南 郁夫の野球観察日記(219)野球観察眼が選ぶ!2025オリックスMVPはこの二人!

2025年12月13日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

振り返ってみれば。今年のオリックスは(かなり)予想以上に健闘し、前監督に指摘された「緩みや隙」をマモさんが修正して5→3位という、上々のシーズンだったと思う。「問題は打撃陣」の野手たちがこぞって奮起して打ち合いの試合も多く、10回もサヨナラ勝ちするなど、活発で面白い試合が多かった印象である。何よりチームが(昨年より)明るかった。

楽しかった、何の不満もなかった、などというと優勝至上主義のファンに怒られそうだが、個人の嗜好なのでしょうがない。とにかくチーム得点が昨年の402(5位)から502(3位)となんと100点も上昇。これだけで私は満足なのである。そのかわり失点が昨年より50点ばかり増えているが、気にしない気にしない。打ち合いの試合が好きなものでなっ。

そんな私の「今年楽しませてもらいました」チームMVPを、珍しく客観的に、野手と投手一人ずつ厳選して選出したいと思う。有効投票数、各1票。表彰式ありません。若干数でも共感していただければ幸い、てことで。

■野手 中川圭太

堂々のリーグ3位の打撃成績。1厘差で4位の(ついに規定打席に達した)太田椋も拮抗していて捨てがたいのだが、田嶋に完封勝利をもたらせたあの生涯初サヨナラ弾、なんといっても多士済々のパ外野手部門で2位得票でベストナインの中川を、野手MVPに選出しておきたい。

彼には悪いが。無敵だ無敵だと言われて他チームファンにも恐れられているわりに、今までの中川に私は疑問符が付いていた。「そんな無敵か?」と。わりと頻繁に起こる長いスランプ、守備での判断ミス…。プレイスタイルはカッコいいのだが、一流選手に必要な絶対的な信頼感が足りなかった。

それが今年は! 通年安定した高レベルのプレイを繰り広げ、勝負強い印象的な一打も多かった。119試合に出場し、一年通して「無敵」感を醸し出していた佇まいを、評価したい。もとより何をやってもカッコいい中川だが、ちゃんと実質が伴った記念すべき年となった。

課題の守備に関してはいろんな指標があるのであれだが、外野全ポジションを守り、守備率100%で失策0という結果を尊重したい。あと盗塁も10個とチーム内では麦谷に次いで2位と、走れないチームの中で意外に健闘していることも付け加えておこう。

なんといっても中川圭太のいいところは、活躍して背番号を軽く(してファンにグッズを買い替えさせる)風潮に逆らって、中心選手になっても入団時(2018年ドラ7)の重たい背番号を変えないセンスである。67は無敵の番号。背番号67の首位打者を、来年は見てみたい。いきなり背番号変えたら、知らんけど。

 

 

■投手 九里亜蓮

九里が教えてくれたのは、エースの資質のある投手はどこで投げたってエースである、という真理だ。今年FA移籍してきたばかりの九里は、まるでオリックスで10年投げてきたかのようにチームを精神的に背負って奮闘した。それが本能である、と言わんばかりの決然とした姿勢で。シーズン終盤、昨年まで別リーグにいた彼は、誰が見たって(由伸みたいな)オリックスのエースに見えたのだ。不思議な気持ちがしたが、そういう投手がいてくれるだけで野球は一段と楽しくなる。

選手の移動が国を超えるレベルで盛んになった昨今、このチーム一筋!はファンの幻想でしかなくなりつつある。選手は個人事業主、個人の思惑や事情あるいは感情で活躍の場を変えるのは当たり前であり、ひとつのチームや地域への思い入れでプレイしているわけではない、という当たり前の現実。

それでも「いま」所属しているチームのために熱くなり、全力を尽くして喜び、Fワードで悔しがる。それがプロの野球選手じゃ、ということを九里はことさらわかりやすいパフォーマンスと結果で私たちに示してくれたのだ。

たとえば来年、九里が(お金につられて 笑)ソフトバンクに移籍しても、寸分たがわぬプレイスタイルで彼はオリックス打線に挑んでくるだろう。寝返った戦国武将のように。ファンとしては複雑だが、それがプロのチームプレイヤーってことなのである。

いずれにせよ、とにかくいきなり来た新参者が今年のオリックスを背負ってくれた。九里のマウンドさばきは(球速とは裏腹に)見たこともないほど激しくて、大いに楽しませてもらった。細かい数字は宮城にわずかに劣るが、何より勝利数と投球回数がチームトップの九里がMVPであることに疑いの余地はないだろう。

というわけで、今年は中川と九里がMVP。来シーズンも彼らには同じように頑張ってもらうとして、来年のMVPは投打とも「U25」という流れになってほしい。誰とは言わんけど。そろそろ若い彼らが本当の意味でチームを背負うタームにならんと、てことで。

今年も野球観察日記をお読みいただき、ありがとうございました。ま。オフを楽しみましょう。

 

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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」

 

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