南 郁夫の野球観察日記(94)
オリックス、堂々の日本シリーズ進出決定!

2021年11月14日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)


その日は勘が冴えていた専属カメラマンが「小田で決まる!」と言ったので「いやここはどう考えても送りバ……」と返そうとした次の瞬間、小田のバスターがロッテの前進守備を破り、夢のように右翼線を転がっていく!

その瞬間、京セラドームを埋めたオリックス・ファン全員が吹き飛ばされたようにジャンプして歓喜の雄叫びを上げるさまは、長い長いチームの低迷とコロナ禍のモヤモヤ(モヤどこいった?)を吹き飛ばす、制御不能なエネルギーの爆発。ついに。ついにオリックス・バファローズが日本シリーズに進出したのだ。まさかそんな日が来るなんて。(それでも「座ってください」とあきらめ顔で叫ぶ係員の律儀さ)

そして私は。25年の時空を超えて再び「その瞬間」を目撃した喜びに、打ち震えていた。前回は神戸の「左翼線」(イチローのサヨナラヒットね)だったな、と遠い目になりながら。

この日のことは、皆さん死ぬほどいろんな媒体でリピート再生しているだろうから、語るべくもない。しかし、最後のチャンスメイクがTー岡田、安達の連打だったというのは泣ける。5年ほど前のインタビュー時に「自分たち二人が!」と二人揃って決意を語っていたのを思い出したから。



そして決めたのがスーパーサブ・小田というのも、泣ける。若手の台頭で勝ち上がってきたとはいえ、実はCS通じて全然つながっていなかったオリックス打線が、最後の最後に「悔しさを知る」ベテランたちでつないでつないで日本シリーズ進出を決めたというのがまた、ドラマに深みを与えているのだ。

とはいえ、ファイナルステージの趨勢を決めたのは、第1戦の吉田正尚と山本由伸、この二人のスーパースターのパフォーマンスだろう。

第1戦のスタメン発表で久々に吉田の名前がアナウンスされたときの興奮は、忘れがたい。黄色いダンベル、めちゃ売れてるし。そして復帰後「初スイング」のセンターライナーの、あの打球速度よ!相手どころか「味方の度肝をも」抜いたインパクトはすごかった。どの選手も大事な試合で「ガチガチ」になる中、営業車の中に1台だけフェラーリが混じっているかのような性能の違いを、吉田は見せつけたのである。



そして山本。オリックスのアドバンテージは「1勝と山本=2勝」とまで言われて「勝って当たり前」のプレッシャーの中、現実に「完封」してしまうそのメンタルも実力も、まさに劇画レベル。異次元である。1点しか援護のない中、大声援を受けて最終回もマウンドに登る山本の勇姿には明らかに「後光」が差しており、今年一番の名シーンとなった。まさにエース。



結果的に。なんと3連勝という形でロッテを圧倒したファイナルステージであったが、3塁側スタンドから見ているとオリックスベンチは常に元気で賑やかでキャラが豊富で、なんだか「修学旅行」か「海賊船」のようで微笑ましかった(スタッフと化したジョーンズおじさんも楽しそう)。良い雰囲気の中、冷静な作戦がありそれぞれが役割を果たし、普段通りに「全員で勝つ」を遂行できたのである。

そして。3塁側で見ていたので、小田の日本シリーズ進出決定ヒットが左翼線を転がって球場全体が大騒ぎの中、亡霊のようにベンチに引き上げてくるロッテの選手たちの表情(特に益田の悲痛な姿)を真正面から見ることになり、胸が詰まった。再三の好守備、マーチン決死のタッチアップなど彼らの必死さも十分に伝わっただけに……。でもこの「悔しさ」が糧になることは、オリックスが証明しているのだ。来シーズンも手強い敵である。

さて、いつもより上ずる?ボイス・ナビゲーター神戸さんの声が鳴り響く中、売店も人の列、トイレも人の列で久しぶりに大盛況な京セラドームにポストシーズンの「特別感」を満喫させてもらったファイナルステージだったが、「いつもとは違う」を一番感じさせてくれるのは、「審判の数、多くない?」てとこ。

「線審」のいる試合を7年ぶりに見たのだな、我々は。











いうわけで日本シリーズの相手はヤクルト。ここで「オマリー・小林の名勝負」とかいうと年齢がバレる(バレてる)ので言わないが、ヤクルトも雰囲気が好きなチームなので、楽しみである。山田は私が現在住む宝塚市の英雄だしな。ここまでくればもう、楽しい日本シリーズになればそれでいいと、私は思う。

もちろん6戦以降までもつれて、神戸で試合やってくれれば最高だけど……極寒の11月末のナイターは何を着て応援すれば良いのやら?




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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」





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