南 郁夫の野球観察日記(145-1)話題の新庄ユニを見てきた!

2023年5月21日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

野球ファンなら、誰でもユニフォームに対するこだわりというか、好き嫌いがあることと思う。それぞれの記憶や感情、感性にも関係する話なので、実にデリケートな問題だ。単純に「応援するチームのユニフォームが好きなだけ」な人には迷いがなかろうが、たとえばどこのファンでもないMLBを見るときなどは、カッコいいユニのチームに目がいくのではなかろうか?

じゃあ、カッコいいユニって何?ということに正面から果敢に切り込んできたのが、ご存知、話題沸騰の新庄監督デザインの「NEW AGE GAMES」ユニフォームである。もちろん私も初めて見たときは「え?」となった側。そっち?というか「あんたの私服やろそれ」というか。現役時代の彼のユニ着こなしセンスがカッコよかったので、そういう方向を期待した私がアホだった。

学生の頃、おしゃれだった奴は「制服」というベースを校則の範囲内でカッコよく崩すことに長けていたのであって、新庄も伝統的な阪神ユニに大胆に赤いアンダーシャツやらリストバンドをのぞかせていたプレイ中はカッコよかったけど、球場を去るときの私服は「?」だったではないか。そういうことなのである。

それでも、賛否両論がわき起こるということはインパクトは満点。普通に伝統的なカッコよさを求めたデザインなら、ここまでの話題にはならなかったろう。新生ファイターズをアピールする素材としてこれほど「ぶっちぎれた」ものを持ってこれるところが、新庄の新庄たる所以。ていうか、新庄よりすごいのは日本ハム球団なのだが。

そんな話題満点のユニを生で見れる貴重な機会ということで、519日(金)京セラの日本ハム戦を見に行ってきた。実際に目にすると、う~んそこまで奇抜ではないかな?という印象。生地がペラペラではないので、質感は高い。赤黒の配色こそ見慣れないが「ありえない色」ではないし。がしかし、歴史的に節操なくチームカラーを変えてきた日本ハムがやっと「水色」イメージになってきたときにまた脈絡なく関係ない色を使うんかい、とは思うのだ。

で。カッコいいんですかこれ?と言われると… やはり微量の「道化感」と「無理やり感」が否めない。そしてこのユニ、集団になると何らかの新興の「サービス業」(車関係とか物流関係とか)の人たちにやはり見えてしまう。若社長のこだわりで「自分でデザインした作業服を全員に着せちゃいました」あるいは「ワークマンで定番じゃなくてイキった方で揃えちゃいました」みたいな…。

単体で見れば、うん、当たり前だが社長は似合ってる。でかいエリは自分が胸をはだけたときにVゾーンが効果的なように、さらに頭をちっこく見せるために付けたかったんよねえ、たぶん。アンダーシャツなし、ネックレス・チャラチャラが正解の着こなしのようだ。

まあそれでも胸のロゴやらVラインとか、トータルで見たら悪くはない。「ニトリ」マークは本当はつけたくなかったんだろうけど。

はい、今度は後ろ。ここに大問題発生。おそらく地球初の「ローマ字フルネーム表記で背番号ぐるり」システムは、斬新を超えて狂気だ。

たぶん新庄はデザイン会議の最後の方に口頭で「え?名前?フルネームかなぁ。日本人なんだから苗字、名前の順がいいっしょ。え?まあそこら適当に」程度の指示を口頭で伝えて、借り物のランボルギーニで立ち去ったに違いない。その結果「上川畑がとんでもないことになるんですけど」とか「縫い付けのおばちゃんが深夜に悲鳴をあげる」なんてことは考えない、それがあの人。

唯一(!)これはカッコいいなと思ったのは、ズボン右裾部分の番号表記ね。なかなかのアイデアなのだが、ソックスの着こなしがオールドスタイルの選手の場合は番号が見えないし、そうでなくてもビラビラになって視認しにくい、ちう欠点もあるが。

帽子の斜めFマーク、どうすか?まっすぐでええやん!そこは。こんなシーンのときに何だか選手が「れれれ?」と滑稽に見えてしまう。

とまあ、いろいろ無責任な感想はあるのだが、試合に入ってしまえばそれほどの違和感もないし、各選手が「エリ、邪魔やなあ」という素振りを見せることもなく、奇抜すぎて試合が目に入らないというほどのことは、なかったのである。それくらいに、このユニを着たハムの選手たちが躍動していたからでもある。

そう。注目されているからか、選手たちが何だかイキイキと見えるのだ。加藤貴之の見事な投球、そして新顔ハンソンの活躍などで、この日はハムがオリッを零封して快勝。このユニになってから、チームの調子が上向いてきたのだ。めでたい。

はーい、勝利の一本締めやで~!従業員全員あつまれ~。

魔法のユニのようにも思えてきたこの新庄ユニであるが、選手でいちばん似合っていて難なく着こなしていたのは、この日のヒーロー・ハンソンであった。

う~ん、ソウルトレイン!

でかいエリ、赤黒の配色は「ブラック・ピーポー」によく似合う。まあとにかく、いろんなことをやらかしてくれる新庄&日本ハム球団にこれからも期待したい。え?これのレプリカユニ?いらんけど。

さて。次ページはお口直しに(?)めっちゃ平凡なユニに見えちゃう!けど、爽やかやん。オリッ・ミニ写真集。

 

南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
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