南 郁夫の野球観察日記(129)CSファイナル大正区旅情

2022年10月18日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)

「日本シリーズ進出決定!フォト日記」でお伝えしたように、オリックスは2年連続でCSを突破!日本シリーズへと駒を進めた。実は今年は専属カメラマンのおかげで、2~4戦目を現地観察したのだ(自分でチケットも買えんのか!)。なんと3日連続で阿部翔太投手の故郷・大正区に通うこととなったわけである。

大正区て・・・と言うなかれ。私にとっては京セラドームの呼称はあくまで「大正区」(ほっと神戸は須磨区でなくグリーンスタジアムと呼ぶのにー)。家人に外出を告げるとき声を潜めて「ちょっと・・・大正区に・・・」の方がしっくりくるのだ。ドーム周辺を歩いて見れば・・・華々しいCSを近所でやってるなんて信じられないような光景が広がる、大正区。今から見に行くのは「南海vs阪急」か? と思わせる雰囲気が、そこには流れておる。地下鉄や阪神の駅から直でドーム行ってる人は知らんと思うけど。

ドーム周辺を歩いて出くわすは、ボロ傘満載の崩壊寸前の乳母車を押すおっさん、車道をふらふら彷徨う金髪のカップル、町全体のフェンスに耳なし芳一のようにもれなく描かれた落書き、底に何が沈んでるかわからんおどろおどろな河川、郷愁を誘うガスタンクに映る夕陽・・・まことにカオスな海抜ゼロメートル地帯。かと思えば魅力的な飲食店が並び、超渋い隠れ家音響系喫茶店もある(私はここでレコードに埋没して試合に遅れそうになった)。実に掘り甲斐のある、ディープな世界が大正区なのだ。なので、皆さんも早く着いたらドームやイオン直行ではなく、周辺を視察することをお勧めするぞ。帰りはやめといたほうがいいかも・・・知らんけど。

 

さて。以下は優勝を決めた4戦目「以外」のCSファイナルレポートであるっ。ま、オマケですわなオマケっ。ところでオマケの語源は「御負け」。商売人が客との駆け引きに負けることですわっ。縁起悪い言葉使うなっちう話ですわっ!

■CSファイナル第2戦

第1戦を山本由伸アドバンテージで順当にいただいた後の第2戦は、「これぞプレイオフ!」ちうめっちゃええ試合で痺れた。序盤は両軍選手の気持ちと技術がほとばしる、一糸乱れぬ見事な攻防戦。特に、粘りに粘って投げる宮城大弥を救った福田周平のフェンスぎわ好捕はアンビリーバブルで、しばらく場内のどよめきが収まらない。福田にしかできない究極の「フリスビー犬キャッチ」!すっかり外野手になった福田。

そして! 2-2の同点の5回に均衡ムードを「一振り」で切り裂いたラオウの一発には、緊迫していた球場全体が大・爆・発。なんだか大型重機から放たれたようなこのホームランは、打球音、角度、放物線全てに「歓喜」「祝祭」ムードにあふれており、美しいとまで言える光景だった。この一撃がシリーズ全体の流れを変えたなと、今になって思う。第4戦後の表彰式で彼が「MVPは吉田正尚」でずっこけたのは、あながちギャグとは言えないのだ。

これでこの試合も一気に勝負を決したかに思えたが・・・中盤以降は両軍投手がまあ、踏ん張る踏ん張る!ビリビリムードでたどり着いた9回表のオリッ大ピンチで放たれた天才・柳田悠岐の、あわや逆転の大ファールには「ぞぞぞ」とサブイボが立ったことよ。柳田の技術と集中力に対する畏敬の念への、身体の反応な。この次元の打者はマジすごい。スタンドまで素振りの風圧が伝わる(冗談抜きで)吉田正尚も、もちろんその次元。現地観察冥利につきる瞬間である。

結果的には家から歩いてきた?阿部翔太が「気合」でピンチを抑えきり、オリッが1点差勝利で王手をかけた。それにしてもずうっと「気合」で抑えてる阿部ってすごい。すごすぎる。もちろん、気合だけではないのはわかっている。でも阿部の特殊な「気合」は、大正区のパワーとしか思えないのである。最終回を抑えて歩いて家に帰る阿部翔太! んなわけないか?

 

■CSファイナル第3戦

第4戦はいいから、一気に優勝を決めてほしい一念だった。というのは、普段の手足伸ばせる気楽な観戦環境と違って、満員の球場は苦手なのだ。それ以前にマスクが苦手なのだ。私の「性根」がポストシーズンや一般社会向きではないのだ。しかもS席なのにこのドーム開業当時のままの固くて狭くてなぜか座面が膝に向かって傾斜しているファッキン椅子(変な空気穴あるタイプ)が、し、しんどすぎる!ベルーナドームを見習って、このあたり改善してくれんと!

つらつら愚痴を言ってるのは、第3戦が私の素人目線では退屈だったから。千賀様がすごすぎた。MLBスコアラーを意識して?気合入りすぎて顔の輪郭がスワロフスキーカットみたいに「カクカク」になった千賀が投げ込んでくるどのボールも、まるで打てそうになかった。山本由伸に投げられる相手の気持ちが、よくわかる。攻撃を抑えてベンチに帰ってくるたびにチームメイトを大声で鼓舞する(あんがい高い声で)姿が、さすがエースの存在感。

対して、スコアボードに映る自身の「金言」をバックにマウンドに上がったスピ田嶋大樹は少し顔が青白く(いつもか?)、やや緊張気味で自らのエラー響いて・・・初回に手痛い2失点。千賀相手にこれはこたえた~。次第に調子上げて7回まで投げたのは偉かったが、その7回にルーキーの野村勇に打たれたホームランがまた、こたえた~。野村勇、サード守備でも躍動しており、実に良いぞ。ハムの野村佑樹とめっちゃかぶるけど。

結局、シャットアウト負け~。まあでも最終回、ホームランが出れば同点のチャンスでラオウという状況まで作ってお客さんも盛り上がったし、良しとしませんと。ソフトバンク相手にそう簡単には勝ち上がれないやろう、せっかく明日のチケットもあるんやからと自らを納得させてるところに・・・専属カメラマンがスマホで阪神のシーズンが終わるコメディエラーを見せてくれて、気が晴れた。悪口ではないよ。ああいうドタバタエラーが、私の大好物だから。

そして。あの第4戦につながるわけだ。

いやまあ2年連続で堪能したよ、CSファイナル。楽しかったです。とても。これは贅沢なギフトなんだ、と思わんと。

3日間見つめ続けたソフトバンクも、絶対的なエースと四番が存在して魅力的な若手が台頭している、好チームだった。チームの雰囲気も、すこぶる良さそうだし。

なるほどオリッと実力が極めて均衡してるのがようくわかった3日間。そらレギュラーシーズン勝率おんなじやもんね。どの選手も魅力的だったが、ちょっとだけ思ったのが

「甲斐ってやることなすこと・・・なんか大げさすぎん?」

あくまで。あくまで個人の感想ですっ。

 

■さて。ここからはオマケのオマケ。専属カメラマンのCSショットをどぞ!

これが、ちょうど、ここに収まりますねん!

無敵の中川、激走中!

当たりさえすれば!昇天や!

どっちが?MVP?

先輩ごめん、それは僕やわ

 

 


<過去コラム一挙掲載!>
オリックス、元メジャーリーガー、女子野球…ベースボール遊民・南郁夫の野球コラム集。

 

南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」ブログ「三者凡退日記」
著書「野球観察日記 スタジアムの二階席から」好評発売中!
https://kobe-kspo.com/kspo/sp145/

 

 

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