打った方も涙、打たれた方も涙。10月12日、2021年パ・リーグまさに最後の天王山の初戦、京セラドームは両チームの選手・ファンの「思い」がほとばしる、エモーショナルな空間となった。たまらん、シーズン最終盤である。
息苦しくて寝そうになる?ほどの緊迫感。8回までロッテの小島投手に完璧に抑え込まれて2点ビハインドのオリックスに、追いつけるムードはきっぱりなかった。おそらく入場可能人数いっぱいに入ったスタンドのオリッ・ファンも、沈黙するばかりである。
今年はそういう状況を幾度も乗り越えてきたとはいえ、やはり四半世紀ぶりのリーグ優勝を目前に、この日の選手たちのプレイは普段より明らかに固いようにも感じていた。
無理もない。ほとんどの選手にとって、未経験な状況なのだ。それに、前の試合(ソフトバンク戦)の負け方が嫌だった。躍進の象徴である19歳・紅林の死球退場のショックも残っていた(幸い骨折ではなく抹消もされなかったが、この日は欠場)。しかし、その重苦しい空気を「一振り」で吹っ飛ばした、熱い男がいた。
宗佑磨は前の試合で手痛いバント失敗もしていたし、この日は2打席連続併殺打としくじっていた。でも、今シーズン、走攻守でブレイクしたこの若者の「熱さ」はそんなことで失われることはなかった。「当たりはいい」と私も思っていたのだ。
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