南 郁夫の野球観察日記(216)オリックス・紅林「まさかの」ゴールデングラブ受賞!

2025年11月15日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

紅林弘太郎がゴールデン・グラブを受賞した。ちょっと驚いた。「まさか」は本人の(謙遜したフリをした)弁なのだが、何となく世間の声を代弁している言葉になってしまうところが、彼のとぼけたキャラクターのなせる技。
紅林がGG! ちょっと笑ってしまう。でもいろんな指標があるのはわかるが、私から見れば、他の候補者よりはやっぱ紅林だよと思う。

何より「安心感」が増した。そして、凄みが増した。鋭い三遊間へのゴロを「そこ外野や」な深い位置で逆シングルで止め、デカい身体を「どうりゃっ」とねじってノーバウンドで一塁で差す、彼の真骨頂プレイ。こう書いただけで、皆さんの脳裏には彼のプレイが再現されるはず。それほどに、この誰しもができるわけではないプレイスタイルは安定し、完成に近づいた。ショートはこれでええんよ。それを感じた今年の紅林だった。

確かに、華麗な球扱い(源田や宗山)、ボールに喰らいつく姿勢(友杉)、興奮を呼ぶプレイ(滝澤)など、このポジションのライバルは多い。しかし紅林の魅力は「そこにあのでっかい紅林がおる!」という安心感なのだ。少々の精度の低さは、持ち前の身体能力で捩じ伏せてしまう。6年目にして、やっとその境地に至った。

チームのショートとして87年の弓岡以来(阪急やないか!)の受賞とか。オリッにしては珍しく?迷いなく新人選手を戦略的に一つのポジションで育て上げた成果は素晴らしい(他のポジションは?)。打撃面などまだ発展途上とはいえ、チーム初の「大型遊撃手」が順調に成長しているのは、頼もしい限りだ。言うてもまだ「ほんの」23歳。明らかにこれからのオリックスを背負う野手である。

がしかし。彼ほど「チームを背負う」が似合わない選手も珍しい。引退する安達にそれを促す言葉をかけられても「ヘラヘラ」笑っていたし。そこ笑うとこか?という場面でいつも笑っている。少なくとも、そう見える。多分そう見えるだけで、彼なりの感情表現で「何か」を表しているんだろうが、意味不明。まあでも笑ってるんだからいいではないか。その万人には理解できないところが、彼の底が浅いのか深いのかわからん魅力なのだ。

球場に見に行ったとき。いつだってショートのポジションには彼が「ぬぼーっ」と立っていてほしい。口の端っこで意味不明に笑いながら…。

ファンはそれを見て「ああオリックスを見に来たな」と思うのである。紅林弘太郎には、いつまでもそんな選手でいてほしい。

 

 

 

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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」

 

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