南 郁夫の野球観察日記(214)福田周平は終わらない
2025年10月15日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)
4→1→65
背番号の変遷がオリックスでの野球人生を象徴しているかのようである。オリッの背番号1は「球団預かり」だったのだが、彼に戻ることはなくなった。
福田周平が。スーへーが。ついに、戦力外となってしまったのだ。予感はしてたけど、いざそうなってみるとなんだか釈然としない気持ちだ。福田は、なんと言ってもV3の中心メンバーだったのだから。
お家芸のヘッドスライディングが象徴する「獰猛な」プレイスタイルを、「凶暴なリス」と私は形容した。制御不能な闘志。孤高のダンディズム。呆れるほど度胸の座った福田周平の「思い切りよすぎる」プレイは、あるときはサヨナラセーフティーバントなどという奇策を成功させ、あるときは超美技をやってのけるけれども。反面、暴走や失策(特に後逸)、空回りや怪我が多く、首脳陣を翻弄し続けた。
そこらへん本人はわかってて「常に7割~8割の力でプレーすることを心がけている」と語り(例のラオウとの喫茶店番組で)、「どこが?」とファンは叫び、しかしそんな周平を愛した。ラオウとの凸凹コンビ「ワンハンドレッド」は、すでに「あの頃」になってしまった令和オリッ黄金時代の愛すべき象徴であり、その一角がチームを去ることに、首筋がきゅんとなる寂しさを感じる。秋ですね。
2017年ドラフト3位(田嶋が1位の年)。1年目から順調に内野手として実績を重ねた福田は、2021年紅林入団の影響で外野にコンバート。苦労しながらも2022年に早くも外野でゴールデングラブを獲得するほど、見事に順応。この2年間は110試合前後に出場し、打率も270前後でチームはリーグ連覇と… 今から思えば、全盛期。それだけに、その後3年間「ぷつっ」と消息を絶ったような、ある種「干された」よな状態は、不可解と言えなくもなかった。邪推はやめるけど。
連覇の功労者なのに1軍に呼ばれず、2軍暮らしを強いられた2023年。ノイジーにやられた日本シリーズ「第7戦」にやっとスタメン抜擢された福田は「最初から俺を使ってればな!」とばかり3安打と一人で気を吐き、私は「やっぱ反骨心あるわ~」と感心した。そう。反骨心。小柄なことや、なかなかドラフト指名されなかったことに起因する反骨心こそが、彼を駆動させる初期衝動。
そして今年、2025年もわずか23試合の一軍出場。しかし。先日SGLのファーム戦で久しぶりに見た福田の「目」は、まだギラギラしていたのだ。「一軍に上がろうとしている」そんな、目だった。カミソリのような彼の反骨心は、いささかも衰えてはいない。今年のファーム打率は.289。内外野守れる彼の値打ちは、揺らいではいない。
戦力外通告を受けた今、福田は強く現役続行を希望していると聞く。彼の反骨心はそれこそ、過去最大限に燃え上がっているに違いない。リードオフマン・福田周平は簡単にはくじけない。オリッに預けた「背番号1」は日本のどこかで彼の背中に戻ってくる、と私は信じている。そして再びバットを「ぐっ」と構えたとき… 今度こそ福田は本当の「全盛期」を迎えるだろう。
福田周平は終わらない。
ラオウと純喫茶(兼・こだわりの観葉植物ショップ)をやるのは、まだまだ先でいいだろう。行きたいけど。
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南 郁夫 (野球観察者・ライター) 通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」 |
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