スポーツイラストレーターT.ANDOHの「OUTSIDER’s ReCALL」(63)10.19の激戦!因縁のロッテ戦

2023年10月20日 (イラスト、文/T.ANDOH)

こんにちは!スポーツイラストレーターのT.ANDOHです。
クライマックスシリーズのファイナルステージは、10月19日の試合で千葉ロッテマリーンズが逆転勝利をし、2勝1敗で週末の決着となりそうです。

19日の試合は激闘でしたね。
初回から幸先よく3点をリードして田嶋投手を援護したと思えば、中盤にロッテが3点を返して同点。
そして7回に、オリックスからロッテに移籍した澤田投手からセデーニョ選手が2アウト1塁の場面で振った決死のフルスイングがぎりぎりスタンドに届き勝ち越しの2ラン!
宇田川投手の好投などもありオリックスの勝利を誰もが確信して臨んだ9回。
抑えの平野・山﨑颯一郎選手を温存して送り込まれた山岡投手がまさかの救援失敗!

千葉ロッテマリーンズが1勝をもぎ取った試合となりました。
「ちょっと引っ張りすぎたかな」
と、中島監督は田嶋投手について回顧しました。
これまでは空気を読んでスパッと切り替えもしてきた中嶋采配でしたが、9回は山岡投手で戦いました。

こういうときもあります。
勝負という世界で全責任を背負って一か八かに挑むチームの難しさ、加えて短期決戦の恐ろしさを実感しましたね。
ロッテにとっては、ファーストステージの勢いでぐいぐいと攻めたいところ。
ところが、オリックス、バファローズというチームにとって「ここぞ!」という時のロッテは、さらに怖い因縁がありました。

奇しくもこの日は10月19日。
パ・リーグを応援している方には、よく耳にする言葉かもしれません。
「10.19」
いまオリックスを応援している若い世代の方は、中身を知らない方も多いと思いますので、少しお話ししましょう。

1988年のシーズンでした。
この当時のパ・リーグは清原選手、秋山選手、工藤投手といったタレント軍団で圧倒的な勢力を誇ったのが西武ライオンズ。
西武は最大8ゲームの差をつけながら首位を走っていたのですが、9月には近鉄バファローズが驚異的な快進撃を巻き起こし、1.5ゲーム差で10月に入ります。

近鉄はさらに連勝をし、一旦近鉄が逆転首位となってマジック14まで点灯したのですが、そこから西武と近鉄には雨天順延となった残り試合の差がある中で先に西武が全日程を終了。
その時点でもまだ近鉄にはマジックがついていたのですが、10月18日の時点で残されたロッテオリオンズ(当時)との3試合を全勝しないと、西武が逆転して優勝という状況に追い込まれていました。

10月18日は近鉄の勝利。
10月19日はダブルヘッダーで試合が組まれるという状態の中、引き分けも許されない近鉄バファローズの長い1日が始まります。

1試合目は近鉄が8回、9回に逆転、勝ち越しと劇的な試合を展開し勝利。
たった20分後に始まるという過酷なスケジュールで第2試合がプレーボール。この試合もロッテが先制するも近鉄が6回には追いつき、7回には吹石選手(吹石一恵のお父さん)と真喜志選手のホームランが連発し勝ち越し!
しかし7回裏にはロッテにも2点を取られ、再度同点。
8回にはブライアント選手が再び勝ち越しをすると、試合を締めるつもりで登板した当時の左のエース、阿波野投手がロッテ高沢選手にソロホームランを浴び、再度同点のがっぷり四つ。

試合は意外な展開で終了を迎えます。
この当時はリーグの規定で「試合時間が4時間を越えたらそのイニングで試合終了」というルールがありました。
そこにきての9回、走塁クロスプレーをめぐってロッテ有藤監督が抗議を行い時間を使う場面がありました。
そのせいばかりではないですが、延長10回まで進んだ両チームでしたが、10回表の攻撃が同点のまま終わった時点で時計は4時間を経過。
西武に逆転優勝を与え虚しく10回裏を守る近鉄ナインの姿は、日本中の野球ファンの心を引き付けたのでした。

試合は大阪のABCでだけ中継放送されていたのですが、試合展開と視聴者の声がテレビ朝日に届き、異例のゴールデンタイムで急きょ差し替え放送。もちろん、インターネット速報なんてない時代。
10時からのニュースステーション内でもずっと中継を見守るという展開となって、社会現象になりました。
この試合を見て近鉄ファンになったという方は、いまでも40代以上のファンを中心に根強く残っているんですよね。

この「10.19」は、どう整理すればよいかキリがないほど語れる話ですが、優勝争いから外れていたロッテには胴上げ阻止の意地と、8回に同点ホームランを打った高沢選手には首位打者がかかっているという、そんな熱い思いがロッテというチームの活力にもなっていました。

ロッテとの因縁は続きます。
今度はオリックス・ブルーウェーブの話。

イチロー選手の大活躍で阪神淡路大震災からの復興の象徴となった1995年の初優勝。
この年、マジック1で迎えた神戸での3連戦。
相手は千葉ロッテマリーンズ。
ボビー・バレンタイン監督を擁して2位の快進撃を見せたシーズンでした。
地元神戸で胴上げをしたいオリックスをロッテはなんと3タテにしとめて本拠地での胴上げを阻止!
このとき2位だったロッテとはいえ、逆転優勝はもうない状態でしたが、初優勝への緊張とロッテの勢いが、この3タテを起こしたんですよね。

10.19という日にちを重ねて語った昨日の試合を振り返ってみれば、終盤のオリックスの攻撃は、なんとかしたいというオリックス打線のはやる思いが打球を上に上げる…。
いずれも勝負強くチャンスをもたらすシーンも見られましたが、9回の逆転劇は、ロッテらしさのあふれる攻撃となりましたね。

ロッテというチームが、2つの前身球団の優勝にも影響をもたらしたという因縁も感じて10月19日の試合を最後まで見守りました。
短期決戦というなか、いずれのチームにもチャンスが与えられている状況。
少しの判断や1つのプレーが大きな影響をもたらすシリーズです。
2位争いからファーストステージと緊張感のある中で戦ってきた千葉ロッテマリーンズは、あなどれない…!
クライマックスシリーズの戦いに目を離さず、注目ですね!

 

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スポーツイラストレーターT.ANDOH

おもにスポーツを題材にしたイラストやデザインの創作で、スポーツ界の活性に寄与した活動を展開中。

プロ野球やプロバスケBリーグのチーム、選手にイラスト提供。

プロ野球選手には、伏見寅威選手(北海道日本ハムファイターズ)、中川圭太選手(オリックス・バファローズ)にロゴデザイン、イラスト提供中。

名古屋在住にも関わらず20年来のオリックスファンであり、その由来とイラストレーターの起源は神戸にある…!?

 

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