南 郁夫の野球観察日記(196)2025オリックス、やっぱりこのコンビに期待!

2025年3月25日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

V4どころか5位に沈んだ、昨年のオリックス・バファローズ。今年のオープン戦も堂々の最下位で、すでに悲観的になってるファンも多いとか。笑止!私に言わせれば「V3したやん」って話である。反動くらいあるわ。毎年優勝だけを期待するなんて、なんといふ下品の極みか。野球観察の基本は、受け容れること。「とほほ」と言いながら全てのプレイを味わうのみである。

で。昨年の低迷の原因が「チーム内に流れる緩みや隙」と言われりゃ、そらそうかもしれないが、全力疾走を怠らないプロ野球チームなんかを我々は見たいのであろうか?え?見たいの?そうですか。私はどちらかといえば「規律」より「緩みや隙」を好むので(どっかーん)、緩いと言われがちなオリッの雰囲気が好きである。

とはいえ、昨年のような「ひっ、貧打」はやめてほしい。なまじ投手力がいいので現地観察で0-1とか1-2とか、きつい。「君らがなあ」と、年俸7000万あたりをピークに打てなくなったV3野手たちを危惧している開幕直前、たまたまそのうちの二人が今オフに出演したローカルTV番組を見つけて、ひっくり返ってしまった。

番組名は、テレビ大阪の「片っ端から喫茶店」。大阪の喫茶店をローカルタレントが片っ端から紹介するちう帯番組の、2月の第2週(全5話)の出演者がなんと「ラオウと福田周平」だったのである。私は偶然見つけてYouTube配信で視聴したのだが、オリックスのオープン戦よりは「よほど」面白かった。でもタレントに混じって、なぜにこの二人?

2021年本塁打王のラオウ・杉本裕太郎と、2022年ゴールデングラブの福田周平。直近の成績を忘れるなら、オリッの看板選手ではある。たぶん「オリックスから誰か」という企画が立ち、佐々木朗希の完全試合と阪神の日本一決定の瞬間がテレビで流れるたんびに「両方で三振している」ラオウが全国区の顔として選ばれ(笑)、彼が友達の福田を連れてきたってとこだろう。(知らんけど)

テレビ出とらんと練習せんかい!なんていうなかれ。他人に厳しいのは善良な庶民の悪い癖である。収録は12月とか完全オフ期間のはずなので、そこは個人の自由ではないか。

で。番組を見てまず笑ったのが、福田が1つ年上のラオウを「お前」呼ばわりなこと。彼らは「オリックス、こんなかんじっすよ」「他のチームから来た人びっくりするっす」「トレードでよそのチーム行ったら注意せんとなあ」と、あっけらかんかん。私は好きやけど、ほら、こういうの「緩みや隙」て昭和の野球人に突っ込まれるとこやん。

こんな番組を引き受けたのにコーヒー苦手で「焙煎」の意味も(たぶん読みも)知らない、陽気で優しくておおらかな四国人・ラオウ。マイペースでとんがった変人ぶり(マダガスカルの植物を育てるのが趣味)を発揮し、大阪人なのに絶対ボケない福田。ファン層もまるで違うこの二人の凸凹なバディー感が、絶品なのだ。タレントでもないのに、立派に番組を成立させていた。

で。オリッファンのツッコミどころシーンは…
・お店に貼られた今年のチームポスターに自分の姿がないことに気づいて「俺、おらん」と普通につぶやく福田
・店のおばちゃんに「なんでこの頃ホームラン打てんくなったの?」と真顔で聞かれて「パ・リーグのピッチャーすごいんすわ」と胸を張って答えるラオウ
・カウンターの片隅にいた謎の老人客に「かんじんなときに打ててない!」とズバリ内角胸元を突かれて絶句する福田
・店のお姉さんのラテアートの技術の高さに感心して「俺らも野球練習しなあかんなあ」とキャンプ休日のルーキー以下のリアクションをする二人などなど。

私は終始「くっく」と楽しめた。二人の現在の立ち位置を知っているオリッファンだからかもしれないが…。

今年で福田33歳、ラオウ34歳ということで、知らない間に野手のベテラン・カテゴリーになってしまったご両人。「緩みや隙」がないチームなら精神的に引っ張っていく年齢だろうが、大好きな「パンケーキ」食べて昇天ポーズしてるラオウや、100%自分のことしか考えていない福田には、誰もそんなことを求めていない。

番組を見て、改めて私はこの愉快な二人組が台頭して25年ぶり優勝を果たした2021年のワクワクを思い出したし、二人ともベテランどころか、まだそこいらの兄ちゃんにしか見えないことが嬉しかった。彼らは人間として面白すぎるし、野球で「やり残したこと」がありすぎる。そうなのだ。やっぱりこの二人にもう一度輝いてもらいたい。それが一番、盛り上がる。

ラオウと福田。良くも悪くもチームの雰囲気を体現する「ワンハンドレッド」コンビの再ブレイクこそが2025年オリックス再浮上のポイントであると、開幕を前に私は宣言する。

あ。もう「ワンハンドレッド」じゃないんか!
(背番号を自ら1から65に変えるなんて…やっぱり福田周平は「唯一無二」である。)

 

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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
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