南 郁夫の野球観察日記(172-1)くふうハヤテベンチャーズ静岡を見てきた

2024年4月6日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

今年からプロ野球ファームの東西それぞれに新球団が加わったのは、ご存知の通り。ウエスタンリーグには「くふうハヤテ」なるチームが加わり、5球団だったリーグが6球団となり運営が円滑になる、らしい。でも。1軍のない2軍チームて、なあに? 成立すんの? 試合になんの? いろんな疑問を抱えたまま、とにかく実物を見に舞洲へ。4月5日、杉本商事BSへGO!

そもそも、球団名が謎。調べれば「ハヤテ」はオーナー会社で有名な気鋭の投資会社とな。私は円高と円安の違いもわからないので知らん。で。「くふう」はスポンサー企業の情報通信業。両者ともベンチャー企業っぽいので、ベンチャーズ?テケテケテケ♪てか?(年寄りしかわからない)行政も巻き込みたいので「静岡」もつけとこっと。なるほど大人の事情で新規参入チームの名前は、長いわけ(イースタンの新規参入球団名はもっと長い「オイシックス新潟アルビレックスBC」)。

球団を作って二軍とはいえプロ野球に参画できるレベルの選手を雇って環境を整え、遠征費用も出して一年を戦うのだ。とても勇気ある参入だし、お金があっても野球への愛がなければできない話だろう。その情熱にまずは賛辞を送ろうではないか、とか言いながら、球場に着くまでは「遠征は徒歩?」「グラウンドにごろ寝?」「米持参?」「キャッチャーは相手チームに借りる?」とか失礼な冗談を飛ばしていたのである。

んが。球場に着くと(もちろん)チャーターバスは停まってたし、グラウンドにいる「くふうハヤテ」の面々は、なんだかレジェンドチームのような佇まいではないか!フィールドオブドリームスや。

新規参入チームということで、ド派手に「ちゅ~るちゅ~る」とか書かれたユニを想像していたのだが、このシックな装いはなんということか。これだけでオーナーの野球センスがわかるというもの。ただ、名前を覚えてもらうためにも背中に選手名はほしい。ひょっとして経費削減でワンサイズ未来永劫使い回し?というのは、背の低い選手の背番号がえらい下になってるので。

さて。当たり前だが試合前の練習は「内野手トンネル」「外野手バンザイ」ということはないレベル。が、ちょっとした送球や連携のスピードがプロのレベルとはちょっと違う? と感じた。必死で選手名鑑を調べれば、プロ野球や独立リーグ経験のある選手が大半だし。オリックスの宜保翔#53の兄、宜保優#66もいるし。みんな若いし潜在能力は高そうなので、細かいところはこれから、ということなのだろう。

これまでの戦績を知っていたので(試合開始前時点で2勝12敗)試合になるんやろか?という危惧もあったが、なかなかどうしてゲームが始まってみれば、一軍と「真逆」の開幕ロケットダッシュを果たしている「無敗」オリックス二軍相手に、終盤追い上げて結果は「3-5」となかなかの善戦ぶりであった。ちょっとした展開によっては勝てそうな雰囲気もあった。十分対戦相手になっている。各選手とも躍動感あり、高揚感のようなものも伝わってきて好ましい。名前覚えられないけど。

「くふうハヤテ」の選手にとって、願ってもない環境のはずである。自分の元いた環境に比べれば毎日がキラキラしていることだろう。まぎれもなく「プロ野球」の世界にいるのだから。スタンドには少なからずこの新規参入チームのファンもいて、確かにこういうまっさらのチームの選手を覚えて応援するのは楽しいかもと思った。神戸にこんなチームができたら、本拠地がグリーンスタジアムなら、私ももちろん、ねえ。

しかし。彼らには「プロの二軍選手」ではあるが「プロ野球チームの二軍選手」ではない、という冷酷な現実がある。そこがなんとも、こちらまでモヤモヤする状況なのである。懸命なプレイの先にあるのはあくまで「他チームのドラフトにかかる」夢であり、自分のチームの一軍に呼ばれることはない。一軍がないのだから。そしてチームにしたら、いい選手はいずれいなくなるはずなので強くなることはありえない?このへんの構図の矛盾を考えると、頭がクラクラもする。

もちろんそんなことは重々分かった上で、選手もチームも「挑戦」しているのだ。モヤモヤクラクラしている場合ではない。そんな彼らを応援したいし、見守ろう。挑戦は始まったばかりなのである。いずれ一人でもNPBにドラフトされる選手が出れば活気づくだろうし、チームの立ち位置も見えてくるはず。いつか私も、ちゅ~るスタジアム清水の取材にも行ってみたいし・・と、こちらの夢は自分次第。

一つだけ気になるのは、チームのロゴが広島カープの球団旗にそっくりな「H」なこと。なのに、スコアボードの旗は「HAYATE」なのはなぜ?でもカープは球団旗だけあのデザインでチームロゴは全然違うしね、球団旗の定義ってようわからんー。

次ページは、オリッファンのために専属カメラマンによるファーム・プチ写真集をどーぞ。

 

 

南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
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