南 郁夫の野球観察日記(204-1)いつまでもあると思うな親と球場 神宮遠征記
2025年6月23日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)
いろんな球場の耐用年数が限界に迫っており、各地で建て替えの具体案や噂が飛び交っている。みんな、エスコンみたいに成功したいのね?
そこで。今年の「遠征」ターゲットは、建て替えが決まった(らしい)神宮球場をロックオン。交流戦最終カードのヤクルトvsオリックス、6月20日(金)~21日(土)の試合を観察するべく。いざ都議選寸前の帝都へ!
神宮球場は、複数回訪れたことはある。20年以上前の、えんらい昔だが。いずれも東京での用事のついでにちょこっと寄って、普段使いしやすい球場だなと感心した。プロ野球の試合なんぞ(巨人戦じゃなきゃ)当日券で入れた時代。ふと思いついたら、すぐ行ける。なんせ都心真っ只中で「青山通りor神宮球場っ」ちうロケエションだから。
東京メトロ「外苑前」から地上に上がると、いきなりスワローズが壁面でお出迎え。二度見・三度寝必至の現在の「チーム成績」を考えると(NPB12位)、誰が考えたかこの熟語テストみたいなキャッチフレーズは… 来年もまんま使えて、ええやん。(2025の5消して6に)
駅前には昔(たぶん)なかったチームショップがあり、訪問期間が「レディースデー」で特別商品が発売されていたからか、「推し」選手の応援グッズを買い求める女性でいっぱい。今やどこでも、チームを支えるのは女子である。オリッ選手の「そういうグッズ」はようやく見慣れたが、他チームの「そういうグッズ」を見ると「恥ず」な気持ちになるのはなぜ? む、村上… 。
企画Tシャツには普段着にできるセンスいいのが多く、思わず「KURURINPA」を買ってしまった(つば九郎… )。遠征先のグッズ衝動買い、楽しい。関西でスワローズ系のアパレル着てたって、無反応やし。
さて。ショップを出て学校とかカフェが並んでいる緑多きおしゃれな道をそぞろ歩けば、すぐに古びた球場が緑の合間からさりげなく、「旧友」のように姿を見せる。この球場の「現れ方」が、私のツボである。
「スタジアム」やら「ドーム」やらには、押し付けがましい「デベロッパー感」が漂う(個人の感想です)。そして、それが醜く古びると、作った連中まで知らん顔する。が。この神宮球場の、歴史を「超えに超えた」さりげない風情はそんなものとは無縁。不変な普遍性。「再開発」によりこの100年かけたビンテージ感は間違いなく失われるわけで、人々はこの光景をいずれ間違いなく懐かしむことになるわけだ。(再開発については後述。あ、今回、観察記長いっす。ついてきてます?)
ちなみに。球場向かいの国学院高校は「さだまさし」「ふかわりょう」といった平仮名の著名人を輩出することで有名だが(そこ?)、2日目のデーゲームが終わるのと学校の下校時間が重なって、狭い歩道に制服の学生と応援ユニの野球ファンが入り乱れて。えらいことになってしまった。でも主役は学生。それが神宮の森である。
さて。まだ開門時間ではないので、今回の滞在ホテルにチェックインするらしい。ん? もう球場に着いてしまっているけど? お。そうですか。なんと今回専属カメラマンが取ってくれたホテルは、神宮球場真ん向かいの「日本青年館ホテル」。ロビーからの光景は、こうだー!うわー。
ついに幻覚を見ているのか? 球場内部が丸見えで、オリッが練習しとるやないか。窓に貼り付けになってしまうこのホテルは、従業員全員「燕ユニ」を羽織った、完全野球観戦宿仕様(試合開催日だけと思うが)。球場までの所要時間は「道を渡るだけ」の、遠征組には夢のよなホテルなのである。ロビーではオリッと燕のユニが仲良く入り混じっている。たいていの宿で寝れない「おデリケート」な私も熟睡のアメニティ、大浴場も完備な超絶オススメ宿である。ちなみに、夜のロビーはこんなかんじ。
というわけで、ホテルから球場の自分の席までほんの数分。三塁側内野席から後ろを振り向くと、当たり前だがホテル(ロビーは9F)が見えている。
グラウンドではまだオリッが練習中。この遠征は屋根なし球場ゆえ専属カメラマンが「念」で梅雨前線を吹き飛ばしたはよかったが(なんせ2年連続遠征が雨にたたられまして… )、雨よりマシだが真夏の暑さ。で、オリッの練習帽が「ミントアイス」に見えて仕方ない。
試合開始時刻が近づきスタメン発表されるも、スワローズの多くの選手の背番号60番台とかで、誰が誰だかわかんない。主力やつば九郎が「離脱」して、オリッと縁のあった頃のチームと随分メンバーが違うのは知ってたが、今は苦しいと同時に未来に繋げる時期なんだろう。にしてもスタメンの「サンタナ・オスナ」だけ「山本・田中」みたいに判で押したように変わってないって、今どきの外人事情としては珍しくないか?
オスナは、優しい。
お!高津監督!お久しぶりです。けっこう長期政権ですね。
で。レディースデー配布ユニを着ての始球式は、両軍OBである、グッチ坂口智隆氏による、「ノーソックス」投球。坂口推しだという「つばみ」ちゃんて、なんか「おばさん」っぽいのよ、動きが。笑。いまだに「あれ?おっちゃんの方は?」と思ってしまう(涙)。
というわけで。野球評論家ではないので試合の方を駆け足で説明すると… (そこは駆け足かい!)
▪️6月20日
延長10回表にとっておきの代打・中川が、めちゃカッコいい無敵打を放ってヒーローに!試合後に引き揚げる彼のVサインをとらえた専属カメラマンの「バズり」(本人比)ショットをどぞ!
久しぶりのホームランを放って喜んでいた宗がヒーローになり損なった、この試合。
なんせスコアが、10-8である。私が涎をじゃあじゃあ垂れ流す大乱打戦(低次元の打撃戦ともいう)で、大満足。燕ファンも「得点の数だけ」傘が振れたわけで、楽しそうでよかった。私も振りたい。「傘と東京音頭」ってほんと鉄板中の鉄板の応援スタイルで、誰にも突っ込めないその正統性が「すごい」と思う。わっしょい。
▪️6月21日
ちなみにスコアボード上の「OPEN HOUSE」広告に打球を当てると、「東京の家」がもらえるらしい。(日本最南端・沖ノ鳥島も東京だが)というわけで、ラオウは終始「大振り」だったと、私は思う(笑)。
で。そんなとこに打球は当たるわけなく、いきなり好調・西川の「最短距離」レフトポール際最前列ホームラン(それでもホームランは等価である)で始まった試合だったが…
紅林がいくらお尻を優しく触っても先発・宮城の乱調が珍しく止まらず、最後にオリッも「あわや」までいくも、ヤクルト・スワローズ「久々の」勝利である。ぱちぱちぱち。
もちろん馬鹿にしてるとかじゃなく、スワローズに負けても「ほのぼの」した気持ちにしかならない。なれない。よく勝った!ちうか、勝ってくれてほっとしている。オリッ・ファンが結構いるとはいえ(驚いたことに1/3くらい)、ここは燕の領地なのだから。敵地で3連勝は、下品。はい。試験に出ます。
基本的に私にとって遠征は「敵地に贔屓チームの応援に行く」のではなく「敵地と敵を好きになる」ために行くのだが(そんな奴… )、チームが大変なときに若燕が頑張るスワローズも、それを温かく行儀良く応援する燕ファンも、こじんまりして古ぼけた球場も、実に雰囲気がよくて素晴らしいと思った。新鮮だった。関西弁で言えば、ファンが「イキってない」のが心休まる。(決してどこの球団とも比べておりません)
巨人よりヤクルト、ヤンキースよりメッツ、私もそんなタイプなので(若い頃NYまでメッツ観察に行ったこともある)、東京在住なら間違いなく、ここが居場所だ。(関西人が集まりそうなカードは除く)
球場はほんと「ちょうどいいサイズ」で、内野上段席は見やすい。銀杏並木の向こうに巨大なビルが並ぶ都会の光景を満喫しながら、できればガラガラの環境でのんびり野球を見たい。学生野球でもいい。ブルペンがファールグランドにあるのも、なんとも懐かしい。ブルペンの選手にファールボール当たらぬよう、一人「監視員」が立つのも、和む。
一人で応援に来てる「国鉄時代から応援してる」風の洒脱な爺さまなんかもいて、ファン層も実に広いスワローズ。試合後、最寄駅が複数なのもあり、みんなが一方向じゃなくて「四方八方」に帰っていくのも、好ましい。試合後でもどんな店でも開いてる、都会の夜。人生、野球だけじゃない。「人それぞれ」な都会の野球の在り方である。
で?
そんな素敵な球場が取り壊される、らしいと。決まった?と。スワローズがそう決めたわけでは、ないんだけど。
神宮球場(明治神宮野球場)は1926年開場で、宗教法人・明治神宮の所有物。他の球場とはずいぶん「素性」が、違うのである。神宮球場に来たってことは明治神宮外苑に来たってこと。「じゃ、内苑にも行かんと」と、私は2日目の早朝に20分ほど歩いてご挨拶に行ってきたことも伝えておこう。
宗教法人・明治神宮っていったい… は深掘りしてはいけないジャンルそうなのでパスして、話を球場が位置する外苑に戻す。神宮外苑は何しろ広大で、神宮球場、第二球場、秩父宮ラグビー場なども含む巨大な土地。有名なのは銀杏並木で、この通りは都会のオアシスで実にハイソでオシャレな雰囲気なのだが、なぜか週末になるとランボルギーニ・カウンタックが集まって爆音を轟かせる。見てておもろいケド。
その明治神宮が伊藤忠商事や三井不動産の手を借りて、外苑全体を再開発するプロジェクトがスタートしているとのこと。完成予想イメージを見ると新球場は青山に近い方(今のラグビー場の位置)に移動するようで、建設中は今の神宮球場は稼働させるとか。ん? 完成は2036年予定? どっえらい先やん! しかも環境活動家による反対運動も根強いそうで、本社ビルに落書きされた伊藤忠が激怒したとか。すんなり行くのか行かんのか? とにかくまだ当分は、今の神宮球場を楽しめるということ。なーんだ。
そこで視点を「今の神宮球場はあと10年持つのか?」に変えて見てみると… 「変な色」に塗り込められているが、構造物の老朽化はそら隠せない。
私が小うるさくこだわる座席も、昔の設計なので「前後左右」もれなく狭く、誰かがトイレに立つたびに大騒ぎ。しつこくこだわるトイレはというと、あれ? 新しくもないのに、なぜか香水のいい匂い。(神戸の三塁側トイレ、負けてるで!)。とはいえ球場内外のインフラの貧弱さは否めず、なんというか「何もかも、狭いねん!」である。昔の日本人サイズ?
試合後の球場前の狭い歩道では、選手(エスピノーザ、目の前横切った!)、ファン、前述の学生、ビール売り子(控え室が日本青年館にある模様)が入り乱れるカオスが見れるが、さすが日本人、ていうか東京人。みなさんマナーがいいので騒ぎにはならん。
再開発後はもちろんそのあたりも解消されるそうで、隣に余裕たっぷりで建っている真新しく洗練された(例の… )国立競技場などを見ると「そらまあ新しいのもよろしいな」と思うし、古いもんを懐かしむだけでもどうにもならん、と思ったり。ちゃんと野球わかった人が設計する球場であれば、新球場は個人的には楽しみである。
ちなみに、この再開発に「公金」の類は投入されないそうなので、実は我々がどうこう言う話ではないのも事実。お金の話は「ひとりの商人、無数の使命」の伊藤忠商事の商人たちが巨大な本社ビルから見下ろしながら、そろばんを弾いているようだから… 。(ナイターが終わる時刻でも、このビルのどの部屋の照明も消えることはなかった… 怖)。
最後に。トリビアを、2つ。
試合中、やたら空を本物の「燕」が飛び回って鳴いているので、「だからスワローズ?」と思ってたら、それは間違い。正解は「国鉄スワローズ」時代に当時の国鉄の花形特急の名前が「つばめ」だったから。その後、産経アトムズ→ヤクルト・アトムズなのに、なんでスワローズに戻ったの? アトム… あ。そうか。
次。
実は「神宮球場」の「宮」の字は、呂の中間の線が入らないのを知っていましたか? ということは、もちろん明治神宮もそう。創建時にどっかの偉いさんが筆で書いた字がそうなってたから、だそう。
でもあれ? 外苑の看板は普通の「宮」やん!
書類上の正式神社名は普通の「宮」だそうで、実は… どっちゃでもええ!でした。
あと一つだけ。
神宮球場は狭いのに意外とグルメ豊富で、ありとあらゆるもんが食べれる。「グルメガイド」なる豪華な小冊子でよく調べて好きな食べ物をじっくり選ぶと良い。(冊子巻末には「売り子」名鑑まである!)とはいえ、座席に近いとこの売店で買うよね。結局、カレー(恥)。ちなみに売店の「客引き」合戦がすごくて、「そんな球場見たことない」と思った。
あ、名物「じんカラ」(唐揚げ)は美味しかったです。
というわけで。久々の大・長・文となってしまった遠征記、誰もついてきてなくても、それはそれで一興。それくらいまあ、遠征はオモロイってこと。「推し活」の皆さんみたいにしょっちゅうは無理やけど。
で。
新・神宮球場完成のとき、私は何歳なのか? 不死身なのでもちろんそのレポートもするけど! と思いつつ、筆を(やっと)置くとしよう。ふう。
でわ。次ページは、試合前練習やら、神宮名物・グラウンド内を通って引き揚げる選手たちやら、専属カメラマンのオリッ・ショットをどぞー。
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南 郁夫 (野球観察者・ライター) 通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」 |
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