南 郁夫の野球観察日記(195-1)阪神タイガース二軍新球場、SGLスタジアムを初観察!

2025年3月6日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

阪神タイガースの二軍新球場が、ついに完成。甲子園球場を模した最新の野外スタジアムという時点で素晴らしくないわけないのだが、この目で見ないと気がすまないのが野球観察者。
今シーズン初観察は、阪神タイガースファーム新本拠地・尼崎で行われる教育リーグの阪神vsオリックスである。

3月5日(水)昼過ぎ。こんなことでもなければ一生降りなかったであろう、阪神電車「大物(だいもつ)」駅に到着。尼崎駅より一つ大阪寄りの、普通電車しか停まらない駅。構内は新球場ムード一色で、改札を出ると駅員の方が「球場はこっちですう」と誘導してくれる浮き足だった雰囲気が、微笑まし。

ところで。地名とはいえ、いったい誰が「大物」を「だいもつ」と読めるのか? なんと読むでしょう?と聞かれたら一瞬頭に浮かぶも「それだけはないやろ」な、微妙な響きではあるまいか。ここに球場ができなければ一生読めなかった難読地名であることだけは、間違いない。
地名の由来は平安時代にこの地が港町として栄え、取引された巨大な材木を意味する「大物(だいもつ)」から。(諸説あり)

そんなことなど考えながらまっすぐ数分歩くと、あっという間に現れる新球場。駅前球場やん。誇らしげに書かれた球場名は…「日鉄鋼板 SGL スタジアム 尼崎」。ん?  そこかしこに表示されてる半角スペースだらけの「ゼロ カーボン ベースボール パーク」は球場名ではないのか?

どうも「ゼロ……」(省略したらあかんやつ)は球場や練習場、虎風荘や一般の野球場などを含むこの広大な公園全体の呼称なようで(総合運動公園みたいな?)、球場名としては「SGLスタジアム」でいいみたい。
昨今、二軍の球場名がややこしすぎん? 個人的にはざくっと「尼崎球場」あるいは「あま」と呼びたい。

出来たての球場はつるんと綺麗だが、二軍球場ゆえもちろん構造はシンプル。どきどきしながらするっと入場してグラウンドと「初めまして!」と対面して… いきなり結論を言えば。

SGLスタジアムは甲子園球場「以上」である!!

え?以上? グラウンドの広さも方位も甲子園球場と同じ作りだそうなので「以上」なわけはないのだが、スタンドからの「見た目」が甲子園以上だぞ、という意味。
ご存知のように甲子園はファールゾーンが広大でスタンドが巨大すぎる関係で、野球がやたら「遠くに」見える。
その点、この球場はスタンドに傾斜がついていて席数もコンパクト。どこから見てもグラウンドが近く、臨場感がある。しかも阪神園芸(の二軍?)が管理するグラウンドなのだから、素晴らしすぎる。甲子園を適切なスタンド配置にしたらこんなに見やすいのか!という感動が味わえる。もちろん、ファームの試合に興味がなくて大勢で騒ぐのが好きな人は、甲子園の方がいいだろけど。

何より驚いたのは、この日は小雨でしかも前日から降り続いていたにもかかわらず、グラウンドに雨の浮いた箇所が一切なかったこと。ひょっとしたら中止かな?と思っていたくらいなのだが、見事に試合は完遂された。

さて。私が座ったのは一般の内野席だが、座席の質も素晴らしい。背もたれこそないが適度なクッションがあり、もう鳴尾浜の過酷な環境には戻れない。
ネット裏席には背もたれもあり、なんと二軍球場なのに「屋根」もある。真夏のデーゲームは屋根の下がいいなと思ったが、スケジュール表を見ると真夏はナイトゲームばかり!ウエスタンの選手はみんなここで試合がしたいだろう。

ちなみに。こっそり座ってみた一番高い「コクヨプレミアムシート」の椅子は背もたれプラスクッション付きでとても快適。私が嫌いなフィールドシートも、この球場のは「海抜ゼロ」じゃなくてグラウンドより視線が高いので、見やすそう。このようにどこに座っても快適だが、スタンドの傾斜があるぶん、階段は「急」で段幅が狭いのでご注意を。私は大阪球場を思い出した。(年寄りの証明)

まあとにかく。
球場は「出来たてほやほや」なので、もちろんトイレ含めて全てが綺麗で清潔。二軍球場なのに常設のグッズや飲食の売店が充実しているのも、さすが人気球団。同時に完成した併設の練習場や寮などとともに、ようやく「年間全チケットがシーズン前に売り切れる」チームに相応しいファーム施設が整った、ということか。今年からは二軍試合からも「結構な」興行収入が入るはずだし…。

あいにくの天気ながら、臨場感があって余計なノイズのない野球が堪能できた。今シーズン観察の素晴らしいスタートである。
今度は天気のいい日に来たい。とにかくエクセレントな球場でアクセスも良いので、結構「通いそう」な予感がする、好印象しかない観察結果。今年は神戸とここ(二軍戦)と甲子園(交流戦)でいいかも。

さて、実はこの球場、阪神本線と阪神なんば線に挟まれた立地で、外野はなんば線の架線が背景となっている。とにかく観戦中ずっと「阪神電車・車両見本市」で、ついつい外野後方を通過する電車を見てしまう。「全てマルーン色」な阪急電車と違って、カラーリングもさまざま。鉄オタには楽しいポイントかもしれない。チームと親会社がこれほど密接になる光景もない。もちろん、電車からも球場内部は見える、ということ。

↑ 「大物」駅からなんば線の車窓風景

そしてこの日、阪神電車が観客を運んだ試合は、甲子園のオープン戦、大物のファーム戦、京セラのオープン戦と侍JAPAN戦の、なんと4試合。ベースボールトレイン、阪神電車である。
甲子園と同じく「SGLスタジアムには駐車場はありません」。

もう一つのこの球場の背景は、球場ネーミングライツを持つ「日鉄鋼板」である。レフト後方、というかこのボールパークを取り囲んで存在感を見せているのが「日鉄鋼板」の工場や社屋であり、もちろん試合中も稼働中。頻繁に聞こえる、金属がぶつかる「ぐわ~ん」という音がなんとも、いいのである。
大物という町全体が「阪神工業地帯」臭ぷんぷんで、「労働と野球」のコントラストがナゴヤ球場の光景を思わせたりして、趣きがある。育成選手は寮から工場の夜勤に通えそう(笑)。

最後に。どこにもない解説をば。「SGLスタジアム」の「SGL」てなんやねん?と思いませんか?私は思いました。調べました。
SGLは日鉄鋼板自慢の「鋼板」のことで、「S」はSpecialやSuperなど「優れた」、「GL」は「ガルバリウム」を意味し、「優れたガルバリウム鋼板」を表す名称らしい。ううむ、鋼板の名前て言われても。みんなワケもわからず「SGL」て呼ぶだけのような気もするけど、それが日鉄鋼板の深~い目的かもしれず。

でも私は「尼崎球場」と呼ぶ。

 

▪️補足
阪神ファンの皆さま、出待ち&入り待ちをするならこのライト後方にある球場と施設を繋ぐ階段というか、陸橋ですよ! 入れませんが、至近距離で選手が見れましょう。平田監督は気軽に声がけに応じてくれるとの証言あり。(証拠動画を確認済み(笑))

でわ。
鋼板ならぬ後半は、専属カメラマン写真集。阪神vsオリックスのファーム試合風景やここに掲載しきれなかった新球場の風景などをどうぞ~

 


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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
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