南 郁夫の野球観察日記(93)
オリックス最終戦を勝利締め!あとは、UTM(運を天に任す)

2021年10月26日 (文/南 郁夫、写真/Yasutomo)


10月21日。リーグ優勝のためには絶対に負けられない本拠地最終戦vsライオンズ。2点リードの最終回、クローザー平野が1点差に迫られながらも最後の打者を力強く三振に打ち取った瞬間、今季初めて2階席も解放して多くのファンが詰めかけた京セラドームは、喜びと安堵がブレンドされた「うおおおお」というなんとも言えない歓声に包まれた。



しんどい。1勝がしんどい。

最下位からの大躍進の今シーズン。優勝に手が届きそうになったり離れたりの最終盤、選手もファンも肩に力が入って「がちがち」の、しんどい試合の連続である。普段通りの力がなかなか出せない中、それでもアウェーでのシーズン最終戦を残した時点で首位をキープしているという現実に「みんな成長したなあ」としみじみ思うのだ。試合ごとに選手が成長する。しんどいけど。それが優勝争い。

成長、である。この試合で前回の屈辱(宿敵ロッテの佐々木に完敗)を晴らして13勝目を上げた宮城くんの精神面の大成長(緊張で足ガクガクだったらしい)。この大一番でも先制点をたたき出したうえ好守を連発するなど、すっかり「中心選手」となったショート紅林の大成長。二人とも実働1年の中の成長ぶりが、エグい。



そして、宗。天王山の涙の同点ホームラン以来絶不調に陥っていた彼をそれでも中嶋監督は使い続けるも、この日も序盤ヒットが出ず。加えて珍しくエラーをして下を向いてしまった、宗。しかし5回に彼らしい思い切りのいいフルスイングで、弾丸ライナーのホームラン。これが結果的に決勝点となる貴重な貴重なホームランとなる。持っている能力の高さと切り替えの早さ、思い切り。彼のこの1年間の成長も凄まじい。



シーズン通して彼らをはじめとする若者の成長を見守れただけでも幸福だが、その結果として、リーグ優勝目前である。結果は残り試合の多いロッテの成績次第だし、気を失うほど難解な優勝ラインの計算で(計算してる人、天才!)今の時点では先のこと何もわからないが、山本なんだから最終戦は勝つはず(と日本中が思っている山本の実力も若いのにすごい)。

とにかく素晴らしい。2021年オリックス。この日も盤石だった2014年と同等のブルペン陣がいる限り(平野と比嘉、現存!)、CS以降も十分戦えることは確実である。



この日は試合前に選手がグラウンドにアップに現れただけで、スタンドから大拍手。試合中も、チャンスが来るたび、投手がピンチになるたび、自然発生的な大拍手。それを聞いているだけで、やはり特別感が込み上げてくる。





あとは、選手もファンも肩の力を抜いて普通に野球を楽しんでほしい。ずうっとこんな息をひそめた「がちがち」状態では、身が持たない。結果はどうあれ、素晴らしい秋になっているのだから。外の寒さは、なんだか冬みたいなんだけど。

そういう意味で、初めて(?)京セラドームがありがたいと思った。
同じような状況の甲子園の阪神ファン、風邪引くよなあ。
日本シリーズの神戸開催って、まさか夜? 本気で心配しています。


そして・・・
ロッテvs日ハムの試合経過に一喜一憂しながら過ごした週末。
いよいよ、10月25日レギュラーシーズン最終戦@仙台。
今や日本を代表するエースになった山本由伸と貫禄の日本のエース田中将大が先発、最後までドキドキワクワクの試合である。

勝利の瞬間の、全選手のやり切った表情と弾ける笑顔に泣けた。本当に素晴らしいシーズンの幕切れである。オリックスは本当に素晴らしいチームになったなあ。

この大一番で危なげなく完封してしまう、山本の絶対的エースぶりは痛快この上ない。そして、伸びしろビロンビロンの紅林の最終戦の試合中にすら行われた成長ぶり(しぶといタイムリー連発、好守連発)に驚き、ベテラン安達の神業ダメ押し2ランスクイズ、T−岡田の本塁ヘッスラ、若月の強肩、3割を決めたラオウ杉本の最後のフルスイング、最終回に飛び出した駿太のスーパープレイに酔いしれた。

まさに「全員で勝つ」を地でいく今年の集大成に、胸アツである。
シーズン最終盤、全員なんだかガチガチでどうなることかと思ったが、見事にチーム全体が成長したことを示した最終戦を見て、ファンとしても「一片の悔いなし」である。

いやあ、ええ試合でした。

あとはロッテの結果次第か。でもロッテに負けてくれなんて言えない。どんな結果になろうが、このチームならクライマックスも「その先」も楽しませてくれるに違いない。




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南 郁夫 (野球観察者・ライター)
通りがかりの草野球から他人がやってるパワプロ画面まで。野球なら何でもじっと見てしまう、ベースボール遊民。あくまで現場観戦主義。心の住所は「がらがらのグリーンスタジアム神戸の二階席」





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