南 郁夫の野球観察日記(207)オリックス、最終盤のキーマンはやっぱりこの人

2025年8月21日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

 

猛暑お見舞い申し上げます。
さて。肝心の夏場に首位争いどころか、貯金を散財中のオリックス・バファローズ。5割キープすら赤信号。それでも、なんとかクライマックス圏内の3位を守ってはいるものの、シーズン途中で外国人補強までして本気度マックスな楽天グループの足音(羽音?)が「耳たぶ」にまで迫っている、そんな8月ももう終盤。

すでにソフトバンクと日本ハムは雲の上で、目視不可。オリッの敵は楽天、西武なのだが(あと1チームは?)、その目下のライバル・楽天に「普通に」5連敗中なのが「とほほ」なところだ。さらに不吉なことを言うと、今年3勝9敗とすっかり昔の「舎弟関係」に戻ったソフトバンクとあと10試合も残している、オリッ。

ヤバイ(レイエスの口調で)。

でも。まも。
マモさんを、なんとかクライマックスに行かせたい!
そうじゃないと、激しく噛まれて消費された無数のガムたちが、浮かばれない。

なんか「きっかけ」がほしいと思っていたら、きた!きかっけが。

8月17日の西武戦は、序盤で0-6だった劣勢を太田と中川の2本のホームランでド派手に追いつく「らしからぬ」試合展開。それだけでも「きっかけ」になり得る試合だったが、延長12回。「引き分けもだるいな」と怠惰にテレビ観察をむさぼっていた私の前で、「うぉりゃあ」とムードを一変させるサヨナラホームランで決着をつけてくれた男に、私は「吉兆」の輝きを見たのである。

やっぱり、廣岡!シーズン序盤に「救世主」として特集を組んだ、廣岡大志である。

「いろいろありました」の今シーズン。でも彼の表情に、屈託や迷いは窺えない。「そんなん忘れました」みたいな顔でふわふわ笑うばかりだ。思い切りよく!振るだけ!な楽観的プレイスタイルは復帰後も揺るぎない。廣岡のその「異常なまでの潔さ」は彼独自のもので、結果がどうあれファンも妙に納得してしまう。数字を超越して「次は事を起こしてくれそう」なポジティブ予感を、常に彼が発しているからだ。そんな質感の選手は、あまりいない。

シーズン序盤、廣岡の台頭で居場所をなくしていたのは、宗である。二軍にまで落ちていた宗が、廣岡の故障欠場で「人格を変えて?」戻ってきたことも廣岡相乗効果だろう。最近の宗のプレイには「オトナの凄み」があり、もうサードの定位置を誰かに渡すことはなさそうだ。でも、どこでも守れる廣岡はぜんぜん困らなかった(笑)。廣岡、宗のコンビで最終盤のチームを牽引したい。

さて。「なんも深くは考えてなさそう」な廣岡だが(あくまで外見ね)、一瞬だけ意外な表情を見た。

それは、サヨナラ劇前日の西武戦の終盤で、3打席ノーヒットだった彼に珍しく代打が送られたとき。中継カメラで抜かれた廣岡の表情の変化は、ちょっとしたものだった。交代を告げられた瞬間、遊んでいたオモチャを突然取り上げられた子供の表情で「数秒」固まった廣岡が、ほんの一瞬だけ苦しそうに顔を歪めて、その謎の内面を垣間見せたのだ。その後すぐに、例の「ふわふわ顔」に戻ったのだが・・。

そして。その翌日に、生涯初サヨナラホームランである。この切り替えの速さこそが、オリッをクライマックスに導く鍵だ。チーム全員、見習わなければならない。もう、調子やら体調やら前回の結果やらデータやら、引きずってる場合ではない。高校生のように目の前の試合を取らないと、あっちう間にクライマックスが遠のいてしまうのである。

今年のチーム浮沈の鍵を握っているのは、やっぱり廣岡大志なのである。

 

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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
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