スポーツイラストレーターT.ANDOHの「OUTSIDER’s ReCALL」(157)王子スタジアムグラフティ~69年の最後の一日
2025年9月18日(イラスト・文/T.ANDOH、写真/Azusa Suzuki)
こんにちは!スポーツイラストレーターのT.ANDOHです。
令和7年8月31日に69年の歴史に幕を下ろした神戸市王子スタジアム。
先日も王子スタジアムを振り返るコラムを書きましたが、やはり最終日にしか見えない景色、最終日だからこそ愛おしくなる景色がありますね。
というわけで、「王子スタジアム最後の一日」。
スタジアムの様子を写真とともに残したいと思います。
8月31日15:30、会場入り。
事務所入り口から入場すると、スタジアムの歴史を物語る写真コーナーに足が止まりました。
普段なら通り過ぎる景色も今日は特別なものに見えます。
70年前、兵庫国体を記念して建設された王子スタジアム。
震災も乗り越えて長らく市民の健康を応援する設備として頑張ってこられました。
まだまだ暑い一日でしたが、抜けるような青空と緑の山々が今日も迎えてくれました。
8月31日16:30、最後の一戦の一般入場が始まりました。
新シーズンの開幕戦であり関学大、甲南大ともに地元となるチーム同士の対戦。
開場時から多くの観戦客が訪れました。
地元にも愛された王子スタジアム。
この日は近所の水道筋商店街のマスコットキャラクター「汗かきえびす」くんと、この日のテレビ放送を行うGAORAのマスコットキャラクター「ガオやん」が来場。
商店街はアメフトをはじめスタジアムで開催するイベントにも協力をし、地元としてスタジアムの盛り上がりを支えてきました。
スタジアム東方の壁面には「#ありがとう王子スタジアム」の横断幕と、メッセージを書き込めるコーナーも登場しました。
OBの方から一般の方まで幅広くの方がメッセージや手形を残していきます。
「子どもが中学生の頃からずっと王子で試合を見守ってきました」
「悔しい負け試合も多かった。思い出はたくさんありますね」
父母の皆さんにとっても”思い出のスタジアム”。
たくさんの苦楽が詰まったスタジアムに別れを惜しむ姿が見られました。
スタッフにとっても“青春の場”。
現役の学生スタッフにとって、スタジアムの閉鎖も新たな思い出なのでしょう。
よく見ると関学、甲南両校以外の学校やチーム名を刻んだメッセージも多く、アメフトに青春をかけた多くの方が駆けつけたことが伝わってきました。
こちらのメッセージ書き込みは、試合終了後も閉場時間まで多くの方が絶えず立ち寄っていました。
スタジアム西方には、最後の試合を見守るスコアボード。
こちらも先日も書きましたが、このスコアボードはかつて関西アメフトの聖地だった西宮球技場から2003年に移築されたもの。
“アメフトの聖地”を繋ぎ、関西アメフトの歴史の一つの象徴ともいえます。
同時に、西宮球技場は阪急ブレーブスの本拠地だった西宮スタジアムの系列施設ということで、このスコアボードは西宮スタジアムのアストロビジョンと兄弟的なスコアボード。
西宮スタジアムの名残をもつ設備としても、ひとつの歴史の終わりを表すことになります。
スコアボードの目線からフィールドを眺めてみました。
ちなみにスコアボードの電光表示はPC98というこれまた時代を感じるOSで動いていたそうです。
ナイターで開催された最後の試合。
夕日に染まるあかね空がスタジアムを包んでいきます。
王子スタジアムの象徴といえる遊園地の観覧車とスタジアムのこの景色。
公園の改修に伴い、王子動物園も順次リニューアル工事が行われています。
観覧車や遊園地も大きく変わってしまいそうですね。
夜の帳が空を染める頃、ハーフタイムには、聖火台に上がるスタッフの姿が。
赤い三角コーンをいくつも立てていると思いきや…
コーンの下からライトを照らして「聖火」が点灯されました
可愛らしい赤く灯された聖火に多くのお客さんの目を引きます。
リーグのスタッフがスタジアムの最後の一日を心を込めて盛り上げる。
いろんな思い出を持ったリーグの皆さんの感謝の気持ちを感じる一幕です。
8月31日19:36分、試合終了。
関学ファイターズの勝利をもって、王子スタジアムの最後の試合が終わりました。
最後の試合に訪れた1,400人の観衆に見守られ、幕を閉じます。
最後のエール交換。
指揮を取る応援団指導部と、ライトアップされた観覧車のある景色。
試合終了後、スタンドの観客もフィールドに開放され、選手や関係者とともにスタジアムにお別れを告げていました。
王子スタジアムは、公園改修に伴い2030年に公園北側に新たに建設が予定されています。
隣接する王子動物園も2027年にはリニューアルオープンするとのことで、これ以降王子公園自体が大規模な再整備工事に入ります。
新たな王子スタジアムが再び関西のアメフト界や陸上競技などで賑わう時が来るまで5年ほど。
地元の方にとってはいろんな思いがあると思いますが、新たに生まれ変わる公園は、この先の神戸市民にとっても思い出の土地となることは間違いありません。
僕もアメフト観戦で再び訪れる日を楽しみにしていますし、新たに生まれる歴史をこの目で見届けたいですね。
閉場の瞬間には、スコアボードに動く文字で「ありがとう王子スタジアム」のメッセージ。
僕もあらためて、69年の歴史を紡いできた王子スタジアムに、ありがとうとおつかれさまを言いたいです。
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スポーツイラストレーターT.ANDOH
おもにスポーツを題材にしたイラストやデザインの創作で、スポーツ界の活性に寄与した活動を展開中。 |
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