南 郁夫の野球観察日記(91) Bs2021 オリックス、充実の秋を見逃すな!

2021年9月25日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

「同点かっ!?」
1点ビハインドの9回裏、2アウト3塁のチャンスでオリックスの切り込み隊長・福田が完璧に捉えた打球は乾いた音を残して二遊間真っ二つ!のはずだったが… 楽天のショート山崎が信じられない横っ飛びで抑え込み、一塁へのギリギリ送球でゲームセット!
その瞬間、京セラドームは両チームの選手とファンの対照的な感情が爆発し、しばらく誰も動けずどよめきが収まらない。

私はもちろん「放心」したが、その後すぐに口をついたのは「くっそー」でなく「めっちゃええ試合やったなっ」であった。優勝のチャンスが十分にある両チームの、終始まさに必死のパッチの真剣プレイの攻防が緊迫感満点の、極上の好試合だったのである。こんなの見れて、幸せだ。家路に着く多くのファンからも同じセリフが聞こえていた。

「そわそわ」させられる秋は、何年振りか!故障者・帰国者続出でも「(残った)全員で勝つ!」との気概で、なんども押し寄せる「もうだめか?」という局面を踏みとどまるオリッたち!彼らの奮闘に胸が熱くなるシーズン大詰めなのである。のんびり観戦も好きだが、やはり「ひりひり」するシーズン終盤のこの感覚はたまらない。

この日(9月25日)は試合途中からの観戦となり、紅林の同点ホームランを見逃したのだが、それにしても最近の「うちの19歳」の成長振りは目覚ましい。いろいろな失敗を乗り越えて「生きた打球」を打つようになってきた。守備も見栄えがするし、とにかく彼の「若さ」がチームを鼓舞している。

頼みの宮城くんが打たれて、1-4と劣勢の8回。昨年までならあっさり負けてたパターンであるが、ここまでシーズンを引っ張ってくれた「うちの20歳」(堂々の11勝である)に負けをつけるわけにはいかない、とばかりにラオウ杉本が「異次元の」バックスクリーンはるか越えホームラン(あんな打球をこのドームで見たことがない)。そして9回裏も西村のヒット、代走・佐野の果敢な盗塁などで楽天を攻めに攻めて追い詰めるも… わずかに及ばず敗戦したのだ。

あっさりとは負けない、この粘り。紅林だけじゃない、宗などの若手の大成長。ベテランの頑張り。セットアッパー陣の踏ん張り。ギラギラ目を光らせて、とうとう感情を表に出すようになったオリッたち。本当に胸が熱くなる。やはり優勝争いがチームを強くするんだなあと。試合経過によってはファンも眠くなるようなここ近年の京セラとは、今年はまったく雰囲気が違うのである。

さて。則本は素晴らしいピッチングだったし、いぶし銀揃いのベテランたちに加えて、最後にチームを救った山崎(次の日は山本から追撃タイムリー)など若手の台頭も目覚ましい楽天イーグルスも、全くもって手強い相手である。パは上位に限らずどのチームにも見所があって、久々のエキサイティング・リーグぶりだ。

おそらく最後までもつれるであろう、パ・リーグ2021。すごいすごい10月になることは、間違いない。見逃せない戦いが続くぞ。

 

*この日、オリックス・西浦選手の任意引退が発表された。素晴らしい才能に恵まれた若者の苦渋の決断がつらい。「プロ野球選手を辞めても夢はプロ野球選手です」なんて最後の言葉も切なすぎる。まずは難病の治療に専念いただきたい。昨年9月の西武戦でのミラクルキャッチは誰も忘れないだろう。今後の人生に幸あれ。

 


<過去コラム一挙掲載!>
オリックス、元メジャーリーガー、女子野球…ベースボール遊民・南郁夫の野球コラム集。

 

南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」

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