南 郁夫の野球観察日記(158-1)「奇跡の7回裏」オリックスV3!地元胴上げを目撃

2023年9月21日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

その瞬間、山﨑颯一郎が天高く放り投げたグラブは思いのほか後方へ舞い上がり、優勝よりそれを名手・安達がダイレクトキャッチしたことに私が喜んでいる間に、マウンド周辺とスタンドは歓喜でぐちゃぐちゃ!オリックス・バファローズが、威風堂々と地元胴上げでV3を勝ち取ったのである。

選手、監督・コーチ、そしてもちろん満員御礼のファン全員が笑顔、笑顔、笑顔、の素晴らしくハッピーな地元胴上げシーン!

V3などというちょっと前からしたら「夢物語」を実現した上に、日程上「ここしかない」という日に、ホームの京セラドームで決めたチームの底力に心底驚くとともに、とにかく今年は笑顔、笑顔のシーズンだったなあ、と笑顔で思う。

もはや優勝がかかった試合でも「ガチガチ」になることもない、オリッ勇者たち。この試合も投手陣がもちろん最大の功労者だが、「奇跡の7回」と語り継がれるであろう7回裏2アウト走者なしからの大逆転劇は、若手とベテランの力がうまくブレンドされたナカジマジックの集大成。勝ち越しタイムリーを放ったのが、この日24歳の誕生日を迎えた2年目の野口智哉のフルスイングだったことが、このチームの「未来」までも暗示していて頼もしい。

この日いちばんグッと来たのが、スタメンにTー岡田を入れた監督の感性。みんなの頭に染み込んだ「Tー岡田の記憶」をちゃんとわかってくれている起用にファンは歓喜し「益田が出てきたらTが3ランや」という声があちこちで聞こえた。Tもヒットと大逆転のきっかけとなる四球でちゃんと貢献し、試合終盤になるとチームを支えてきたベテラン野手(安達や大城、小田、山足)に「するする」入れ替わっていく快感が、何物にも変えがたい。選手全員で!素晴らしいチームになったものである。

しかしこの日のハイライトは、やはり三塁打王・中川圭太のあまりにもカッコいいダメ押しタイムリー三塁打か。彼の無敵のクールさもまた、このチームに不可欠すぎる要素である。

ベンチ入りしてない選手たちも「奇跡の7回裏」を見つめ、この後、歓喜の輪へ。舞洲軍の選手もコーチもみんなでお祝いできたのも地元で決めたからこそ。

いやあ、それにしても絵に描いたような地元胴上げ試合で、ある意味驚いた。7回終了時の観客のどよめきが耳から離れない。そんな試合のできる選手のメンタルが、V3にふさわしい。
一昨年も昨年も言ってるが、ここから先のポストシーズンのことはもう「ギフトでしかない」ので、いきりたってどうこういうつもりはない。十分である。とにかく、最後まで楽しいオリッ野球を見せてくれればそれでいいな。

そして私は。今年最大の功労者は実はこの人だと思う。彼の野球愛と人間力が、今年のオリッを最高に楽しくて強いチームにしたと私は断言したい。このチームの団結力は、生え抜きがどうとか関係ないのだ。
ありがとう、これからもよろしく石川亮!

さて、チーム広報様のご好意により、優勝前日19日の試合前練習を専属カメラマンが撮影しました。

次ページは、その練習風景など「オリッの愉快な仲間たち」をどぞー。

 

 

南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
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