お馴染みのファインプレーで順調にゲームに入ったは良かったが、5回裏に手痛い送りバント失敗に続き、なんと牽制で刺される大失態を犯してしまうのである。

しかし宗は「絶対取り返せる」教の教祖である。7回裏のチャンスで打席に立つと、その時点ではダメ押しと思われたタイムリーをライト線に放つ。棒立ちアギラーの守備にも助けられたとはいえ。がしかし、2塁を欲張ってアウトでチェンジ!森のホーム生還とのタイミングがめちゃ際どくて、危なかった。これは大事には至らなかったが、宗にとってジェットコースターのような試合だったのではなかろうか。

ジェットコースター… 

3-0のオリックス楽勝ムードで最終回のマウンドに上がった守護神・平野佳寿が、メリーゴーランドよりジェットコースターを好む平野劇場の天才シナリオライターであることを、我々は忘れていた。前日の三者凡退でのセーブを「物足りない」「劇場じゃないじゃん」と感じたファンの感情が、この稀代のストーリーテラーに伝わっていないわけはなかったのである。

それは… 誰も想像がつかない息をもつかせぬノンストップ・ホラーであった。荷物を片付けはじめていたオリッ・ファンに約15分間声にならない悲鳴を上げ続けさせた今宵の平野劇場の筋書きは、こうである。

中村:ホームラン
佐藤:三塁打
平沼:タイムリー二塁打で1点差
2アウト後
金子:タイムリーヒットで同点!

追いつかれとるやないか!
こんなシナリオあり?これも平野劇場?
はい、もちろんです。「追い越されない」のも平野劇場の演目。これが紅林の劇的なサヨナラと10回を投げたマチャドの来日初勝利につながって、長い目で見れば正解なのだ。平野先生のシナリオに間違いなどないのである。エスピノーザだけごめんやけど、ご自分のセーブ数などどうでもいい境地。オリッ・ファンならとっくに分かっているだろうけど。

というような終盤の怒涛の展開ですっかり消し飛んでしまったけど、この試合の本当の値打ちは両軍先発、いずれも7回まで投げたエスピノーザと武内夏暉のスンバラしい投げ合いにあったことを忘れてはならない。2人の「高品質」な精度の高いストライク先行の投球は実に小気味よく、心地が良かった。貧打線はしんどいが、こういう投手戦ならいつまでも見ていられる。
エスピノーザはマジで「付け入る隙がない」ピッチングで、今後が本当に楽しみ。

武内には間違いなく大投手になる風格があり、未来がキラキラしている。異様に牽制が上手いのも大きな武器だ。

初登板で背番号14を披露した宇田川優希の復帰もファンを沸かせた。ボールの力は戻っているようで、ひと安心である。

さて、盛りだくさんだったこの試合。実は専属カメラマンがチケットを友人にいただいたので行かへん? で、たまたま見に来ただけで、平凡な試合ならコラムを書く気もなかった。それがこんな面白い試合になって感謝である。で。後で気がついたのだが、頂いたチケットにはちゃんと「暗示」が印刷されていてちとびっくり。

いろんなもんが見れた試合だったが、最後に最も驚くべき事実を記しておこう。8回に登板した西武の投手・ヤンの背番号は00やん。ん?オリッ先発のエスピノーザの背番号は00やん。ん?

プロ野球史上、背番号00の投手が「2人」投げた試合なんて、絶対ない。と思う。たぶん。
知らんけど。調べへんけど。
調べようないけど。笑。

次ページは、専属カメラマンによる写真集。現地の雰囲気をどうぞー

 

南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
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