南 郁夫の野球観察日記(89) 真夏の夜の夢?オリックス首位を快走

2021年8月21日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

「結局やっとる」東京五輪のため、プロ野球はわざわざシーズン中断。その五輪の感動騒ぎやらずっと続いてる「例の」騒ぎから「メンタルヘルス」を守るためメディアから遠ざっていると、だんだん「オリッが首位って真夏の夜の夢?」な感覚に陥ってしまっていた・・・変な夏2021。(ネットで大谷だけチェック!)

忘れかけた頃ようやっとシーズンが再開され、ロッテに勝ち越したことで心が再びざわつきだし、その勇姿をやっと神戸で確認できる「夏の陣」にワクワクしていた矢先。なんと「雨季」に入ってしまった、日本列島!変な夏2021。まったくもって、いろいろと尋常じゃない。

予備日含めて3日間ずっとスタンバッたが、神戸で試合ができたのは8月18日(水)のみ。この日も降ったり止んだり続く中、この目で見てきた「現実に存在するんですよね?首位のオリッ」の目撃レポートである。相手は噂の日本ハム・ファイターズ。

雨の野球場。

ずうっと神戸で野球を観てきた者にしてみたら、そんなもん慣れたものである。湿りっけたっぷりの土と芝生の匂いを胸に吸い込み(マスク邪魔)思い思いの雨装束で陣取るファンたちで、球場は人数制限いっぱいかと思われる盛況ぶり。やはりこれも首位効果なのか希少な神戸試合ゆえの当然の現象か。空には恐ろしい雨雲が次々と・・・でもゲーム始まって居直ってしまえば、平気なのさ。

無料券で入ったと思われる近隣の少年たちが、タチの悪い猿のようにエンドレスにぎゃあぎゃあ走り回っている。ああ、これぞお馴染み、夏休みの神戸の野球光景。邪魔やけど、微笑ましい。

試合前。先の五輪で金メダル獲った4選手の表彰式。侍JAPANに思い入れは「一切」ないが(個人の感想です)、今回のチームは当たり前と言われながら金を取ったのだから大したもの。珍しくはしゃいだところのない、好感の持てるチームであったのは事実。できれば金メダル見せてほしかったな。かじらないから。ガリっ。

試合は… 両チーム揃って残塁土砂を積み上げる、雨に濡れそぼったファンにとってはけっこうしんどい展開でして。9時を過ぎても勝負の行方がはっきりしないまま、平凡な内野フライの落球(ハム野村)や走塁凡ミス(オリッ紅林)など「とほほ」になりかけた試合の趨勢を「びしっ」と決めたのは、やはりこの男。

ここぞという終盤の局面で発揮される今年の「吉田正尚」の集中力と打撃技術はすごい。8回裏、前述の走塁ミスでしぼみかけたチャンスを取り戻したダメ押し2ランホームランの快音とミサイル弾道は、遅くまで球場に残ったオリッ・ファンの「もやもや」を一気に吹き飛ばしてくれた。首位チームの主力打者にふさわしい一撃である。

最終回は定石通り平野佳がきっちりと抑えたオリックス!そう。この球場全体の盛り上がり、ファンの歓声が、遠い遠い記憶を思い出させてくれる。お待たせしました。お待たせし過ぎたかもしれません。オリックスはいま、堂々と首位を走っております。

五輪の決勝戦でも決勝打を放ってさらにメンタルがスケールアップした感のあるマサタカ(そういう意味ではありがとう五輪!)の存在が、本当に心強い。シーズン終盤に必ず訪れるであろう厳しいプレッシャーにも今のマサタカなら動じないだろう。

結局、新外国人投手のスパークマンも球威があって使えそうだったし、初登板で要所を抑えて勝利投手になった吉田RYOはじめブルペンは1点も取られなかったし、安達&Tのベテランはしっかり渋い仕事をしたし(2人で3打点)、福田は4安打して走り回るし、オリッの良い要素が満載の試合を見せてもらった真夏の雨の夜であった。4時間以上かかったけど、夢ではない。

で。今年の夏の陣のユニフォームだが。雨に濡れるとどんどん「岩石」みたいな色になっちゃって、神戸だと土と天然芝に妙に馴染んでしまって、なんだか遠目に見ると全体に日本庭園のような和の趣き。まあ斬新といえば斬新な・・。

さて、この日の相手は「噂の」ハムズ。チーム成績は低迷しているが、魅力的な若手がどんどん出てきて個人的に好きである。マウンドに井口が上がったときは場内がざわついたが、例の問題は見事な政治的解決をみてよかったですね。これでスッキリして、若手主体で調子づくかもしれない。オリッ相手には今後も眠っていてほしいが。

というわけで、今年のオリッ・ファンはこれからが応援の正念場なのである。例年なら気楽な9月を迎えるわけだが、今年ばかりはそうはいかない。久しぶりにワクワク・ドキドキのシーズン終盤を楽しみましょう。

球場でもらったケンミンビーフン、なかなか美味しいかったです。

 


<過去コラム一挙掲載!>
オリックス、元メジャーリーガー、女子野球…ベースボール遊民・南郁夫の野球コラム集。

 

南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」

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