南 郁夫の野球観察日記(211-1)SGLな夜~ファーム・阪神 vs オリックス

2025年9月13日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

あらん限りの残暑を照りつける太陽も、ようやくかげりかけた夕刻。冷房の効いた電車から古びたホームに降りると、メガネが曇るほどの湿気である。どこや?ここわ。降りた駅は、いつまでも読みを覚えられない阪神電車「大物」(だいもつ)。先日の神戸でのナイター・ファーム戦の天国ぶりに気をよくした私は、デーゲームは体験済みだが未体験の「SGLナイター」に足を運んでみたのだった。9月9日ウエスタン公式戦・阪神 vs オリックス。

「甲子園の座席を適切に配置したら」というこの球場の見やすさは、ナイターではより際立つ。グラウンドだけがぽっかり浮き上がっているような視界が素晴らしい。集中力のない私などは、昼間だとついつい外野の向こうの日本鋼板の稼働中の工場をじっと見てしまうので…。この日座ったのは2000円のネット裏席。角度があるので視界を遮るものがないし、ゆったりシートも快適だ。

んが。やはり山中にある「ほっともっと神戸」と違って、湿度は日が落ちても高く、汗ばむほど。同じ時間に同じ緯度でやってる絶賛消化試合なのに超満員!の甲子園球場も、さぞ暑かろう(浜風のないこの日が特別そうだったのかもだが)。阪神先発・ビーズリーのデタラメな投球が暑苦しさに輪をかけて、1回表が永遠に終わらないのかと…(5失点)。

まあそれでも。ファーム球場の醍醐味である炸裂するキャッチャーミットの破裂音や気持ちよく鳴り響くバットの快音などに身を委ねていると、次第に脳内の思考は止まって目の前の野球が幻想の世界へ…。息をひそめる夜の工場が怪獣が登場する前のウルトラマンのシーンに見えたり、行き交う阪神電車内の勤め人の暮らしに思いを馳せたり…あかん。また外ばっかり見とるやないか!尼崎夜想曲。

そんな私のトリップを邪魔するのは、阪神攻撃時に起こる「応援団の真似事」である。一軍優勝で興奮しているのか、甲子園のチケットが取れない鬱憤をここで晴らしているのか知らないが、やたら野太い低音で音頭を取る男性に合わせて、私の不得意な「かっ飛ばせー」的な想像力のかけらもない応援が、絶え間なく続く。春先はそんなことなかったのになあ。まあ、しょうがない。観戦スタイルは自由だから。

とはいえ、そんな殺伐とした応援でもないし、おおむね空気はのんびりしていてヤジが飛ぶこともない。温かく選手を見守る観客数は1739人と、先日の神戸のファーム戦の倍である。それでも清潔なトイレも売店も帰りの電車が混むこともないし(甲子園の客と合流してしまったが)、未体験の方はぜひ足を運んではいかがでしょうか?

この日の試合結果はこちら。仔牛たちがんばってます。

次ページは、専属カメラマンによる夜のSGL写真集。彼は11日のナイターも観戦したので、その写真も合わせてどぞ~。

 

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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
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