南 郁夫の野球観察日記(115) オリックスvs中日 交流戦@京セラ初戦は、三ツ俣・凱旋ナイト!

2022年5月29日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

今年もセ・パ交流戦が始まった。オリックス・バファローズが得意な(はずの)交流戦が。特に昨年は交流戦の優勝で弾みがついて、ついにリーグ優勝を実現したわけなのでっ。ファンとしては過剰な期待をしてしまう。が、そううまくことが運ぶのかえ?と思っていたらまずは江戸で巨人に負け越し。そして大坂にお迎えするのは、いつも質実剛健で冗談が通じなさそうな、尾張の中日ドラゴンズさん御一行である。

うーん、集まった中日ファンの皆さん、なんだか真剣でタフそうだぞー。なぜか口数が少ないぞー。ちょうど「オリ姫デー」が始まってて球場のあちこちに貼られてる「にちゃにちゃ」笑ってるオリッ選手のポスター… 中日ファンの皆さんには「しらっ」とした目で見られてるぞー。気のせいかもしれんけど。

さて先発は、田嶋と大野雄大。大野雄大くらいは私でも知ってるもんと選手名鑑調べたら、年俸3億円。それなら一流投手やから、やばいやないかって… 選手名鑑で年俸だけ見るのは下品なのでやめたほうがいい。が、選手のポテンシャルを知るには一番早いのだ、これが。もちろん大野は過去ノーヒットノーランもやってるし、今年は完全試合未遂までやってることは知っておる。

ちなみに。我が専属カメラマン(京都外大)はこの大野雄大(佛教大)と大学野球の京滋リーグで一打席だけ対戦したことがあるそうな!結果はなんと… キャッチャーゴロ。ピッチャーに届くゴロくらいは打ってほしかったが、とりあえずバットに「かすり」はしたんだね。それから約10年、かたや3億円… もう下品な話はええって!

その大野雄大、立ち上がりはコントロール不安定ながらどんどん調子を上げて、なるほど次第に堂々のピッチング。なんというか、マウンドさばきに一流感が漂ってて「これはええ投手や」と一目で納得させられる投球なのである。最初から完投が頭にある、格上ピッチング。案の定オリッは決定打を奪えず、いきなり結果を言うが、B1-4Dの完投を許してしまった。完敗である。

オリッ・先発の田嶋は立ち上がりこそズバズバ素晴らしかったのだが、4回にいきなりビシエドに2ラン、6回にも追加点を与えてこの日はややご乱調。でもまあ「次は頑張ってほしいな」と温かい言葉で背中を押そう。なぜなら、試合前の田嶋の登場PVに「温かい言葉で僕の背中を押してほしい」て出てくるからさっ。この登場ビデオにはファンの間では有名な「スピ田嶋」の言霊が満載で、必見である。

「一人だって思って振り返れば一人じゃなかった」

「自分の心が豊かになることをつぶやく」

「読める結末なんて興味ない」

「見えないから戦う」

田嶋くんは、投げる詩人なのだ。

さて。この試合に勝利した中日の打の功労者の一人は、足の故障で途中退場した石川の代わりに出場した、三ツ俣大樹だったのである。

2010年オリックスのドラ2(ちなみにドラ1は後藤駿太)で、ほぼファームで過ごした4年目途中にトレードで中日に移籍。そこからまた長いファーム暮らしを経て、ようやく昨年からチャンスを掴みかけている30歳12年目年棒1200万の、あの三ツ俣が!タイムリーを含む2安打と、オリッの守備の隙(佐野くんがボールに恋をして離さなかった)を突いて本塁を陥れる好走塁と、大活躍。

正直、オリッでは一軍出場がほとんどなかったのでプレイの記憶はなかったが、こういうベテランの活躍にはことさら心を打たれるではないか。なあ、駿太! 三ツ俣には中日ファンの盛大な声援が浴びせられていて、そんなところも嬉しくなった。あと、尾張出身・ルーキーの鵜飼くんは非常にパワフルな打撃で、非常に楽しみである。

中日ファンって、派手な応援はないしなぜか談笑とかしないし静かなんやけど、例えば最終回の代走に出てくるような控え選手への惜しみない拍手の熱量が凄いとか、はしばしに実直なチーム愛が感じられて… 熱いなと。それも含めてチームカラーってやつやねえ。

オリッの打線は、この日は大野の前に沈黙。それでも2安打と好調な中川を置いてマッカーシー大佐が9回裏にバット折りながらタイムリー打って完封を免れるのが、やっとこさ。

打てる雰囲気があったのは、8番野口と9番太田くらいだったかな。2安打した野口の鋭いバッティングは際立ってて、紅林やばいぞと。5回にその野口を置いて太田が得意の長打を放ったんやけど、野口が本塁で憤死。セーフなら1点差に迫ったところなので、これが痛かったわあ。この日は2階席に座ってたので(GSじゃないのでノットヘブン)問題のプレイの「全貌」が見渡せたので、アウトになった要因を列挙してみよう。

1)中日のセンター岡林が転がる打球をフェンス直前で止めた

2)野口が最初からサードで止まるようなランニングをしていた

3)サードコーチ風岡が手を回すタイミングが明らかに遅かった

4)あわてた野口がサードを回ったときに走路がふくらんだ

5)岡林からボールを受けた三ツ俣が素晴らしいバックホームをした

ほら!やっぱり今夜は三ツ俣ナイトや。

交流戦は始まったばかり。今宵はオリッの卒業生・三ツ俣の活躍を喜ぶとしよう。おめでとう、三ツ俣。

 


<過去コラム一挙掲載!>
オリックス、元メジャーリーガー、女子野球…ベースボール遊民・南郁夫の野球コラム集。

 

南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
著書「野球観察日記 スタジアムの二階席から」好評発売中!
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